パスポートの残りページを節約する

私が初めてパスポートをつくったとき、まだ未成年だったため紺色の表紙の5年用パスポートを発行した。そのうち半分くらいのページがスタンプでうまったところで4年と数ヶ月が経過しており、当時住んでいたエストニアの日本国大使館に出向いて新しい10年用パスポートを発行した。あれから5年がたつ。赤い表紙の10年用パスポートはすでに半分以上がスタンプでうまっており、5年用パスポートにくらべてページ数もおおく、また自動化ゲートに登録してあるため日本国への入出国時にスタンプは押されないようになっているにもかかわらず、結構なペースでページが消費されているようだ。なにしろ月に1-2回くらい海外旅行にいくし、最近はスタンプが増えづらいヨーロッパではなく、ビザが必要な発展途上国へ行くことが多かったことによる。

パスポートは一回の発行にかかるお金が結構高く、10年用で16000円とかかかる。一回に限って増補申請も可能だが、それだって6000円もかかるため、できるだけパスポートの消費ページを節約したい。1ページまるごと使ってしまうビザであればどうしようもないが、せめて入出国時のスタンプの位置には気を遣ってほしい。パスポートコントロールの席に座る審査官に人の心があれば1ページあたり6個や8個押せるように調節してくれそうなものだが、たまに前後のページを複数とばし、なにもないページのど真ん中に小ぶりなスタンプをベタンと押される場合もある。こうなるとたいへんな迷惑で、その後に行く国では、そのスタンプよりも後のページに押印するようになる。而して意味も無く空きページがうまれたり、妙におおきな余白がうまれる。

いろんな国をまわるバックパッカーたちのTipsとして知られているのは、シャーペンで事前にうっすら枠を書いておくことがある。各ページを6分割するような罫線を書いておけば、ふつうはそこにおさまるように判を押してくれるだろうと期待するわけだ。しかしそれでもスタンプのサイズなんてわからないし再入国時に覚えているとも限らない。ミャンマーの入国印なんて日本の入国印の4倍の大きさがある。とうぜん1ページあたり4個も押せばいっぱいになってしまう。出国の印とあわせて2回分で1ページはうまってしまうわけで、こうなってしまえば6分割の罫線などなんの意味もない。

結局わたしは入国審査のときにスタンプを押す位置を直接指示するようにした。パスポートを提出するときにはっきりと笑顔で挨拶をし、それににこやかに返してくれる国ではこれでいける。結果、2014年に押されたスタンプに囲まれていた虚空には2018年のスタンプがはまり、2015年に生まれた余白を2019年のスタンプが埋めてくれたりしている。

いままで行った国の思い出になるようなアイテム、たとえば航空券の半券や現地でみた博物館のチケット、キオスクやATMのレシート、バーのコースターなんかを集めていたらよかったんだけど、生来のきれい好きが災いしてもはやパスポートと写真くらいしか残っているものがない。あと150ヶ国くらいいかなきゃいけないのだ。すでにページは折れ、表紙はへこみ、裏表紙にはどの国で貼られたのか定かじゃない管理用ステッカーが何枚も貼られたメコメコになっているパスポートだってあと残り5年の任期を全うしてもらわないといけない。なくさずに大切にしよう。