スペインのマラガにいってきた

アンドラに行くためにスペインに来たが、バルセロナやマドリッドはすでに行ったことがあったのでスペイン南部の街マラガに行ってみることにした。ヨーロッパの大都市としては最も南に位置しており、海峡を挟んですぐのところにはモロッコがある。スペインからモロッコへのフェリーも就航しており、観光客がセットで回れるような一日ツアーも開催されていた。私が行った時点ではコロナ禍による需要減退によって船便は休止状態となっていたが、しかし英領ジブラルタルの至近でもありピカソ誕生の地でもあるマラガという街自体の観光的魅力も多々ある。独特な食文化も根付いているということで、これはなかなか楽しみだ。

アンドラ公国最寄りのバルセロナ空港からマラガ空港までは高頻度にフライトが飛んでいる。国内を飛ぶLCCを使えば2000円もしないチケットで移動できる気軽な旅行先だ。空港からのアクセスも良いため、マドリッドやバルセロナとセットで観光しても十分楽しめるだろう。

バルセロナは朝からずっと雨だった。私は雨の中のフライトが好きだ。機体が分厚い雲を抜けて太陽の光に照らされるのが気持ちいい。

橙色の街

到着したマラガは、ありとあらゆるものがとてつもなくオレンジ色をしていた。

建物も、空も、木々も海も全てが色温度を間違えたまま出荷されたDVD版千と千尋の神隠しのようになっている。自分の目の色調設定がおかしくなったように感じる色合いで、初めてのことに私は結構びっくりした。ゴッホの絵が黄色っぽく見える理由に、彼が「黄視症(Xanthopsia)」という、目に映るものが黄色く見える症状を患っていたらしいということを思い出す。ゴッホはこんな世界を見ていたのだろうか。

視界がオレンジに染まる理由は単純で、すぐ南にあるアフリカ大陸のサハラ砂漠から風で飛ばされた細かな砂が昼夜を問わず大気中に漂っていることによる。日本でも黄砂による被害があるように、マラガでも同じような被害に遭っているわけだが、その濃度は比較にならないほど強烈だ。ぼんやりあるいているだけでも服やバッグは砂でザラザラと汚れる。サハラ砂漠からの砂による被害自体はヨーロッパ全土に及ぶとはいえ、この街はアフリカ大陸からの距離が近い分とことん濃密である。

どしゃぶり

ところで、雨がふると当然こうなる。

空気はクリアに澄み渡る一方で、地面は黄土色のぬかるみに覆われる。車も家屋も雨滴でベッタリと塗り重なった砂粒によって隙間無く染め上げられており、洗車しないと当然運転もできない。布で擦ったら車体はキズだらけになってしまうだろう。そしてきっとこの街の下水道は砂塵との戦いの歴史なんだろうなと勝手に同情する。

街の中心地にあるヒブラルファロ城

曇天の太陽海岸(Costa del Sol)

山城のてっぺんから臨むマラガ港は紀元前1000年ごろにフェニキア人によって設立された。現在では世界的な観光産業の集積地で、冷涼な気候ばかりのヨーロッパエリアに住む人々にとって非常に人気のあるリゾートの一つとなっている。たしかにこれは良い街だ。バルセロナほど観光名所にあふれているわけではないが、ぼんやりと長く滞在したくなる。居心地がいい。

街中にはタパスやピンチョス(いまだに違いがよくわからない)を出す居酒屋にあふれお店は活況を呈している。地元の名物料理らしいポラ・アンテケラナというスープとモハマと呼ばれるマグロの赤身を天日干しした珍味を食べてみた。とてもおいしい。

英領ジブラルタルはこの街から高速バスでラ・リネアという南端の小さな街に移動して、そこからは徒歩で国境を越えて入境する。せっかくなのでジブラルタルにも行ってみよう。