マイアミにいってきた

ブエノスアイレスを後にして次の国へ向かう途中、マイアミでの非常に長い乗り継ぎ時間が生まれた。アメリカは乗り継ぎであっても入国審査が必要で、空港での手続きとしては入国と乗り継ぎに差はほとんどない。同じアライアンスであっても一度荷物を受け取り、再度預け直したりする必要がある。そういう点でアメリカ乗り継ぎは結構不便なのだが、乗り継ぎと入国が同じ扱いというのは考え方を変えればもう一都市多く観光ができるという魅力的なオプションでもあるので、私は積極的にやたら長いトランジットの時間が確保できるフライトを選択している。

マイアミへの到着は早朝だったが、もちろん空港連絡鉄道は動いている。一日乗車券を購入し、街に向かうことにした。半袖で十分な暖かさと海沿いのリゾート然とした湿度のある空気が満ちていて、自分が真夏の南半球から真冬の北半球までやってきたという感覚がない。

列車を降りるとそこはマイアミの都心部で、オフィスビルや大きなホテルが林立している。ここでバスに乗り換えてマイアミビーチに向かう。マイアミでは列車とバスは経営母体が同じ(マイアミ・デイド郡交通局)であるため、一日乗車券一枚で空港連絡鉄道もバスも乗り放題にできる。観光客にとってとても便利な仕組みだ。

MOTHER2のサマーズという街を思い出すような町並みだ(伝わるだろうか)。古き良きアメリカという言葉で思い浮かぶ景色そのままという感じがしてとてもよい。並ぶカラフルなお店の向かいには白い砂浜のビーチが南北に長くつづいており、たくさんの市民やオーシャンビューの豪奢なホテルに滞在している観光客たちが思い思いに過ごしている。

マイアミの海の色はシドニーで見たボンダイビーチみたいだ。透明度も高く、真冬のシーズンだが気温も暑いくらいなのでマリンスポーツに興じている人やビーチで寝転んでいる人もたくさんいる。海風が気持ちいい。

ひとしきりビーチでぼんやりしたあとはマイアミの街を歩くことにする。

マイアミ市街地のウィンウッド地区にきた。この場所はもともと倉庫街だった場所を再開発して生まれたアート地区らしい。正直に言えば私個人は壁へのペインティングは単なるヴァンダリズムだと思うのだが、ここはストリートアーティストに正式に依頼して生み出されたらしい美麗な作品が並んでいる。逆にここまで芸術として昇華させてしまうとただ意味のない文字をスプレーで描いたりするようなそこらへんのいたずらをしようという気も無くなりそうだ。

ミュージアム・オブ・グラフィティというところがあったので入ってみた。ストリートアートの歴史が詰め込まれたコンパクトな美術館で、グラフィティの発展がわかりやすくまとまっている。ここのお手洗いの内装はすごかった。

夕暮れ時になる。フライトの時間まではまだまだあるが、特にマイアミですることもなくなったので最後にビーチを見て帰ることにした。

つい感傷的になってしまいそうな穏やかで美しいマイアミの海が広がっている。三日前まで見ていた南極の風景とは似ても似つかない。ドレーク海峡はマイアミビーチを見習った方がよい。

ところでマイアミの公共交通の掲示は3カ国語で記されている。一つ目は英語、二つ目はスペイン語と一目でわかるのだが、三つ目の言語に見覚えがなかった。アルゴンキン語みたいな少数言語かな、とおもってこの写真をアメリカ人の友達にそのままみせたところHaitian Creoleだという。実際ハイチアンクレオール語を日常で使っている人はフロリダ州だけで40万人もいるらしいので地域の立派な主要言語だ。私は言語の多様性は当然に保持されるべきだと思っているのでこうして平等に扱われている地域言語の姿を見るのはとても嬉しい。