ルークシュポールにいってきた
私は変な地名が好きで、伊豆大島のクダッチや宮崎のトロントロンのような謎の語感や漢字表記のない地名看板を見かけると心躍る奇病を患っている。いつか見に行かなくてはと思っていた北海道の不思議地名が道東を代表する都市釧路から厚岸町に向かう45kmほどの国道の中間地点くらいにある。車がないとアクセスは厳しい場所だ。わたしは地元の青年に連れて行ってもらった。
圧巻の珍地名である。フランス語のような響きすら感じさせる。「ルークシュポール」……(うっとり)、どこを切り取っても日本の地名らしからぬ音だ。地名標はないが近くには「ポンルークシュポール」という地名もあるという。そもそも日本語には「ら行」で始まる言葉は極端に少ないことが知られており、外国語に由来する言葉を除けば単語としてほとんど存在しない。「ルーク」であり「シュポール」だ。「ポール」もまた非常に珍しい。そんな組み合わせの魅惑的な地名がカタカナのままそこにある。こんな地名を目にするのは生まれて初めてだ。地名を確認した我々はそのまま厚岸までいき特産の牡蠣のルイベなるものを食べた。ルイベとは凍ったまま薄切りにした刺身のことをいう。今日二つ目の生まれて初めてが短期間のうちに襲いかかる。凍った牡蠣を食べる機会はなかなかない。ここで食べることができてうれしい。
音威子府とか占冠とか、あるいは札幌であっても漢字表記が存在すると途端に難読地名程度の存在になる。こういうのはカタカナのままだから面白い。字面から由来がまったく想像できないところに魅力がある。「ニッポリ」だって語感は面白いが「日暮里」では興がそがれるというものなのだ。わかるわかると言ってくれる人もきっとどこかにはいるだろう。
ところで厚岸には「オタクパウシ」という地名もある。今回この地名標も目にすることができてよかった。これからも面白い地名を見に行きたい。