ヨーロッパ留学の魅力

日本の大学に入学し、次は院に進もうかと思っている人には、是非ヨーロッパへの留学も検討してみてほしいなと思います。

私はヨーロッパの小国、エストニアの国立大学の修士課程に進学しました。この国とこの学校を選んだきっかけは他のページに詳述するとして、なぜヨーロッパへの留学なのでしょう。日本の大学院でも十分ハイレベルな教育を提供するだろうし、留学といえばアメリカやイギリスが主流です。わざわざ英語が通じるのかもよくわからないところに行かなければならないなんて……。その考えははもちろんよく理解できます。私もまったく同じことを考えていました。ただ実際によく考えてみると、ヨーロッパへの留学の魅力がその他の選択肢と並ぶくらいに大きいと思っています。

私は東京の理系大学を卒業後、どうしてもそのまま進学したくありませんでした。この大学の理工学部情報科学科という場所が私にとっては驚くほど退屈だったのです。良い先生も居ないわけではないし、面白い授業も無いわけでもない。おそらく私がもしほかの大学に行っていたとしても、きっとその大学をつまらないと感じていたでしょう。なので特別にひどいわけではないと思うのだけれど、やっぱり一度つまんないと思ってしまった大学にこれ以上いるなんておぞましいプランでした。学部時代の4年間にプラスして修士課程の2年間、あわせて6年なんていうのはひとつの場所にいる期間としてはあまりにも長すぎる。できれば他の大学、行けるなら国立の大学院がいいな、なんて思っていたのでした。

現実的な問題として、大学院への進学は自己への投資以外の何物でもありません。数百万円を自分に投資することで生涯賃金を底上げするために行くわけです。それ以外では単純にモラトリアムを延長したいという希望で考えなく進学する人もいるでしょうが、それは別に私が批判するようなことでもないので皆が好きなようにするべきでしょう。やりたいことをやろう。

学費

なんと行っても学費です。 ヨーロッパには国がEUだけでも28カ国もあり、大学の仕組みもさまざま。 それでも基本的に日本の大学・大学院の仕組みと大きく異なるということもなく、 修士課程として留学したらもちろん修士の学歴を手にすることができます。 日本の修士課程なら私立で100万円はくらいかかりますよね。国立ならもうすこし安いけど、やっぱり50万円以上する。 驚くべきことに、ヨーロッパには学費が無料となる大学院が腐るほどあります。場合によっては奨学金が給付されたりまで…! 日本の大学院に在学するお金で留学ができるわけです。アメリカやイギリスではこうはいきません。 アメリカの大学院なんて日本の数倍の学費が取られます。 イギリスもやっぱりかなり高価なので裕福な家庭でもないかぎり、おいそれとは行けないでしょう。 私の選んだ大学院は修士課程の学費が完全に無料。さらに奨学金が月に300ユーロほど振り込まれました。 物価の安いエストニアという国だった上、学生寮に住んでいたので家賃も微々たる額だったため自己負担の額はかなり少なくすんでいました。 学費が無料の大学なんてマイナーな国だけじゃないの、って思われるかもしれませんが、 実はそうでもなくて、普通にフィンランドとかドイツみたいな教育の進んだ国にもたくさん用意されているし、 特定の学部だけなんてこともなく、非常に幅広い学科において無料ないしは格安の教育が提供されています。

英語

日本で普通に大学生としての生活を送っている限り、まず流暢な英語など話せません。 これは仕方の無いことで、日本で暮らすにあたって日本語以外の言語が必要ないのだから、 練習する機会もなければ学習のモチベーションだって持ちようがないのです。 ヨーロッパの大学院はどうでしょう。 70もの言語が共存しているヨーロッパという特殊な場所柄、ある程度共通の言語を使って指導しなければなりません。 もちろんその言語は英語です。 ヨーロッパで大学学士課程を終了した生徒であれば、かなり上手に英語を使いこなします。 日本語に比べて言語的特徴の近い言語なので単純に比較するのはフェアじゃないですが、日本人学生に比べるとやはり流暢です。

楽しい

主観になりますが、日本の大学院にくらべれば相当刺激的です。 日本の院って研究者になるつもりでもなければかなりヌルい環境です。毎日研究室に行ってだべってばかり。 ポスターを展示しなきゃいけないとかの義務があったって忙しくなるのはせいぜい一ヶ月なんてところは珍しくありません。 私が行きたくないと言っていた母校の院は、進学した友人に連絡して聞いてみたところ、 週に3回くらいの講義があるくらいで、あとは何一つなにもない空虚な毎日だということです。

テスト期間近くなると回ってきたカンニングペーパー

また、ヨーロッパの大学院は日本に比べると圧倒的に国際的です。留学生対象の寮には世界中から集まった学生が住んでおり、その出身国の散らばりぐあいは尋常じゃありません。様々な国の文化を知ることができますし、パーティのたびに毎回別の国の人が作った民族料理みたいなものにありつけます。これがとってもおもしろい! 日本の院に進むということは、その時点であなたは22〜23歳前後だと思います。20年以上日本に住んだのですから、そろそろ言葉も文化も違うところに飛び出してみませんか?世界中に散らばる人脈がほしいなら、学校で出会った友達と週末にでも飲みに出かけましょう。友達付き合いが苦手なら週末旅行にでも出かけましょう。ヨーロッパは国が密集している地理的特長も相まって観光地には事欠きません。一人で休日にバスにのって隣の国に出かけるなんてこともできます。そんな場所だからこそ旅行好きの学生には心の底からオススメできます。

意外と楽

ヨーロッパの大学院は研究室に配属されることは少なく、基本的にやることは学部時代と大差ありません。 というかほぼ変わりません。授業の数が少なくなり、一つ一つの授業のレベルが上がるだけで基本的には学部時代の延長線上にあります。

授業を受けて、期末試験前だけ一生懸命勉強して、テストが終われば全部忘れて自由を謳歌する……。 基本はこれだけです。 研究が主体の日本の大学院では、毎週のように生徒がプレゼンしなきゃいけないみたいなのがありますよね。 英語でプレゼンして質疑応答するなんていきなり留学直後にできるわけないよ…、 と考えちゃうような学生にこそぴったりです。私もそうでした。 日本の大学はテスト直前に試験範囲を効率よく頭に叩きこむことが重要です。 ヨーロッパの大学・大学院もそれは同じ。日本で留年せずにこれたならヨーロッパでもやっていけます。 生徒同士で激しいディスカッションとか無いし、教授もそんなに生徒の回答を求めたりしません。 アメリカではアグレッシブな学生が多いそうですが、私は目立たず静かな学生でいたかったのでヨーロッパはちょうどよかったです。

留学することのデメリット

まぁこれだけおすすめしてきたヨーロッパ大学院留学ですが、どうしようもない欠点もいくつかあります。 メリットとデメリットを両方熟慮して、初めて留学は実行に移すべきでしょう。

日本での就職が非常に不便

欧米留学最大の欠点だと思います。欧米の大学の卒業時期は6月です。 日本の企業では入社時期が一般的に4月なのでこれに間に合いません。 では翌年の4月に入社となるのでしょうか。これも違います。 6月の卒業を迎えて帰国し、10−12月ころから就活が始まります。 この就活の内定が出るピークの時期が翌年4月です。では実際の入社時期はいつでしょう。 もちろん翌翌年の4月になってしまいます。 日本の大学・大学院と企業というのは、新卒一括採用という慣行によって結ばれています。 結果として欧米の大学・大学院を2015年6月に卒業した場合、実際の入社は2017年4月になってしまいます。

この極めて大きななにもない時間ができてしまうことは覚悟しましょう。 通年採用や秋採用をやっている一般企業の数は日本では稀有です。 IT系企業だといつでも履歴書を受け付けてるよ、というところも多いですが、 例えば留学経験を武器に総合商社に行きたいと思っても、スケジュールは非常に間延びします。 その上、卒業後に帰国して就活を始めるにしても「既卒扱い」をする企業もまだまだ多いです。

だからといって在学中に日本に帰国して面接を受けたり試験を受けたりするのも大変です。 何よりお金がかかります。地方出身のかたは東京や大阪にホテルを借りなくてはならないこともあり、 面接が何回行われるのかにもよりますけど、新卒として就活するならお金の負担はとてつもないものになります。

どうせなら海外就職ってのもありかもしれません。それなら日本の就活スケジュールなんて関係ありませんし、 大抵の国でインターンシップを募集していますから、きっといい経験になりますよ。 その後、もし日本に戻りたくなってもその時は転職の扱いになるので4月まで待つ必要はありません。

ご飯がイマイチ

はっきり言ってあなたが日本に生まれ育ったのなら、海外で暮らすのにあたって最も辛く、悲しいのが食の事情です。 海外では通常の日本食を食べることは不可能です。ヨーロッパでは物流の都合もあり、いくらお金を積んでも日本と同様の食生活は望めません。もちろんヨーロッパの美味しいものもありますが、食文化自体がまるっきり違うため、ヨーロッパの美味しいものだけを食べて生活することは強い苦痛を伴います。

「サンマが旬だ、捌いてお刺身にしよう」と思ってもそもそも手に入らないのです。 ロンドンやパリなどにある大規模な日本人街であれば日本食のショップはありますが、そういうところでも基本的には長期保存の効く食材しか取り扱いません。冷凍かレトルト、あとはお菓子か調味料くらいなものです。新鮮な野菜や魚介類は諦めましょう。 例えば蕎麦やうどんなどの乾麺なんかは手に入ります。でも薬味の長ネギやみょうがは無理です。ヨーロッパに来る前にしこたま食べておきましょう。

治安

大都市は治安が悪いです。パリやロンドン、マドリッドなどではスリや強盗が頻発していますし、交通マナーも悪いため事故に巻き込まれることも…。こればかりは自衛以外の防衛手段はありません。逆に大国でも小さな田舎町や北欧の国々はかなり治安が良いです。もちろん油断は禁物ですが、かなり安心して生活できることは間違いありません。

学校の選び方

留学したくなりましたか? もし行きたい国があるならばぜひ一度行ってみるといいです。 日本からの旅費はかなり高いですが、それだけの価値はありますよ。 行ってみたらつまらなかった…、となったとき、下見せず留学していたらと考えるとぞっとしますね。 学校選びは適当でも大丈夫。もしあなたが、「農業経済学を学びたい」というのなら学校の選択は簡単です。 でももし「政治学を学びたい」なんてなったら選択肢は時に数千倍まで膨れ上がります。 幸いにも便利なウェブサイトがありますので使ってみましょう。 その一つのStudyPortals 行きたい学校が絞り込めたらあとは各サイトの指示にしたがって必要な書類を集めたりその学校に郵送したりをこなしていきます。

どうでしょう。「俺が留学なんて無理っしょwww ウェーイwww」なんて思っていたあなたも、今はもう欧州大学院留学の第一歩を踏み出しているかもしれません。せっかくなのでちょっと試してみませんか。

留学したほうがいい人

  • 旅行が大好き
  • 学部で就活してなかった、もしくは無い内定だった
  • 今までの学部の授業がつまらなかった
  • まだ就職するのは早いのでもうちょっと遊びたい
  • 英語使えるようになりたい

何か聞きたいことがあれば気軽にメールでもなんでもください。わかる範囲で答えますので…。