フィンランドのサウナにいってきた
フィンランドといえばムーミンにマリメッコにシモヘイヘと多彩な文化で知られるが、このうち観光客でも楽しめるアクティビティといえばやはりサウナ一強である。いうまでもなくサウナ文化発祥の地(諸説あり)であり現在もサウナの一大メッカとして周辺国にもあるサウナ文化を圧倒したブランド力を持っている。
私はフィンランドのサウナ自体には入ったことはあるが、それはフィンランドの伝統的なサウナというにはあまりにも現代的なもので、一般に日本人のサウナファンが想像するような「森+湖+サウナ」みたいなフィンランドらしさを存分に味わえるようなものではなかった。今回ヘルシンキに立ち寄る機会があったので、そんなフィンランドっぽいサウナを探して行ってみることにした。
目的地のKuusijärvi saunasはヴァンター空港からBolt(配車アプリ)で18ユーロ、ヘルシンキ駅からでも23ユーロほどで到着できる。電車やバスを乗り継いで公共交通機関だけで訪れることも可能だが、乗り継ぎが多く案外時間が掛かるのでアプリでタクシーを呼ぶことをオススメしたい。フィンランドの物価は少々高いがタクシーに限っては日本と比べてかなり安価といえる。
Kuusijärvi saunas
受付でサウナの種類を尋ねられる。よくわからなかったので店員さんにお勧めを聞くと「そりゃもちろんスモークサウナだよ」と教えてもらえる。安価な電熱式サウナもあるが、フィンランドの伝統的サウナといえば薪を焚いて暖めるスモークサウナ(Savusauna)なんだそうだ。料金を支払いリストバンドを腕に巻き、カウンターの上に広げられた簡単な地図を元に脱衣所やサウナの建物の位置関係を説明してもらう。
とてもフィンランドらしい夏の爽やかな気候のなか、教えられたロッカールームに入って水着に着替える。貴重品用のロッカーもあるので財布とかはそっちにしまおう。
前日まで泊まっていたホテルの使い捨てスリッパを持ってきてて良かった
ロッカールームを出て、すこし焦げ臭い部屋に近づくと、汗だくのおじいさんがひとり全身を真っ赤にさせて出てきた。ぎょっとするほど赤い。白人の色の変わり方にはすごいものがあるというのも正しかろうが、入れ替わるようにサウナに入ってその理由が瞬時に理解できる。部屋がとてつもなく熱い。いままで入ったどのサウナよりも熱い。入ってすぐに耳が痛くなる。耳を手で覆いながら熱に耐える。スモークサウナという名にたがわず部屋を形作る丸太の壁は一分の隙も無く燻煙されており、部屋全体にスモーキーな香りが満ちている。部屋に備わった小さな窓からのぞく陽の光が煙の粒の存在を際立たせる。スモークサウナはそれほど熱くなくマイルドに体を温めると聞いていたが、まだ日が高い時間で薪のエネルギーが蓄えられたままだからか、私は5分と入っていられなかった。
サウナを出て汗だくの体を湖に飛び込んで冷やす。水が冷たい!
伝統的サウナで体を温めて水風呂の代わりに湖に浸かる体験ができた。私自身はそれほどサウナの良さを理解できていないという自覚があるものの、これほどまでに開放感のある場所だと良さがわからないなどと言っている場合ではない。これは気持ちの良い物だ。
湖面にはカモが横切ってたりするので湖の水は清潔ではないかもしれない。口に入らないようにしたほうがいいだろう。
アクセスの良さからか観光客らしき人々も
フィンランドの短い夏はすでに終わりかけており、風も湖水も冷たい。サウナの煙で痛いほど熱された体にその冷たさが心地良い。私には夏の湖水で十分気持ちよく楽しめたが、あと数ヶ月待つとこの湖は完全に氷結するらしい。冬場は時折マイナス30度まで低下する北欧なのだから当たり前のことではあるが、そうなったとしてもこのサウナは毎日営業を続けている。湖が氷結したら湖に穴を開けてそこに浸かれるようにしてくれるのだ。南極で海に飛び込んだときの体験を日本から直行便のある街で楽しむことができた。冷たい水風呂ならウェルビー栄に行った方が近いかもしれないが、しかし森の中の湖という舞台は一度体験してみてもいいと思う。