南極へ行くために必要な手続きを済ませる

私は事務手続きがとても好きで、引っ越しに伴う転出/転入届とか免許証とか、パスポートの更新とか銀行口座とか、そういった必須の手続きをこなしていくのが趣味みたいなところがある。無駄なものを持つのは嫌いだけどその無駄をなくすための手数には無頓着なため、一度作ったけどやはりそんなに貯まるものでもないポイントカードなんかをわざわざその店舗がある街まで出かけてサービスカウンターで解約したりもする。ほっとけば勝手に失効するポイントカードの解約なんて大半の人が経験しないだろう。使わなくなった国会図書館の利用登録も申請書と身分証明書のコピーを郵送して脱退した。前職の大学組織では日々いろんな書類を埋めて学内便や郵送で提出していたが、私自身はそれが趣味の一部だったのでさしてつらくなかった。確定申告も「めんどくさいなぁ」と口では言っているが、その実たいして嫌いな作業というわけではない。無駄で無益な作業は当然いやだが、ルールで決まったタスクを次々こなすことには個人的な楽しさがあり、RPGで雑魚モンスターを次々倒していくみたいな爽快さがある。そんな人はそう多くないだろうが、みたところ他にもそういう人がいないわけではないようだ。

南極に行くことを決めたいま、埋めなくてはならないフォームがやたらたくさんあらわれる。一人1着プレゼントされるパルカのサイズ、レンタルされるブーツのサイズ、緊急時の連絡先、最寄りの空港までに乗るフライトのアイテネラリー、病歴、持病、飲んでいる薬、加入する海外旅行保険の詳細など、渡航に際するあらゆる項目の入力が求められる。大半はオンラインのフォームを埋めるだけだが、一部書面の郵送が求められるものもあった。その一つが環境省への提出書類だ。いつからいつまでいくのか、どこから出発する船/飛行機にのるのか、南極のどこへ訪れるのか(緯度経度)などを記入し、一人1通作成する。

日本国籍をもっている人は全員これを南極へ出発する前までに出さなければならず、提出しない場合の罰則も規定されている。実際にはこんなものバレようもないだろうし過料がかされるとは思わないが、こんな書類これからの人生で二度三度と出すようなものでもなし、私は喜んでフォームを埋めて郵送提出した。

次は南米までのフライトと南端の町ウシュアイアまでのフライトを購入する。南米までのフライトは北米経由、欧州経由、中東経由と様々なルートがあり、フライト自体もたくさんあるためそれほど急いで購入する必要はない。しかしウシュアイアに向かう国内線のフライトは(このご時世もあるだろうが)みたところ数が限られていて、しかも南極クルーズのオンシーズンではクルーズ船に乗る人が全員そのフライトを使う。南極条約によって同時に上陸できる人数が限られているらしいが、とはいえ一つの船に100人200人くらいは乗るわけで、それが全員同じタイミングでウシュアイアの町を発着するのだ。この区間だけは早めに押さえておいた方がいいのだろう。