2017-01-02

ギリシャ・アテネにいってきた 2

このあと日を開けつつも何泊かこのホテルに泊まることになるんだけど、ここの、おそらくは唯一の利点と言えるのが朝食だった。たいていの安いホテルの朝食はかなりしょぼく、バスケットに雑に盛られた薄切りのパンとオレンジジュースとコーヒーがあるだけの質素なものだろうと予測していた。最安値のホテルが表示する「朝食付き」の文字ほど魅力的なものはなく、そしてこれほどがっかりさせられるものはない。蠱惑的だ。

ところが、この予想はいい意味で裏切られた。目に飛び込んできたビュッフェは安宿とは思えない驚きのクオリティだった。すばらしい。パンも野菜もチーズもドリンクもそろっている。ハムもソーセージもある。ギリシャらしく山盛りのオリーブもある。「おぉ…」と声が出てしまうほどだ。一泊1500円ばかりの安宿でこんなにまともな朝食を出して採算はあうのだろうか。二枚の平皿をお盆にのせ、サラダと薄焼きのパン、チーズとハムとオリーブにゆで卵をその上にのせてテーブルにつく。最高だ。すごくおいしい。

これまでの貧乏旅行で泊まったホテルの朝食が走馬燈のように思い出される。といっても思い浮かぶ光景は全く同じだ。パンとオレンジジュースとコーヒーだけである。

SIMカードを買う

right 体調もだいぶ回復したし、おなかもいっぱいになった。昨日は元旦だし風邪だしでじっくり見られなかった街へ出ることにする。 スマホ用のSIMカードを街の露店で買った。5ユーロで5GBのデータ通信が使えるという。日本では珍しいが、多くの国では裸のSIMカードが街中で普通に売られており、スマホにさしたらすぐにネットが使えるようになる。iPhoneやAndroidなら設定もスタッフがやってくれるのでとても簡単だ。旅行が好きな人にとって、SIMロックがかかっているスマホはあまり役にたたない。フリーのwifiを求めて街をうろうろするのも楽しいが、移動中は使えないし、観光客が少ない国だとそんな店があまり見つからなかったりする。海外旅行は「英語が話せること」と「インターネットが使えること」の2点を満たすと難易度が極端に下がる。初めて海外旅行に行ったときは両方もってなかったので苦労したが、いまや大概の旅行は簡単になってしまった。SNSも地図アプリも使えるし、観光情報はネットにすべて載っている。少なくともヨーロッパなら電波圏外になることはほぼない。どんな僻地でもネットくらいは使えるのだ。

地図アプリを使いながら朝のアテネを散策する。目的地はこの国の、あるいは古代文明のアイコンとも言えるパルテノン神殿だ。

アクロポリスの丘

パルテノン神殿はアクロポリスの丘と呼ばれるアテネ市街地の中心部の小高い丘の上にある。街のどこからでも見える目立つギリシャのシンボルだ。昨日は入れなかったけど、今日は普通にやっているみたい。

丘の全体は背の高い柵で囲われていて、2カ所あるチケット売り場で入場券を買わなくてはいけない。まだエストニア留学の時の学生証が有効だったので、本来はそこそこする入場料が無料になった。ヨーロッパの国々は学生にやたら優しい。日本だと入場料はたいてい大人と子供だけしか分かれていないので、こういう文化はとても助かる。

大理石の柱が並ぶ階段を上っていくと、ついに対面する。

修復中のようだ。ギリシャの工事なんて何百年かかるのかわからないが、これはこれで趣がある。

ぐるっとまわると朝日に照らされて暖かく輝く白亜の神殿が綺麗にみえる。遠いところきたかいがあった。美しい。

パルテノン神殿のすぐ隣にはもう一つ小ぶりな神殿がある。これもまた有名なアレだ。エレクティオン神殿。

二つの神殿のまわりには、これから修復で使うものだと思われる巨大な大理石がたくさんならんでいる。しばらく神殿を眺めたあと、この丘の南麓にある別の遺跡に歩みを進める。

この段々になった円形の建物はディオニューソス劇場とよばれ、はるか紀元前に作られてから数百年間にわたり祭りの開催地とされていたらしい。ギリシア劇の上演会場だったのだ。この地には二つの劇場があり、片方は後代に復元されたもののようである。

パルテノン神殿を後にし、丘をくだるとチケット売り場に長蛇の列ができていた。1月2日でも世界中からたくさんの観光客が集まるようだ。この丘には朝早めに来て正解だったのだろう。

パトラへむかう

この旅の第一の目標が達成された。パルテノン神殿を見ておくというミッションを終えたいま、次の目的地「パトラ」を目指す。パトラはアテネから西へ500キロ以上離れた港町で、アテネ、テッサロニキに続く第三の都市だという。

right シンタグマ駅近くの屋台でギリシャ名物のごまパンを買い、かじりながら駅へ向かう。このパンはギリシャ語で「クルーリ」といい、老若男女とわずよく売れている。値段も1ユーロくらいだし、味は素朴でなかなかおいしい。屋台にはこれが山積みになっている。

パトラへは都市間を結ぶギリシャ国鉄の長距離列車にのる必要があり、その出発地はアテネ市街地の北部にある地下鉄ラリッサ駅の地上部分にあり両者はほぼ接続している。地上部分の長距離列車の駅名と地下鉄の駅名が異なるので注意されたい。大手町駅と東京駅みたいなものだろう。

同じ駅の ⬆地上部分 と ⬇地下部分

駅でパトラ行きのチケットを買う。17ユーロだった。チケットカウンターのおじさんは「スカ駅で乗り換えるのを忘れるな」と念を押してきた。なるほど、直行列車ではないらしい。調べてみると、工事で直通していないのだとか。それどころか途中からは鉄道会社が用意したバスに乗り換えてパトラ駅までいく必要があるという。なんだそりゃ、それじゃ最初から高速バスに乗ればよかった。電車とバスなら電車のほうが好きだけど、2回も乗り換えてあげく結局バスに乗るくらいなら直通してるバスのほうが明らかに便利なのに。

とかなんとか文句を言っても始まらない。12:12発の電車に乗り込む。スカ駅はすぐについた。列車内の路線図にはスカ駅が記載されてなかったので本当に着くのか、間違った列車に乗ってしまったのでは、と気をもんだが一安心。スカ駅の乗り換えは地上を数百メートル歩くので少し不親切だが、案内板が出ているので迷うことはないだろう。

スカ駅から終点キアト駅までの道中、おじいさんが話しかけてきた。70は超えているだろう。かなりあやふやではあるが、英語もつかえるようでギリシャの観光案内をしてくれた。なかでも「まもなくコリントス運河が右手にみえるよ」という話はありがたかった。私は全く知らなかったが、どうやらあの有名な運河が電車内から見えるらしい。それからしばらく車窓を眺めてると、一瞬ではあるが素晴らしい眺望が電車内からしっかりと見ることができた。

また1時間かそこらで列車は終点となる。

パトラまではまだまだ距離があるが、ここから先はバスでしか行けない。コリントス運河を教えてくれたおじいさんと、そのおじいさんをキアト駅まで迎えに来ていた息子さんにお礼を言ってバスに乗り込んだ。

バスはギリシャの国道をひた走る。車内はそれほど混んでいない。二人分の席を自由に使えた。車内から見えるギリシャの国道沿いの景色はことのほか美しく、オリーブの木が揺らす葉が放つ銀色のきらめきと、実がたくさんついたレモンの木が幻想的な美しさだった。

パトラに到着する。時刻はまだ15時前だ。冬なので日が暮れるのは早いけど、まだまだ観光する時間はたっぷりある。とくに見たかったスポットがあるわけではないので適当にうろついていると、街の大通りの先に長い階段をみつけた。周りには高い建物もないし、景色がいいかもしれない。のぼってみよう。

階段をのぼりきると視界がひらけた。ここが街の高台だろう。振り返ると、そこにはパトラの街とパトラ湾が綺麗に見える。とてもいい景色だ。

アテネと同じように、この街にも遺跡がたくさんある。どこを歩いても出くわすので段々飽きてきた。

道路脇に植えられている植栽は果実がたくさんなっている。鳥がついばんだりしないのはなんでだろう。甘くないのかもしれない。

予約した安ホテルでギリシャの缶ビールを飲む。街の目抜き通りに面しているが、夜はとても静かだ。第三の都市とはいえ人口はかなり少ないらしい。

翌日はイタリアに行くためのフェリーにのる。出航は18時なのでかなり時間がある。いったいなにをしてすごそうか。

つづく