2017-07-04

足摺岬と室戸岬にいってきた

四国4県のなかで唯一行ったことのない県が高知県だった。いつか行かなくてはと思ってはいたけれど、そもそもめちゃくちゃに遠い。東京から距離的に最も遠い県は沖縄県だが、最も到着までの時間がかかる都道府県は高知県らしい。近畿圏に住んでいても香川や徳島ならすぐたどり着けるが、高知はとにかくアクセスが悪い。空港が近い高知駅近辺ならまだしも、足摺岬と室戸岬があるそれぞれの突端までは鉄道も通っていない。そんなわけで人の手によって開発されていないたくさんの自然が残っているし、山と海が限りなく近い特徴的な地形もあって天然の観光資源が無数にある。特にすることのない週末(悲しいかな私の週末に予定があることなんてない)が近づいてくるし、せっかくだから高知県の端(足摺岬)から端(室戸岬)まで行ってみることにした。

ふつうこういう交通不便の地へ向かうときは車を運転していったほうが便利なんじゃないかと思うけど、私は典型的なペーパードライバーで、後退が下手だったりガソリンの入れ方がわからないというレベルなので公共交通機関だけを使っていくことにする。しばらく前に八丈島をレンタルバイクで回ったことがあるが、原付は小回りがきくぶん普通車よりもかなり運転が楽だった。大学時代に親のすすめで普通自動車運転免許を取って、そのあと何度か運転したことはあるものの、とにかく自分で運転することはストレスが大きかった。自分の車の近くを走る自転車が邪魔だとか歩行者が飛び出してくるかもしれないとか、運転中に考えることが多すぎる。いまでも自分の代わりに車の運転をしてくれる人は心から尊敬するし、上手なドライバーには強いあこがれがある。バスやトラックのドライバーは本当にすごい。狭い道を巧みに走り抜けるさまを見ると、ああこれはもう才能だ、私には与えられなかった能力だと感じてしまう。

さて、旅行のおおざっぱなルートを考えてみる。高知は広い。そして二つの岬に訪れるためには横に広い高知のほとんど西の端から東の端まで移動する必要がある。重複しないような効率の良いルートを考えると、たぶん夜行バスでできるだけ西の方、つまり足摺岬の近くまで行き、そこからバスや鉄道で海岸線をなぞりながら室戸岬、最終的に徳島まで出て、前回の旅行でも使った南海フェリーで今住んでいる関西に戻ってくるのが良さそうだと考えた。そしてそのできるだけ西の方に行くための夜行バスを予約するのだが、普通複数社が似たような路線を運行していることがおおい高速バスの路線群のなかに選択肢が一つしかない。高知県の中心地たる高知駅に行くための夜行バスは日本の大都市ならちゃんと出ているが、それ以外の場所、具体的には宿毛地区や中村地区という足摺岬観光の拠点となる高知県西部を結んでいる高速バスは一社しか運行していなかった。しかもかなり高い。高知駅までだと大阪から5000円とかでいけるが、中村駅まで直行する路線は9300円もする。この価格帯の高速バスはこれまで乗ったことがない。飛行機や新幹線だとすっと出せる金額だけど、高速バスで9300円はかなり高く感じる。東京大阪間のような需要も供給も多い大都市同士を結ぶ路線とは訳が違うので、あきらめてプロパーで予約した。大阪駅の東にある東梅田駅前のバスターミナルから土佐くろしお鉄道の終点中村駅まで。足摺岬は中村駅から路線バスで訪れることができる。

right 金曜日の夜、京阪特急で淀屋橋へむかう。東梅田駅までは歩いても15分かそこらだ。ひどく蒸し暑い夜だった。近いと思っていた15分でも体からは汗が流れる。昔から体臭は薄いのでそんなに汗臭くはならないけど、背中に張り付くシャツはきもちがわるい。東梅田のバスターミナルに着いたのは22:15ころ。中村行きのバスの発車時刻は22:55なのでしばらく時間がある。とはいえすることもないのでコンビニでお金を下ろしたり車内でのどが渇いたときのための水のボトルを買った。次から次にと発車する夜行バスたちは、それぞれ別の行き先を電光掲示板に表示している。バス乗り場で停車して10人とか15人の乗客をのせ、たぶん他の出発地点、おそらく難波駅や三宮駅や京都駅のターミナルで残りの客を拾って高速に乗る。東京や横浜にいくバスは他よりもすこし本数が多い。金曜の夜の夜行バスなら、土日は観光だろうか、好きなアーティストのライブかもしれない。みんなそれぞれ別の目的をもって楽しそうに乗り込んでいく。足摺岬に行くという目的でいま東梅田にいる人は私以外いないだろうと思う。なんだかそれがおもしろかった。

定刻をわずかに遅れて出発した夜行バスは、さすがに高いだけのクオリティがあった。3列シートは一席ごとに分離されていて、リクライニングはかなり深くまで倒せる。各座席に一つずつコンセントがあり、バス車内にはフリーWifiが飛んでいる。私は使わなかったがトイレもついているし、枕やブランケットも用意されているのでそれなりに快適な旅ができそうだった。バスは発車してすぐに高速道路に乗る。神戸・三宮駅前で再度停車して最後の乗客を迎え入れると、最初の停車場所である淡路サービスエリアへむけてバスは再び走り出した。

バスから降りて休憩できるタイミングは到着までに2回ある。車内放送によれば12時半ころ到着する淡路SAと、あさ5時すぎくらいに高知県に着いてから、という予定らしい。一応休憩が入るたびにトイレには行っておき、面白そうなものが売ってるのかな、とお土産物屋を物色したりする。淡路島SAのお土産販売店は近畿地方全体の名産を扱っていた。京都も大阪も神戸も和歌山も淡路島に包摂されている。この淡路SAを出発すると車内は消灯され、朝まで眠ることになる。車内は十分暗いので眠る環境としてはそれほど悪いものじゃない。でもいかんせん高速道路を走行するバス特有のノイズが耳障りだった。そういえばリュックサックの中に耳栓をいれてたな…と思ったけど、もう立ち上がってゴソゴソと荷物をあさるのもめんどくさい。まぁいいや、と目をつぶってまだ見ぬ目的地を思い浮かべながら眠りについた。

中村駅

朝6:55、定刻通りに中村駅についた。バスを降りると尋常じゃないほどの湿気を感じ取る。スマホで調べてみると93%だという。すこし歩くだけでじんわりと汗が体を覆い尽くした。気温も高く非常にきもちがわるい。雨が降ってないのは助かったが、この湿気の中では歩き回るタイプの観光はできない。ちょっと歩くだけでだいぶしんどいものがある。まぁたとえ天気が良かったとしても中村駅周辺に観光地はそれほどないので、新しくて空調の効いている駅構内で足摺岬行きの路線バスを待つ。片道1900円もするが、タクシーだと10000円すると書いてあるので選択肢は一つしかない。ネットの旅行記によれば、駅構内の土産物屋で路線バスの回数券が買えるという書き込みがあり、たとえば3000円分の回数券で3300円分使えるらしい。足摺岬までは往復3800円かかるので、普通にバス車内でお金を払うよりも300円安くおさまる。それは良い、とおもって土産物屋のレジにいたおばちゃんに聞いてみると、ここで回数券は取り扱ってないという。なんだそれは。デマ情報じゃないか。

ノートPCを広げてここまでの文章を書きながら路線バスの到着を待つ。しかしいくらなんでも往復3800円はなかなか高い。とはいえバス以外の公共交通はなにもない。電車だって通ってないし、たぶん足摺岬まで行く人もそんなにたくさんはいないだろう。しかたない。さっきまで誰もいなかった駅構内の待合室にも人が増えてきた。6人ほどいる。おばあちゃんがひとり、漫画雑誌を読んでいるおばさんがひとり、帽子をかぶった男女が一組。女性のほうは普通だったが、男性のほうは目がくぼんでいて髪がちじれた異様な風貌をしており、男子小学生がいる家庭のタンスのようにステッカーまみれのスーツケースを転がしていてひどく不気味だった。

バスの発車時刻が近づく。待合室を出てロータリーの端にあるバス停で岬行きのバスを待つことにする。定刻の10分前にはすでにバスが入り口をあけて待っており、誰もいないその四角い箱にひとり乗り込む。発車を待たずしてとうとう雨が降ってきた。到着するころまでに止んでくれたらいいなと願いながら、窓の外を流れる連日の雨で濁った四万十川を眺めていた。日本最後の清流と称される四万十川が、自分の地元を流れる綾瀬川(日本で最も汚い川とされている)と同じ色をしているのはすこし残念だ。しばらくして、おばあさんが数人バスに乗り込む。そして私よりもはるかに早く下車する。中村駅から足摺岬までの距離が大変長いので不思議に思ってしまうが、あくまでも路線バスとして地域の人々が生活の足として使っているのだ。起点から終点まで乗り通す人は私以外誰もいない。

足摺岬へ向かう

バスは途中から山道をどんどん上っていく。車同士が離合できないくらいの道幅を、窓ガラスに草木をぶつけながら進んでいくと途中から視界が一気にひらける。展望台になっているようだ。バスはそこでしばらく停車してくれる。立ち上がってバスの車窓から崖のしたをのぞき込むと、黒潮が岸壁にぶつかり砕ける様子がよくみえる。深い青色をした海が、岩場のまわりだけ白くなっている様はまさに絶景だった。 101個のバス停と2時間弱の時間をこえ、バスは足摺岬近くの停車場に到着した。

バスを出てすぐに感じる途方もない不快指数。Siriに聞いてみると気温は34度、湿度は95%。5歩もあるけば体は汗にまみれる。風はない。足摺岬は風がつよいと聞いていたのに、まごう事なき無風状態である。中村駅に戻るバスは、今から1時間とちょっとあとにここをでるようだ。一時間で観光をしよう。

熱帯雨林かと思えるほど蒸し暑いなか、びしょびしょにぬれた地面が森の中へ続いている。このままいけば展望台が見えてくるはずだ。

ひらけたところに出た。展望台に上るとすこし離れたところにある灯台が見える。風はなく、蝉のこえだけがけたたましく響いている。 灯台の方まであるいてみると、それなりにいろいろといわれのあるモニュメントが見つかる。

バスが1時間半ほどかけて中村駅に着く頃には太陽がでてかなり暑くなってきた。濡れた地面も乾いてきて、このままいけば明日以降だったら快適に過ごせたのかもしれない。30分後に出発する高知駅行きの特急あしずり6号の切符を買った。特急券と乗車券がセットで4140円。夜行バスが9300円、足摺岬までの路線バスが往復で3800円、ずいぶん金のかかる旅行になってしまった。飛行機だったら北海道だって余裕で行ける値段だ。

列車は中村駅にしばらく停車しているみたいだった。外で待っているのも暑いので、駅構内の売店で水のボトルと土佐銘菓らしい個包装された和菓子をふたつ買って列車に乗り込む。特急列車とはいえ電化されていない気動車だ。しかも2両編成。先頭車両である2号車に乗りこみ、誰も座っていない二人掛けのシートにこしを下ろす。高々6時間の滞在だった。しかもほぼ移動だ。もったいないといえばもったいない気もする。とはいえ岬以外にそれほど見るものはない。

中村駅を出てゆっくりと加速する列車の車窓から、小学生の男の子二人が釣り糸を用水路にたらしているのが見える。彼らはきっとこの街で生まれて、高校を卒業するくらいまで山脈と四万十川に囲まれて暮らすんだろうなと思う。限りなく近づいたこのタイミングを最後に、彼らと今後の人生でもう交わることがないのだと思うとなんとなく寂しい気持ちになった。

夜行バスで浅い眠りしかできてなかったからか、高知駅につくまですっかり眠りこけていた。太陽は高く、空調が効いている車内でも体は暖かい。そりゃ寝てしまう。目が覚めたとき、ちょうど列車が高知駅に入線するタイミングだった。

高知駅

高知駅には初めて来た。徳島駅のように駅前には背の高い椰子の木が植えられている。駅の前にはバスとタクシーのためのロータリーがあり、そこと接続するようにずっと長くて太い幹線道路が街を貫いているようだった。予約してあるホテルにむかうため、また途中にある高知の観光名所の一つとして数えられる「はりまや橋」にむかうため、それなりに往来のある歩道をひたすら歩く。猛烈に暑い。これまで雲に隠れて控えめに世界を照らしていた太陽が、いまは肉焦がし骨焼くことを一生の目標に据えたかのように活動的になった。日光が直接突き刺さる自分の首筋を触ってみると、やけどしたかのように熱をもっている。リュックサックを背負う背中も汗でじっとりと湿っている。予約したホテルは駅から2.5kmほど離れたところにあり、なんでそんなところを選んでしまったのかとじんわり後悔した。

left right

途中みた「はりまや橋」も、日本三大がっかりなんて不名誉なよばれかたをしていたりもするが、べつにこれはこれで悪いものでもない。赤い欄干はなかなかステキだ。古くからの言い伝えがあり、地元の人に愛されているランドマークを悪くいうもんじゃない。札幌にいったときにも時計台を見に行ったが、それだって決してがっかりするような観光地じゃなかった。もっとろくでもない名所だってたくさんあるし、少なくともがっかりスポットなんて言われているうちはハードルがだいぶ下がる。

ついさっき予約したホテルにチェックインし、受付で自転車をレンタルする。無料で使えるらしい。観光地からすこし距離があるのでこれはうれしい。とはいえ高知駅の近くの観光地はだいたい見てしまった。ホテルにつくまでに見たはりまや橋と駅前の三志士像と自転車で見に行った高知城。観光が終わるとあまりすることがなくなってしまったので、仕方なく近所のイオンで映画を見た。まぁいろんな街にいってるとこういうこともたくさんある。リトアニアのシャウレイに行ったときは十字架の丘を見た後にすることが全くなくて、帰りの夜行バスが到着するまでずいぶん暇な思いをしたものだった。

室戸岬へむかう

ホテルの朝食はレベルが高かった。高知名物という鰹ご飯がなんと食べ放題。ひつまぶしのようにだし汁をかけていただくようだ。とてもおいしかった。部屋にもどって歯を磨き、後片付けをしてホテルを後にする。ここからはまた長旅だ。高知駅のみどりの窓口で列車とバスが両方乗れる室戸岬に行くためのチケットともいえるきっぷを買う。5000円くらいするが、JRと私鉄とバスを乗り継いでいく必要があるためこちらのほうが安くすむ。

室戸岬のまわりにあるジオパークの奇景を堪能し、次の目的地に向かう。ネットで知ってぜひ行きたいと思っていたところだ。「シレストむろと」という。

室戸の海洋深層水を使用した露天風呂があったり、室内プールがあったりする。真夏の太陽の下で入る露天風呂が死ぬほど気持ちいいものだというのは、一年くらいまえに行った伊豆大島の露天風呂で経験済みだ。もう死んでもいいと思えるほど気持ちがいい。普段日に当たらない部分を太陽に晒すのは格別の開放感があり、たくさんあるいて流した汗も流せてさっぱりする。

なかのお風呂の写真は撮れないが、シレストむろとの外にも足湯がある。

夏はあえて入ろうとは思えないけど、冬場はきっときもちがいいことだろう。近くにはほとんど民家らしきものは無いが、それでも車にのってやってくる利用客は多いようだ。施設の中にあるレストランも繁盛していた。

最高に気持ちいいお風呂を満喫し、シレスト室戸の前から甲浦駅まで向かうバスに乗り込む。バスは海岸線をなぞるように北上していく。

路線バスなのでバス停自体はたくさん設置されているが、だれも降りないしだれも乗り込まない。私と同じような旅行者と思われる数人の乗客に絵画のような絶景を見せつけながら進む。信号も坂もないので速度は上がりも下がりもしない。だいたいは青い海が黒い岩に波をぶつける景色が続くが、時折白い砂浜が現れる。ひときわ大きな砂浜がみえるころ、それが甲浦駅近くの海水浴場だとわかる。湘南やお台場、あるいは葛西のように人で埋まるようなこともない。夏休みシーズンはまだ先だということもあるが、やはりここへ気軽にアクセスできるような場所に住んでいる人は大都市に比べるととても少ないからだろう。サーファーや家族連れ、大学生のデートや老夫婦の散歩、そのだれもが平和に共存できる静かな海は、もはや関東には存在していない。人で埋め尽くされる砂浜、爆音流れるクラブミュージック、怪しげな飲食店、海の水だって綺麗とは言いがたい。そりゃ大都市なんだから仕方ないし誰かが悪い訳じゃないけれど、平和な海っていいよなぁと思ってしまう。

甲浦駅についた。バスの終点だ。駅舎はあるけど、実際の線路は高架の上にある。

なぜかこの列車、大量の電飾が天井にはりついている。ピカピカ光っているが、車内はまだ車窓から差し込む夕焼けの光でかなり明るい。ただ意味も無く光っているようにしか見えなかった。ところが、列車が出発してまもなく、トンネルに入ると車内の雰囲気は一変した。

暗いトンネルの中で光る電飾がものすごくきれいだ。降車するときに気づいたが、この列車は天の川号というらしい。まさしくそのとおりだ。満天の星空を列車の中で見られるとは。乗客もみなスマホで写真を撮っている。

短い阿佐海岸鉄道の旅もおわり、JRにのりかえる。長い旅ももう終わりだ。徳島駅までついたらあとはフェリーに乗って和歌山へ、そこから大阪・京都へ戻るだけだ。炎天下でうろうろしてたからかなり日に焼けた。足の甲はサンダルの後がくっきりとついている。途中乗り換えで数十分の時間があったので近くのスーパーで軽食とミネラルウォーターをかった。乗客のほとんどいないがらがらの車内でサンドイッチを食べ終え、背もたれに身を預けて目を閉じて列車の到着を待つ。

しばらくいねむりしていたら徳島駅についた。つい先日きたばかりの徳島駅は、前回とそれほど表情に変化を見せていない。夏の暑さと湿った空気が駅前に植えられた背の高い椰子の木の間を通り抜けていくようになったくらいだ。前回徳島にきたときは徳島自体が目的地で、徳島の観光名所を回るためにきた。でも今回は企画切符の終点であることと、関西に帰るために南海フェリーにのるためだけの通過点にすぎない。列車の到着からフェリー乗り場まで連れて行ってくれるバスの発車時刻までは20分。駅前の松屋で夕食として牛丼をたべ、発車2分前に徳島港いきの連絡バスに乗り込んだ。

南海フェリーに乗るのも二回目だ。前回は徳島は到着地点だったけど、今回はここから和歌山に渡る。相変わらず鉄道と比べても桁違いに安く、高速バスよりもさらに半額近い値段設定だ。なにしろ2000円で徳島から大阪難波まで運んでくれる。もう6年もやってる料金体系らしいのでうまく回ってるんだと思うが、さすがに100人載せても20万円にしかならないというのは大変そうだなぁという気になる。和歌山はともかく徳島は交通がやや不便なので、これからも海上航路は残ってほしい。

午後9時をまわったころ、フェリーは和歌山港に到着して航海を終える。南海特急との接続を考慮されたダイヤのおかげですぐに難波行きの列車に乗ることができる。電車は終点の難波に着き、地下鉄に乗り換えて淀屋橋から京阪特急に乗って自宅へ向かう。金曜の夜23時に梅田を出た夜行バスが淡路島を通って高知県西部に到着した。そこから路線バスやJR四国、第三セクターの鉄道、フェリーや地下鉄にのってまた自分のすみかである京都に戻ってきた。移動距離は1000kmを軽く超えている。久々にしっかりと旅行の楽しさを味わった気がする。やはり交通に便利な場所に直行する日帰りの旅よりも、せめて2、3泊できたほうがもっと遠くへ、もっと深くその場所を知れる。高知は中国四国近畿地方を回る上で最後の県となった。東京からも大阪からも遠い場所だけど、何度も来たくなるようなとても素敵な場所だった。やはり何度来ても四国はすばらしい。4県すべてに強い特徴があり、そこで出会う人たちはみなそれぞれの生まれ故郷を愛しているように感じられる。よそものである旅行者にとってもそういう場所は格別に居心地がいい。

自分のすみかから遠く離れて家族も知り合いもいない場所にふらりと出かけ、自分の匿名性が最大まで高まった状態はいろいろな物事から解放されて自由になった気になれる。もちろんいつまでもこういう居心地が良い生活をしているわけにはいかず、明日からまた社会の一部に溶け込んでいくんだけど。

次はどこへいこうかな。