モンテネグロのコトルにいってきた

モンテネグロの首都ポドゴリツァの街から日帰りで行ける気軽な観光地として「コトル」がある。ポドゴリツァはそれほど観光名所に恵まれてはいないため、バスで向かってみることにした。

ポドゴリツァからコトルまでは高速バスで2時間ほど、金額は7ユーロ。意外にもバスは満車だった。モンテネグロに…?と思うがそれはお互い様である。ポドゴリツァに滞在している人間がそんなにいたとは感じられないのだが、いったいどこにいたのだろう。英語で話しているひともいる。観光客なのだろう。バスは山岳地帯を大きく迂回するので直線状のルートではないが、基本的には出発の地であるポドゴリツァのバスターミナルから終点までぼんやり座っているだけでよい。運が良ければ電源やWi-Fiのあるバスに当たるかもしれない。

到着するコトルのバスターミナルはとても小さくカウンターも一つしかない。2022年現在は現金のみの取り扱いだった。

モンテネグロはその峻険な山々を擁する国土からもたらされる清涼な水資源で知られている。そこらへんのスーパーに行けばモンテネグロの天然水が売られているくらいで、川の水もそれなりにきれいに見える。わたしは自分の地元に流れる河川が日本で最も汚い川とされていたため、こういう透き通った水の流れる川を見ると心が躍る。

よく見ると山肌に城壁がある。この街はもともと全長4.5kmほどの城壁に囲まれた城塞都市だったらしい。その遺構がいまでもいたるところに残っている。1000年以上前から建築が始まり、数百年かけて今の形になったという。

こういうヨットがたくさん係留されている風景を見ると、つい「熱海みてぇだな」と思ってしまう。モナコに行ったときも同じ感情を持った。

私はこういう路地が大好きで、初めて海外旅行に出かけたときから「路地にその国の魅力は詰まっている」とずっと言い続けている。いろんな国の路地を見てきた。この路地もよい。非常によい。このザ・旧市街という感じはストックホルムを思い出した。

ねこがついてきた

コトルの城壁の管理はかなり適当で、朝晩、あるいはオフシーズンは集金の担当者がいないので無料で出入りできるとか、チケットカウンターのある場所以外から入場すれば料金がかからないという噂が旅人たちの間ではまことしやかに流れている。私は、入場料を

城跡からはコトルの街を一望できる素晴らしい景色を拝める。複雑なリアス式海岸と旧市街のオレンジ色の屋根がごちゃごちゃとひしめき合うかわいらしいコトルの街は、ドブロブニクのそれに似ている。ドブロブニクの縮小版とも言われているようだが、あちらと同じようにこちらも世界遺産に登録されている。両都市は距離も近いのでセットで観光する人もそれなりにいるようだ。

景色をぼんやりと眺めていたら、知らない白人に不意に話しかけられた。「ヘイ!夜行列車で一緒だったよ!」。…正直まったくピンとこなかったのだが、この時期にセルビアからモンテネグロまで夜行列車で来る人など数えるほどしかいないのだからきっと本当だろう。彼はスイスから旅行で旧ユーゴスラビアの国々を回っているらしい。オーケストラのメンバーとして日本にも来たことがあるという。日本人は珍しいから印象に残っていたのだろうか。とても驚いた。

城壁を降りて旧市街をうろうろする。この街には山ほどネコがおり、同様にネコがたくさんいる街として知られるマルタ共和国の首都バレッタよりも個人的にはたくさん見かけた。田代島(宮城県)や青島(愛媛県)のような離島ではない場所としてはここまでたくさんのネコがいる街はそうそうないように思う。人になれているようで逃げないし、エサをもらえると思っているからかネコのほうから近寄ってくる。かわいい。

帰りのバスを待つ。朝から晩までバスは出ているので適当な時間にきてチケットを買えばよい。私は1時間ほど時間が空いたので近くのレストランでビールとフライドポテトを食べながら待っていた。

このポテト、やばうま / MARENDA steak house

どうでもいいがバスでの移動途中の休憩時間で自分の乗っていたバスが私を置いて出発してしまった。最悪だった。日本と違って出発前に乗車人員を数えたりしない。自己責任論の渦巻く過酷な社会で我々は生きていくのだ。バスから目を離さないようにしよう。

帰りのバスから見た景色

首都ポドゴリツァから日帰りで気軽に訪れることのできる街コトル。それほど見るもののないポドゴリツァでぼんやりするくらいならコトルまで足を運んでみるのをおすすめしたい。