留萌にいってきた

北海道の北西部、日本海に面した留萌(るもい)という街がある。旭川駅ちかくの深川駅から留萌本線に乗り換えて留萌駅に向かうことができるのだが、この留萌路線、JR北海道が積極的に廃止したい赤字路線であり、かつ沿線自治体である留萌市も廃止に全く反対していないという珍しい路線だ。本数も少なく乗ったところで旭川や札幌のような巨大な街とは言いがたい深川駅にしか着かないということもあり、地元からの需要が非常に少ないらしい。近い将来廃止になってしまうであろう路線だと思うと、今のうちに行っておこうかなと思った。

旭川駅で往復の切符を買う。留萌駅の窓口の営業時間が限られているのと、同駅に指定席券売機がないのでまとめて往復分を買っておくとクレジットカードも使えるので便利だと思う。往復で3780円。本数も多く乗り換えも不要な高速バスを使った方が安いため、留萌本線の利用者は鉄道ファンしかいないと思われる。

深川駅で一両だけの列車に乗り換え、2時間ちょっとかけて留萌駅に到着する。来るまで知らなかったがカズノコの生産量日本一なのか。夕日はどうだろう。道内だと釧路も同じように夕日の美しさで知られている。言ったもの勝ちかもしれない。

築60年近い駅舎はかなり味がある。駅舎の2階には留萌のコミュニティFM局が入っているらしい。駅舎内には一店のそば屋が営業しているだけであり、そのそば屋の営業時間も短いため商業施設としての役割はほとんどなしていない。かつてこの街が鉱石業や水産業で発展していたであろうころの面影がひっそりと残るのみである。

留萌のマンホールはオリジナルデザイン

留萌駅から観光名所である黄金崎(おうごんみさき)に向かう。駅から岬までは歩いて行ける距離だ。市街地にはコンビニもある。セコマでおにぎりを買った。ホットシェフのおにぎりは本当においしい。すじこおにぎりは北海道に行く度に食べている。

海岸にはハマナスが山ほど生えている。よく熟れた大きな実を大量にはやしているが、とくに実を取ったりはしていないようだ。わたしは食べたことがないが、北海道ではハマナスの実をジャムにして食するらしい。郷土料理に近いものだろうからそこらのスーパーでは入手できなさそうなものの、いつか是非食べてみたい。勝手にもぎってジャム作りに使っていいのだろうか。

黄金岬は典型的な柱状節理が観察できる。直径30cmほどの石柱がみっしりと地表に露出している。ジャイアントコーズウェイを小振りにしたような光景だ。冷たい潮風も相まって、行ったことのある人にとっては北アイルランドの地を思い出すかもしれない。

留萌の道の駅にやってくる。ここは数件の屋台も出ていて人も多い。北海道を巡っているバイカーたちが何人もいるようだ。オープンしたばかりらしく、建物は非常にきれいだった。

留萌商業高校の生徒さんたちがかずもちゃん焼きなるものを売っていた。一つ買って食べてみる。おいしい。

このかずもちゃんというのは留萌市のゆるキャラで、留萌ではいたるところで見かけられる。道の駅ではそれなりにコストが掛かりそうなマンホールにまでもかずもちゃんのカラーイラストが入っていて、力の入れ方がうかがえる。

集合体恐怖症を持っていたら恐怖を感じるかもしれない

留萌駅で先ほど買った留萌名物の数の子商品や揚げかまぼこを食べながら列車の到着を待つことにした。店員さんオススメのチーズ和えを食べてみよう。

誰も居ないし別にいいか、と思って近くの酒屋で買っておいた北海道の地酒の小さな瓶も開け、贅沢な気持ちで数の子と合わせていただいた。めちゃくちゃうまい。数の子はやたら酒の種類を選ぶ食品で、赤ワインも白ワインもビールも食べ合わせが悪く非常に食味が劣化する。日本酒が一番合っているらしい。さすがの組み合わせだ。日本の食材はやっぱり日本の酒が合うんだね、などと思いながらだれもいない駅の待合室でもぐもぐと食べていた。

カナダ産だった

調べてみると、留萌では輸入や加工をしているということらしい。それでも数の子については水産加工業の全国シェアの95%を誇っているのだから十分すごいことである。わたしが勝手に留萌が数の子の原産地なのだと勘違いしていただけなのだ…。

留萌は北海道の他の大都市に比べると小規模で、歩いて十分回れるくらいのサイズだ。ペーパードライバーの私にはとても助かる。北海道を車なしで旅行するのは大規模な都市でないとかなり難易度が上がってしまう。加えて留萌本線が完全に廃止されないうちに行けて良かった。一度廃線になった路線が復活することは過去に例がない。留萌本線も遠くないうちになくなり、バスに一本化される日がもうまもなくやってくるのだと思うと、やはり今乗っておかないともったいないという気持ちになってしまう。

良い旅だった。