パプアニューギニアでビンロウをかじってきた
パプアニューギニアの路上では、いたるところに赤くシミがついている。これは路肩で売っているビンロウをガムのように噛んで吐き出した跡のようだ。このシミは非常に頑固で、雨が降っても簡単には落ちない。漂白剤のようなものをつかって落とさなければならないこともあり、ホテルやショッピングモールなんかでは持ち込みが禁止されていたりする。
首都ポートモレスビーを歩いていると、街路樹の木陰でおばちゃんがビンロウを売っている。値段も一つ20円程度と安いので旅行で来たなら一度試してみてもいいと思う。けっこう商品の回転は速いようで、フレッシュなビンロウがパプアニューギニア国旗模様のバッグにたくさん入っている。二粒の実を買うと、写真の真ん中やや右に写っているマスタードの実を一緒にくれた。これに石灰の粉をつけて一緒に咀嚼するのだという。
この実を前歯でかじって外皮を剥ぐ。すると白っぽい核が露出するので、そこが可食部というか、噛むための部位になる。白くてきれいだが、たまに腐っていたり中身がからっぽだったりするので、最初はお店の人がいるまえで試してみた方がよさそうだ。外側からはどうしてもわからないので、そういうときは実を交換してくれる。
外皮は木の皮みたいになっており硬いが、クルミほど硬くはない。歯でビーフジャーキーがかじれれば十分イケるだろう。中身の核を口に放り込み、石灰の粉をつけたマスタードの実とともにもぐもぐとかみ続ける。甘くはない。しょっぱくもないが、辛くもない。やや青臭く、苦いというか、渋い感じだ。マイルドな渋柿が近いだろうか。唾液が出てくる。石灰との化学反応で口の中が真っ赤に染まった。
はっきり言っておいしいものではない。かるい興奮作用があるというが、私は複数回ためしてみても特に反応がなかった。一緒にいた友人は強い発汗と浅く早い呼吸になっていたのを見ると、ちょうど飲酒によるアルコール耐性のように人によってかなり反応に差があるようだ。私はわりとお酒にも強いタイプなのでビンロウにも強いのかもしれない。
私は人生で一回体験できればそれでいいかなという気持ちなので、もうやらないような気がする。とはいえ、このパプアニューギニアでのビンロウ(現地ではブアイと呼ばれている)が他の国で見かけたらまた買ってしまいそうだ。めっきり減ったが台湾にもあるらしい。フィリピンにもあったそうだが、よくおぼえていない。あっただろうか。まぁ、きっとあったのだろう。フィリピンを2ヶ月ふらふらしていたのはもう10年前の話なのだ。記憶はだいぶ曖昧になっている。