南極にいってきた その1

たとえばポケモンの最後のジムリーダーを倒したことがないまま、バッヂ7つ掲げてポケモンの大ファンですとは言えないし、四国に行ったことのない人が日本全国まわりました、とも言えない。というわけで行ったことのない大陸を放置したまま旅行好きだと言い続けるのは画竜点睛を欠くというものである。 なので南極へ行くことにした。 めちゃくちゃなことを言っているのだが、そうでもないと南極に行く意味など見いだせるだろうか。地球の裏側にいって氷とペンギンを見るために大変な時間とお金と手間を掛けるいいわけを探すのは結構むずかしい。とはいえあらゆる国へ旅行をしたあと、最後の最後に行くような人はそれなりにいるようだ。調べてみるとIntelの社長が最近行ってるほか、「宇宙よりも遠い場所」というアニメのファンが聖地巡礼として何人も行っていることが確認できる(わたしもファンだ)。そんな人たちのための南極ツアーは、実はたくさん存在している。

南極クルーズを提供するクルーズ会社は何社もあり、今回キャンセルになったQuark Expeditions社(QE)は南極クルーズ界では老舗で、かつ最大手だ。ここがダメだというので2番手3番手のクルーズ会社のツアーを調べることにした。Oceanwide Expeditions、Aurora Expeditions、Albatross Expeditions、Poseidon Expeditions…、めちゃくちゃある。「任意のワード+Expeditions」社があると言っても過言ではない。各社のツアーカタログを見て回るが、しかしどこも似たり寄ったりだ。どれもチリかアルゼンチンの南端から南極半島に向けてクルーズ船かチャーター機をだし、10日から20日かけてまた南米の南端へ帰るツアーを提供している。船内でアルコールが昼夜飲み放題だったり極地探検用のオリジナル防寒具がもらえたり、細かな点を見比べ、スタンダードな旅程のなかでは安かったOceanwide Expeditions社(OE)のツアーに申し込むことにした。一番安い4人部屋ならひとり50万円くらいからある。

予約のためのフォームを埋めて送信するとすぐに返信がくる。曰く申し込んだ部屋はすでに埋まっているが、上位クラスの部屋を同じ値段で申し込むことができるらしい。当然応諾して大きな窓のついたSuperiorルームなる部屋が予約できた。QEと異なり料金の支払いは銀行振り込みに限られている。非常に不便だし国際送金のための手数料もかかるが、仕方ないのでWiseで二回に分けて(Wiseは米国に向けて日本円で100万円以上の送金に対応していないのだ)送金した。手数料だけで数千円かかっている。複数名分を全額クレジットカードで支払うにはかなり枠が大きくないと厳しいと思うが、クレジットカードで支払えれば余計な手数料も掛からないし逆に国内旅行に出かけられるくらいのポイントやマイルがつくので可能であればクレジットカードで全額支払える業者を選びたい。この点はQEのよかったところだ。

南極へ行くという話はQE社のツアーに申し込んだときは周りの人にも普通に話していたのだが、言うまでもなく2021年という時期もありOE社のツアーにも参加できるか危うかった。せっかく予約しても直前でまたキャンセルになったり、あるいは出港の地であるアルゼンチンやアルゼンチンへ向かうための空路の経由地である欧米への入境が制限される可能性は十分にある。再度キャンセルになった場合に自分のその運のなさとミドル・オブ・パンデミックのなかで海外旅行に出かけるというとてもじゃないが好まれない自らのムーブを積極的に回りに吹聴する気にはなれなかった。出港までできるだけ黙っていようと心に決める。

南極に最も近い国の首都、ブエノスアイレス

出港まで数ヶ月あったOEのツアーの日が近づいてくる。成田空港からダラスフォートワース空港経由、ブエノスアイレス行きの飛行機にのり、さらにブエノスアイレスから南米大陸最南端の町ウシュアイアへの飛行機にのるというルートで、わたしは一週間ほど前にブエノスアイレスに到着するようにしていた。どこかのタイミングでCovid−19の陽性となった場合にバッファを持たせようとするつもりだっただが、そのことにあまり意味はなかった。

朝5時発のフライト。搭乗時刻は4時、空港到着は2時、起床は1時

空港をでてすぐに感じる最果て感

ツアーの二日前に同行する友人とブエノスアイレスで合流し、翌朝五時に出発する国内線にのる。南米大陸最南端の街、ウシュアイアに到着した。真夏ではあるがここではやはり肌寒い。真夏の稚内と同じような感じだ。ウシュアイアはそれほど広い街ではなく治安もいいため空港で客待ちをしているタクシーで直接ホテルへ向かうのが便利だ。ホテルへの到着時点で時刻は朝9時。出港の時刻は翌日18時、乗客の集合時刻はその4時間前であるためまだまだたっぷり時間がある。せっかくなのでウシュアイアの街を観光することにしよう。

その2へつづく