メインのクレジットカードにはJCBを使っているんだが
海外旅行を趣味にしているのに海外で使える箇所の少ないJCBカードをメインに据えているのは小さな愛国心に他ならず、日本で稼いだお金を海外で溶かす場合に毎回アメリカの企業にその一部を(間接的に)支払うくらいなら多少なり日本に流した方がいいかなという気持ちによるものだった。しかしそのメインに使っていたカードからCirrusのロゴが消えてからしばらく経つ。提携の終了はJCB社の方針らしい。Cirrusは海外ATMでのキャッシング網のロゴで、米国マスターカード社が運用している。JCBはそのネットワークを利用しこれまで世界中全てのATMでキャッシングが可能だった。日本円を海外通貨に両替するのは日本人の多く行く国々では問題なくても、例えばアフリカや中南米あたりだとレートが悪かったり、そもそも両替できなかったりする。そういう国の通貨を得るための手段としてATMからのキャッシングはとても便利で経済的な手段だったのに、それが使えなくなってしまった。数日しかいない国ではあえて現金を入手したくはなく、できればクレジットカードだけで過ごしたい。頻繁に旅行に出かける人はみな同じ気持ちであろう。しかし現金なしで過ごせる先進国ばかりではないのだ。
海外の多くのATMで事実上JCBカードが使えなくなるということで、ただでさえ海外で使える場所の少ないJCBカードの出番がさらに減ってしまった。AmericanExpressは十年以上前にクレジットカードのキャッシング機能を廃止していることもあり、まぁAmexくらいの利便性になるなら別に良いかという感覚もなくはないのだが、しかしこれまで使えていたものが代替の手段もなくただ廃止となるのは大変不便なものである。海外で過ごす時間が長くなるにつれサブカードに使っていた適当なマスターカードの出番が増えている。サブカードなので枠も小さいしたくさん使っても航空会社のマイルが貯まるみたいなメリットはない。JCBはアメリカやカナダ、オーストラリアのような国々ではDiscoverやAmericanExpressと相互開放しているのでそれなりに使えるものの、ヨーロッパをはじめとして中南米やアフリカでは明示的にアクセプタンスマークを貼っていない加盟店も多い。使えるのかな、使えないのかな、と不安に思いながら差し込んでみて、うまくいかなかったときにまごついてしまうなど、カードを使うときにこっちが気を遣うようになってしまっている。本末転倒だ。こうなるとセルフレジでしか使いたくなくなる。もっとV/M以外のブランドも普及してもらいたいものだが、JCBよりさらに歴史あるDinersはさらに使える場所が少ないということを考えると当面は望めないだろう。昔の便利だったころのKyashのようにただ決済をプロキシできるカードがあればいいけれど、V/M以外のチャージに対応しているサービスは現状ない。
これまでずっとJAL JCBカードと適当なマスターカードの組み合わせで数年過ごしてきたが、もう一度整理し直した方がいいのかもしれない。日本の企業を応援したい気持ちがあっても、こう日本国外におけるJCBカードの利便性が低下すると我慢して使うほどでもないかと思ってしまう。ダイナースカードを使っている人々はこの気持ちをずっと抱き続けていたのだろうか。美人秘書たちの羨望のまなざし以外にもメリットはあるだろうが、使える店の数というわかりやすい利便性ではAmexもDinersもDiscoverもJCBも、最大手の二社であるVisaやMasterに勝つのはどうやってもむずかしい。もう全部諦めるか。
メインの口座として使っていた新生銀行もしばらく前はキャッシュカード自体にPLUSロゴがついていて、そのまま海外ATMで外貨を直接引き出すことができたがこちらも既に廃止されている。この用途ではソニー銀行のほうがよい。キャッシュカード自体がデビットカードとして使えるし、コンタクトレス決済にも対応している。何年か前には便利で賢いと思っていた選択が、結局のところ時間の経過とともに不便で無意味な選択になっていることもある。クレジットカードもはともかく銀行はけっこうスイッチングコストが大きいのだが、なにも考えずにその場でとどまると搾取される一方だ。状況の変化に対応できず放置していると損をして嫌な気分になる。ストレスの原因は積極的に取り除いていきたい。