マイナンバーカードなしでデジタル接種証明をつかいたい

私は二回の新型コロナウイルスワクチンを国内で接種し、その証明書を2021年7月に取得した。その時点で受け取れる接種証明書はデジタル証明書ではなく紙の証明書で、QRコードもついていないためスマホアプリで検証することの多い海外で使い勝手が悪かった。現在は日本の公式の接種証明書アプリで国際規格のQRコードを表示できるようになったため問題ないが、わたしは手元にマイナンバーカードがなく困っていた。それが解決できたのでメモとして記録しておく。

この記事が役に立つのは以下の条件に当てはまる人だけである。通常このような手間を掛ける必要はない。

  • マイナンバーカードを作ってない/手元にない/国外転居に際し返納してしまったetc.
  • 効果の高いワクチンを必要回数接種し、紙の接種証明書が手元にある
  • 接種証明の提示が義務づけられている国に滞在する予定がある
  • 居住地の公式なデジタル証明書を取得できない理由がある

多くの人にとって不要な体験談なのだが、まず外国で接種した証明書をEU国内で有効なデジタル証明書として利用できるようにする仕組みは大抵の国で提供されている。しかし多くの国ではその国の証明書に変換するためには健康保険の管理番号や住民登録が必要とされる。そのため旅行者は通常取得できない。私はイギリスの滞在ビザを持っており健康保険にも加入しているものの、登録に必要なNHSナンバーと呼ばれるものをまだ取得していないので登録できなかった。

以上のような場合に簡単に利用できるのは以下の二カ国である。この二カ国においてはホテルのチェックインやレストランの入店、美術館博物館への入館など、観光客の主な行動の大半にたいして接種証明書の提示と確認が義務づけられているという状況もあり、旅行者をはじめとする非居住者であってもその国のデジタル証明書を一定の条件下で発行してもらえる。なお全ての情報は2022/01/18現在のものであり、たぶん一年もたたず内容は古びてしまうことだろう。

フランス

もしあなたがフランスか、あるいはフランスの近くの国に滞在しているのであれば実行可能な手段だ。フランス国内の薬局では持参した接種証明書をフランスの接種記録に変換してくれるという制度がある。

ある程度の街であればこの手続きに対応している薬局はたくさんあり(ネットでマップをみながら検索できる)、かつ紙の接種証明書とパスポートがあれば5分たらずで終わる手続きのため、フランス国内の薬局にアクセスできる状況ならこれが最速の取得方法になる。費用は36EUR(≒4700円)かかるが、フランスに「留学」しているのであればオンラインで申請ができるうえ、前述の手数料も免除になるようだ。

参考: https://jp.ambafrance.org/article17074

スイス

こちらはオンライン申請なので必ずしもスイス国内に移動する必要はないものの、制度としてはスイスに滞在する人の便宜を図るためという目的のため、滞在開始日や入国意思の証明になるような書類(フライトチケットの控えやホテルの予約控えなど)のアップロードが必要になる。それさえ解決できるならこちらは多少リーズナブルだ。フランスでの手続きよりも安く30CHF(3700円)で済み、さらにオンライン申請なのでネットさえあれば世界中どこからでも申請できる。ただしフランスよりもかなり時間がかかる可能性がある。最大で5営業日かかるとされており、またフランスでの手続きとは異なり、申請後に不備があってリジェクトされたとしても返金はされない。慎重にやろう。わたしはスイスのデジタル証明書を取得した。

登録は以下のサイトからはじめられる。

https://www.covidcertificate-form.admin.ch/foreign

ウィザード形式で進むのでフォームを埋めていくだけでよい。必要な書面は、

  • 日本の市区町村で発行された接種証明書をスキャンしたデータ
  • パスポートの顔写真ページのスキャンデータ
  • スイスへの入国を示す書類(航空券の控えやホテルの予約控えなど)

となっており、三つ目は正直適当でもよさそうだが、あまり私が断言はしないほうがよさそうなので各自適切に申請しよう。2ページほどのフォームを埋め、最後に30スイスフランの支払いをクレジットカードで済ませればおわりだ。

5営業日かかると記載があったが、いまは申請者が多くないのか私の場合は3時間ほどで発行が完了したというメールが届いた。スイスのデジタル証明書アプリをスマホにインストールし、うまく登録できたら実際に街で使ってみよう。

厳密に言えばスイスはEUに加盟していないのだが、デジタルCOVID証明書に関してはEUを含めた国際的な規格で発行されているため証明書自体の相互運用性は保障されている。つまりスイス政府の発行したデジタル証明書はほかのEU諸国他でも同等に利用できる。

The Swiss COVID certificate is recognised by EU/EFTA states as well as by Andorra, Armenia, the Faroe Islands, Georgia, Monaco, New Zealand, Serbia, Singapore, Turkey, Ukraine and the United Kingdom. It can therefore be used throughout the EU/EFTA area and in the countries mentioned.

https://www.bag.admin.ch/bag/en/home/krankheiten/ausbrueche-epidemien-pandemien/aktuelle-ausbrueche-epidemien/novel-cov/empfehlungen-fuer-reisende/auslandsreisen.html

実際に街のバーで使ってみたが、問題なく店員さんの端末で読み取ることができ、つつがなく入店することができた。これまではQRコードもついていないペラペラの紙に印字された文字だけの証明書だったため、これが「日本国政府によって認証された正規のワクチン接種証明書」であることを信じてもらうだけでも一苦労だった。入国審査の担当者なら何度も見ているので通してくれるが、この紙を初めて見る人も多いヨーロッパの一般人には正当な証明書だと信じろというほうがムリがある。やっと便利に旅ができそうだ。