グリーンランドにいってきた その3

グリーンランド博物館

首都ヌークにおけるいちばんの観光地がここ「Greenland National Museum and Archives」だ。それなりに広い施設の中にはグリーンランドの歴史を映す展示物がぎっしりと詰め込まれている。営業日が少なく、さらに開館時間も短いので短期の滞在だと訪れることができない場合もあるかもしれない。人種的にはアジア人に近しいので顔立ちにはどことなく親近感がある。

グリーンランドには寒冷地に適応した形質をもつ人々が多く住んでおり、エスキモー人種のなかでも特にカラーリットと呼ばれている。人種的には同一であっても、カナダに住むエスキモーをイヌイット、グリーンランドに住むエスキモーをカラーリットと呼ぶようだ。

この極端な気候の島で暮らしていくための毛皮の服、陸路がない中での都市間交通、肉を主食とする食文化。この島の全てがわかると言っても良いような、すばらしい展示だった。一角には凍結した状態で見つかった非常に状態のいい親子のミイラが数体展示されている。ミイラが生み出された600年前の風習では、小さな子をもつ母親が死んだ場合には、死んだ母親と生きた赤ん坊を一緒に埋めていたのだという。

落ち穂拾い

残念ながら毎日どんよりと曇っていてあまり青空を拝むことはできなかった。最終日にみた夕日が一番太陽の姿をはっきりを見た瞬間だ。

グリーンランドではJCBカードが普通に使える。デンマークの決済機関がグリーンランドにも進出しているからだと思うが、このような場所ではV/M以外のカードが使えるとは思っていなかった。もしかしたらJCBカードを使った決済が可能な場所の最北地点になるかもしれない。

グリーンランドのナンバープレートはEUの標準的なデザインとは異なる。グリーンランドはあくまでもEUではないから、というのがその理由だが、そもそもデンマークではEU共通デザインの青いラインが入ったナンバープレートの採用がEU諸国のなかでも最も遅く、かつ現在も必須ではない。そのため頑張ってフェリーでグリーンランドの車をデンマーク本土まで輸送することができれば、そのまま走ることができるらしい。とはいえそのことに意味を見いだすのは難しそうだ。

この写真は、なぜかすこし怖い

グッバイ北極

5日ほど過ごした北極の地を去る日がやってくる。さみしいような、別にそうでもないような、微妙な気持ちだ。これといってすることのないヌークの町であと一ヶ月暮らすと思うとそれはちょっとな、と思ってしまう。南極に比べれば時間的にもコスト的にも渡航がかなり楽だからかもしれない。気になったらまた戻ってくればいいのだ。

しかしオーロラが見られなかったことだけが心残りだ。これまでアイスランド、スウェーデン、ノルウェー、カナダ、グリーンランドに南極と、寒そうな場所にはいろいろ行ってみたことがあるが、一度たりとも夜空一面に広がる爆発的なオーロラは見たことがない。カナダ北部にあるオーロラの聖地「イエローナイフ」に行って挽回したいところだ。次の目的地としてストックしておこう。

市街地から空港までおよそ3800円

チェックインカウンター

エアグリーンランドの航空券

ヌーク空港のWi-Fiは有料。1時間700円は高すぎ

行きに乗ったような曇り空に映える鮮烈な赤色の機体に乗り込む。往路と同じ機体かどうかはわからないが、形状はまったく同じだ。

プロペラ機は空の低い位置を飛んでいく。さっきまでいたヌークの町を上から眺める。とても良い体験だった。ヨーロッパから往復14万円も払ってここへくる価値があるかどうかというとなかなか難しいが、万人向けではないにせよ私は来て良かったなと思う。また戻ってくることもあるかもしれない。ないかもしれない。

復路便も機内食が出た。サンドイッチとチョコレートマフィンは、どちらもひんやりしている。

楽しい旅だった。

私は北極にいったのか

グリーンランドの首都ヌークに行ったことで、私は南極と北極の両方を踏破したことになると思っていた。しかし大陸に海岸線という明確な境界がある南極とは違い、北極は人間が恣意的に引いた線の内側にあるエリアでしかない。そしてその北極の定義というのが複数あることを後に知る。学術的によく使われる定義のひとつが最も暖かい月(通常7月)の平均気温が摂氏10度を下回るというもの。ふたつめが白夜と極夜の発生地域の(計算上の)南限、およそ北緯66度34分に仮想的に描かれた正円を北極圏とするもの。前者は地表面の気温変化によってその範囲が変わるし、後者は標高や歳差運動や潮汐力による赤道傾斜角でその範囲が変わる。実はヌークという都市は、一つ目の定義を満たしているが、二つ目の定義をわずかに満たしていない都市なのだ。

CIA World Fact Book, Public Domain

あらゆる定義を持ってして明らかに北極であると言える場所に行ったわけではない、ということだ。うーむ、私は北極に行ったのだろうか。

単純に地球最北の陸地に行けば北極に行ったことになるが、言うまでもなくそのような場所に人は住んでおらず、交通手段もない。さらに地球最北の陸地も複数存在し、令和4年現在も決定していない。すべてグリーンランドに位置しているが、それでも北極点からは700km以上離れている。ATOW1996オーダーク83-42カフェクルベン島といった地点が最北の陸地だ。これらのうちどれかでも行ければ確実に北極にいったことあると言えるとはいえ、当然無人のエリアである。安全なアクセスは存在しない。

では人間が定住している最北の地はどこか。ノルウェーのロングイェールビーンだ。SAS社がノルウェーの首都オスロと当地を毎日結んでいる。距離が近い分ヌークよりアクセスは楽なので、こっちにいくという手もあった。ノルウェーは何年か前に旅行したことがあったので今回はグリーンランドを選択したが、せっかくなのでロングイェールビーンにもいずれ行ってみようと思う。

おしまい