渡鹿野島に行ってきた

三重県志摩市に渡鹿野島という島がある。的矢湾に浮かぶこの島は、海の恵み豊かな美しい伊勢志摩のイメージとは裏腹に、売春島という名で呼ばれた過去を持っている。最盛期には遊女500人が働いていたというが、現在は行政の努力もあり新たなリゾートとして開発を目指しているようだ。センセーショナルな雑誌記事のタイトルでは禁断の離島なんて表現しているところもあるが、もはや平成も30年になろうかという現代にそんな表現がふさわしくなるような場所などないだろう。

しかし私はこの島が知ったとき、「これは是非とも一度訪れたい」と思った。近鉄乗り放題切符というものを使うと週末の小旅行としては申し分ないちょっとした遠出を楽しめる。名古屋旅行と組み合わせて出かけてみた。

近鉄特急にのり鵜方駅で下車する。駅のすぐ脇にはこじんまりとした商業施設があるが、中のお店はほとんどが撤退しているようだった。

ほとんどの店がシャッターを下ろしているなか、一番奥の小さな食堂だけが飲食店として営業している。ここでこの地方名物の伊勢うどんをたべた。

目的地は離島であるため船にのらないとたどり着けない。その船が出ている渡鹿野渡船場までは駅からバスで20分ほどの距離だ。本数もかなり少ないため、ここでミスすると駅で立ち往生することになる。時刻表は常に確認しておきたい。

乗船時間は3分ほどだ。値段もたった180円。ぼんやり船からの景色を眺めている暇もいらないほどあっけなく到着した。ついにたどり着いた。いろいろな人がさまざまな思いを持ち過ごした島に、念願叶って上陸できたのだ。

ハートの形をした島であることから「ハートアイランド」と名付けられたらしい。かわいらしいジオラマで島の全景が一望できる。

島の中には廃墟も多い。たくさんの遊女が働き、いろいろな意味で活気のあったころに比べたらかなり衰退してしまったのだろう。現在はよくある過疎地域となってしまったようだ。

民家の一角になにやら丸いものがたくさんおいてある。近づいてみると、それらがペイントされたブイであることがわかる。夜道で見かけたらちょっと怖いかもしれない。

さらに路地をあるいていると一件の商店にたどり着いた。ダウンを着込んだおばちゃんが「そんな格好じゃ寒いでしょ!」と声を掛けてきた。

「そうですねー、寒いです! もっと着てくればよかった!」
「でしょう! 私なんかこんなに着てるよ! がっはっは!」
「大正解ですね!」
「あーはっは! お兄さんたちは何しに来たの?」

うーん、売春島を覗いてみたかった、なんて答えるのは失礼だろうか…。島のイメージを払拭するために皆努力しているだろうに、物見遊山だと知られたら気を悪くするかもしれない。そう思ってとりあえず「地図を見てたら気になる島があったので来てみました! 」と答えてみたら、「えぇ! この島に来たのに遊んでいかないの!?」とのこと。なるほど、別に島の人はそういう島であることを受け入れているようだった。「いや〜、ちょっと今回は! また次きたときにはー!」などと返す。そうこうしているうちに駅へ向かう帰りのバスの時間が近づいてきた。豪傑な感じのおばさんに別れをつげ、ちょうどよく来た渡船に乗り込む。

対岸の渡船場にはきらびやかな服を着た綺麗な女性が何人もいた。これから彼女たちの仕事が始まるのだろう。いまでも男性が遊ぶ街として正常に機能しているのだと、このとき初めて実感できた。昼間の渡鹿野島は寝ているのだ。

興味深い島だった。今後はリゾートとして開発されていくのかもしれない。しかしアクセスがかなり悪いので集客は難しいだろうなぁと思う。

名古屋に向けて移動することにする。晩ご飯は味噌カツにしよう。