クウェートにいってきた その3

その2のつづき

クウェートの街を歩いていると、ときおり縞模様をしたキノコ型の水場を見かける。その特異な形状だけでなく白と青のストライプも特徴的で、これまで見たことのないかなり独特なデザインだ。

かわいい

ねぇほら、かわいいね

これは国内にいくつかある給水塔のミニチュアだ。この国にとってある種のシンボルでもあり、著名な物体として広く愛され紙幣にもデザインされている。せっかくなのでミニチュアでない本物の給水塔を見に行ってみることにした。

街の中心部を走る市バス「X16」でおよそ30分。最寄りのバス停からさらに歩いて20分程度で目的地の公園にたどり着く。観光客のいないこの国で、この造形物を直接目にしたことのある外国人もまだ少ないのだろう。塔の所在地やルートについて詳しく説明したWebサイトは見つからなかったが、巨大な給水塔は多少離れた場所でもよく目立つため、ある程度バスやタクシーで近づくことができれば迷うことはない。

ウワッ……!

ウワーーーッ!

あわわわわ

ひぇぇ……

公園の広場にニョキニョキと生えている給水塔はさながら巨大な植物のようだ。わたしはメイドインアビスというアニメで見た巨人の盃をおもいだした。実際に給水塔を前にして広がる視界はかなり異様な光景で、なかなか不気味な印象を受ける。巨大な異形構造物を見るとつい旧ユーゴスラビアのスポメニックを思い出してしまう。わたしはこういうよくわからない巨大建造物が好きみたいだ。

給水塔の赤ちゃん

クウェートの各地に31基存在するというこの給水塔は、芸術作品としても機能する建築物がほしいという先々代のクウェート首長の要望で作られた。塔の一つ一つが強化コンクリート製のタンクになっていて、3000立方メートルの浄水をためこむことができる。河川のないこの国において、各家庭には大規模な海水淡水化プラントで精製された水が配水されている。この給水塔と近代的な配水システムが完成するまではタンクローリーで国内に水を輸送していたらしい。

THESE WATER TOWERS WERE BUILT UP BY CZECHOSLOVAK STEXAB CO 1975

給水塔に近づいてみると定礎みたいな金属板が設置されている。1975年にチェコスロバキアのSTEXAB COによって建設された、というような内容が記されているが、会社名で検索しても一件もヒットしなかった。現存しない企業なのかもしれない。

町歩き

冬季であれば昼間に街を歩いても快適だ。気温は25度くらいなので半袖シャツでうろうろと海沿いを散歩するのも気持ちがいい。特徴的な高層ビルも多く、建築物が好きな人なら頭上を見上げて歩くだけでも楽しめることうけあいだ。

クウェートで最も高いアルハムラタワー

アルハムラタワーができるまで最も高かったKIPCO Tower

おしゃれなバス停のサイン

曲線美あふれるアッシマ・モール

クウェート一番の観光名所、クウェートタワー

クウェートを旅した人はほぼ全員がこのタワーの写真を撮る。この国でもっともアイコニックなスポットだ。わたしが行ったときは工事中で中に入ることはできなかったが、普段は1000円くらいの入場料を払えば球状になっている展望台部分に入ることもできる。

でも、まぁ、そんなもんである。クウェートの観光として特色のあるものというのはこれまで書いてきたように、これくらいなのだ。モスクとかスーク(市場)とか博物館とかもあるが、近隣諸国に比べてそれらが観光地として優れているかというとむずかしい。

おれもだよ♡

クウェート、治安もいいし、人も優しいし、いい国だったな思う。しかしどうあってもあまり観光に向いたところだとは言えない。旅人を受け入れてくれる国は当然それだけでありがたいと思うべきで、別に悪く言いたいわけはないのだが、この国はそもそも観光開発にチカラを入れてなさ過ぎる気がする。国全体が同国の長い歴史や恵まれた経済を活用した観光政策の推進を明確に拒否しつづけているように見えるし、そしてその印象はおそらく正しい

もしドバイに行ったことがあるのなら、クウェートはちょうどドバイの縮小版といった印象を持つのではないだろうか。豊かで、暑く、安全で、そしてすこし退屈だった。

おしまい