旅行にシャンプーとリンスを持っていくのをやめた

リュックサック一つで旅をしていると、液体物の持ち運びには誰しも苦労する。国によっては緩和されている場合もあるが、一般にあらゆる液体は100ml以下の容器に入れなくてはいけないし、それら全てを再封可能な容量1リットル以下のジッパーの付いた透明プラスチック袋に入れなくてはならないというルールの遵守が求められる。

そうはいってもシャンプーにリンスにボディーソープ、化粧水に乳液に日焼け止め、シェービングフォームに歯磨き粉や虫除けなど、つい持ち歩きたくなる液体物は数多い。現代人の生活はさまざまな液体に支えられている。

そんななかで、ちょっとでも液体物の運搬を減らせるよう、旅行に持っていくアイテムを最適化してみようと思い立った。持ち歩いている液体物を同じ機能を満たす固体物で置き換えてしまえば、空港で面倒な制限が課されることもない(中東の一部紛争地域などで警備体制が極端に強化されている地域では持ち込めなかったことはある)。

イラクの街中にある石鹸屋さん

まずボディーソープとシャンプーとのかわりにシリアで作られているアレッポ石鹸を使うことにした。体を洗うのも髪を洗うのにも使えるとのことなので試しにと思い石鹸一つに切り替えてみた。体はともかく髪を石鹸で洗うのは初めてのことだったので初めは少し抵抗があったが、試してみるととくに違和感もない。ミューズみたいな薬用石鹸は手洗い以外に使わない方がいいだろうが、それとは違って初めから全身に使えるように作られた石鹸というのは一大ジャンルとして案外いろいろあるらしい。

ビッグ プレスト コンディショナー

髪を洗ったあとのリンスも固体化したい。私はLUSHが出している固体のコンディショナーを買ってみた。いい匂いがする石鹸状のリンスで、ずっと売れている人気商品らしくどこにいっても店頭にたくさん積まれていた。ひとつ1840円もするので安くはないものの、何度か使ってみたが自宅で普通に液体のシャンプーとリンスを使うのとそれほど変わらない洗い上がりだった。

個人的にはLUSHってシーシェパードに資金提供してたんでしょ、とか、気仙沼のサメ漁に対して反対キャンペーンしてたよね、みたいなネガティブイメージがあったのでなんとなく避けているブランドだったが、プロダクトとしてはなかなか良かった。同じような固体のコンディショナーはLUSH以外にもEthiqueというニュージーランドの会社も販売しているようなのでこちらでもいいと思う。日本では横浜のロフトに売っているらしい。

そんな石鹸と固体コンディショナーは使用後に濡れていると扱いに困る。ぬるぬるしているときれいに運ぶのもなかなか難しく、よくあるプラスティックのケースにいれてリュックにつっこんだら水が漏れて服などを汚すし、ジップロックなどに入れたらいつまでも石鹸は乾かずどろどろに溶けたり雑菌がわいて不衛生になることは想像に難くない。

そこでマタドール社のソープバーケースを買った。ぺらぺらの柔らかい袋は自由にサイズを調整できる便利な石鹸ケース……というだけではなく、生地全体の微少な穴から水蒸気だけを逃がすという謎の技術により、ぬれた石鹸はこのケースに入れておくといつのまにか堅く乾いた状態になる。

濡れたままそのままつっこめるというのは本当に便利で、乾くまで待ったりバスタオルで水気を切ったりしないでいいとか、あるいはループ状になったバックル部分をリュックサックに掛けておけばさらに乾きやすくなる。素晴らしいプロダクトだ。ただ、値段はかなり高い。一つ2310円もする。石鹸用とコンディショナー用で二つ買うのは若干迷ったが、構造的にそうそう壊れるものでもなさそうだからよしとする。

コロナ禍で数百日間日本に帰らないまま旅を続けていたあのころと違い、普通に会社勤めとなった今、月の半分ほどは日本にいる。高品質な旅行用品が簡単に手に入るこの国にいる地の利を活かし、荷物の削減と最適化を楽しんでいこう。