人と話すといいことがある

地球で一番つまらないであろうTiming Analysis and Dynamicなんとかみたいな授業が週にひとコマあります。毎回毎回死ぬほどつまらない授業なのですが、期末試験の2個まえの授業なので、久しぶりに参加することにしました。

他の学科の友人と学食で時間を潰し、授業3分前に教室に向かうとなにやらいつもより人がたくさんいます。この授業は私にだけつまらないのではなく全員平等に退屈に作られているため、普段の参加者は10人いるかどうかっていうところなのですが、今日ばかりは履修者のほとんどが参加しているように見えました。

教室前の人だかりに近づき、「何かあったの?」と聞いてみると、「今日プレゼンするんだぜ」という答え。どうやら適当にグループを作って与えられた課題を解き発表するのだとか。

血の気が引きました。

エストニアに限らないのでしょうが、欧米の大学には出席点という概念がなく、試験と課題の提出だけで評価が下されます。 逆に言えば授業に出たって出なくたってなんの差も生まれないということになります。 それがゆえに私はこの授業に参加していなかったのですから、プレゼンのことも知りませんでした。 試験一発勝負なら気合と根性の一夜漬けで乗り越えてきましたが、プレゼンが必須なら相当ヤバイです。 採点の比重は知りませんが、課題を研究して発表するんですからサボるのはハイリスク。

始業の時間が近づき、教室に人が吸い込まれていきます。「まぁ授業何週間も出てなかったんだから仕方ないわな。家帰るかー」と思ってクラスメートにそう告げると、「いやいや、俺らのスライドにお前の名前追加してやるよw」とのこと。福音です

このクラスメートとは話したこともありません。顔くらいは知ってますが、アラブ系の顔立ちをした学生とエストニア人学生と黒人学生に混じらせてもらうことになりました。そもそもこの授業で何を教えていたのかもわかりませんし、プレゼンで何を発表するのかもわかりません。とりあえず最初のページに表示されるメンバー一覧に私の名前を追加させてもらいました。並んだ名前は知らないものばかりでしたし、私の名前も他のメンバーは知らないはずです。

各グループが発表を進めていきます。私が入れてもらったグループは一番最後。相変わらず他のグループが何を発表しているのかよくわかりませんし、教授がぶつけてくる質問もなにを聞いているのかさっぱりわかりません。

しばらくして私達の順番が回ってきました。プレゼンなので一応教室の前に立ちますが、初めて見るスライドを初めて話す生徒が初めて聞く声で解説していきます。手に汗をかいてきました。全自動で動くロボットがセンサーをどのように使い、かつ同期して作業を行うか、という内容らしいです。今この文章を書いていてもなんだかよくわかりません。これのどこがコンピュータサイエンスなのでしょうか。

発表のセクションごとにグループのメンバーで内容を分割して話しています。もちろん私に話すべきことなんて一文字もありません。にもかかわらず教室の前にぼんやり意味もなく立っているのですから居心地が悪く気をもみます。

発表が終わり、質疑応答です。事前に質問するのが好きな生徒全員に「絶対に質問すんなよ…!」と釘をさしておいたおかげか誰も手を上げません。教授がやっぱりよくわからない謎の質問をしてきて、それに他のメンバーが回答しています。質問も回答もわからないのでここでも私はぼんやりと立ち尽くすことしかできません。

そしてまたこの質疑応答が長いこと長いこと。いつまでたっても終わりません。とっとと自分の席にもどりたいです。プレゼンをすること自体は好きですが、それは自分の発表内容に自信があるときに限ります。それ以外のプレゼンなんて恥を晒すだけの苦行にほかなりません。それでもここを乗り切れば多少のポイントが入るでしょうし、そのおかげで期末試験のハードルがすこし下げられるかもしれませんから我慢です。

やっと終わった質疑応答のあと、発表者の名前を記入する教授のメモ帳にしっかりと本名を記入しました。課題の研究もスライドの用意も発表すらやっていない私が他の優秀な班員と同じスコアをもらえたわけです。授業の前になんとなく話しかけたやつが優しかっただけですが、このおかげで留年しないですめば彼は私の大切な時間を半年分セーブしてくれたわけです。感謝しなくては。

授業終了後は班員に話しかけてお礼をしておきます。やややり過ぎなくらいにプレゼンを褒めまくっておきました。

…なんかやってること大学時代となんにも変わらないな(笑)