Booking.comを使うのをやめた

私はコロナ禍に突入してしばらくしてから東京の家を解約し、以後日本でも海外でも完全にホテル暮らしをしている。所属していた会社から出社が原則禁止になったというアナウンスがあったため、東京に家を持つ必要がなくなってしまったからだ。気に入った街である大阪や北海道や九州の都市を数週間単位で転々とし、半年くらい前に退職してからは海外で同様の生活を送っている。

そういったライフスタイルに移行する前から今まで、ホテルの予約にはいつもBooking.comを使ってきた。一つのサイトで予約を管理できたほうが楽だし、一年の大半をホテル暮らしにしている状態だとあっという間に最上級会員になるため引き続き使い続けようという気持ちになる。上級会員の特典は正直薄いというか普通につかってても感じ取れないものの、他の予約サイトより宿泊代金が高いということもないように見える。そもそも他社が高い場合は返金するという仕組みがあるためどこも似たり寄ったりの値段になり均衡している。不満がないわけではなくともそれなりに使いやすいので10年くらい愛用していた。

あるときコロンビアの首都ボゴタでのトランジットが必要になった。昼に到着し、翌日早朝に空港に行く必要があるため、できるだけ空港に近く、さらに無料の空港シャトルの用意があるホテルという条件を検索のフィルタに設定し、出てきた安ホテルを適当に予約した。事前にホテルへのメッセージを送りフライトの到着時刻などとともに無料シャトルサービスを使う旨伝える。ホテルのスタッフから返信もきたので安心して当日ボゴタに向かう。

当日、到着したボゴタの国際線到着ロビーにはたくさんのタクシードライバーが集まっているが、しかし私の名前を掲げた人物はひとりもいない。通常ホテルに空港送迎を頼んだ場合は名前を書いた紙やボードを持っているスタッフが立っていたり、シャトルバスであればホテルの名前が看板のように置かれていたりする。不審に思いながら他の大手ホテルの送迎を担当している人に「この名前のホテルの送迎はこちらですか」とスマホの予約画面を見せたが聞いたことないという。親切なその人は彼のスマホで私の予約したホテルの受付に電話を掛けてくれた。私はかなり限られたスペイン語しかわからないので非常に助かる。なんどかかけ直してつながったホテルのスタッフいわく、Confirmがなかったので送迎を実施していないという回答だった。Booking.com上でメッセージのやりとりが残っているというのに意味のわからない反応ではあるが、まぁ、忘れていたのだろう。むかつくがこのホテルは見限り、いま助けてくれたその人に空港送迎のある近場の安価なホテルを紹介してもらう。外資系の高級ホテルの看板を背負っている人なら信頼も置けるだろうという判断だった。

実際この考えは正しく、彼も多少なりキックバックでももらえるんじゃないかと思うが、空港送迎付きの別のホテルにその場で向かうことができた。寝るだけだから安いところでいいよと言ったとおり、往復の空港送迎(相場では片道10ドルくらいの距離だ)と朝食付きで一泊40ドルの宿に泊まれた。ホテル相場の安いコロンビアとしてもなかなか安い。結局はいい方向に転んだようだった。

翻って最初に予約したクソホテルの方なのだが、当然先方の不手際であるのだから当日キャンセルになったとしても全額返金されるべきであることは論を待たない。しかしチェックイン予定日の翌日になっても返金手続きがされなかった。No-show扱いであればホテル代をそのまませしめることができるので放置するつもりなのだろう。予約情報ページからのRefund申請も無視されたため、Booking.comのサポートに問い合わせることにした。もともとBooking.comのサポート窓口は非常に使いづらく、サポート窓口へのコンタクトフォームすら一筋縄ではたどり着けないというとんでもない作りになっており、電話によるカスタマーセンターへの問い合わせを勧められる。しかし24時間対応でもなく時差があるし通話料も掛かる。どうにかテキストによる問い合わせが出来ないかといじくり回していると、サイトの言語設定を英語にした場合はチャットツールによるサポートが受けられるようだった。

ことの顛末を説明してRefundの申請をする。当然問答無用で即座に全額返金されるのかと思ったが、そうではなかった。曰く予約は依然有効なままであり、宿泊のキャンセルによる返金については宿泊施設側が判断するという回答だった。送迎がなくたどり着けなかったホテルの代金を返金するかどうかをホテルが判断するというのはプラットフォームとして私は正しい仕組みだと思わないが、結局サポート窓口は全くなんの役にも立っていない。最悪のユーザー体験だった。下手したらコロンビアの空港でスーツケースを抱えたまま野宿することになったかもしれないというのにこの対応はどうなのだろう、と、数百泊してきたBooking.comがこの出来事で完全に嫌いになってしまった。

というわけでBooking.comの利用をすっぱりやめることにした。大手ホテル予約サイトは幾度となく続く買収を繰り返し、ほぼExpediaグループとBooking.comグループの二大巨頭に収斂している。AgodaもKayakもPricelineもBooking.comグループの一角だ。もはや低関与商材といえる状態になっている。そしてBooking.comグループの予約サイトを全てを除くとExpediaグループの予約サイトしか残らない。私は今後使う予約サイトとしてその一つであるHotels.comを選んだ。

Hotels.comを通して予約したホテルに合計10泊すると、それまでの宿泊一泊分の平均金額分のポイントがもらえる。そのまま宿泊費に充当できるため、約10%分の還元率といえる。これはBooking.comの会員特典と同じ還元率だ。違いがあるとすればBooking.comだとJALマイルが宿泊金額100円につき3マイルたまり、Hotels.comだと100円につき1マイルたまる。ここは劣る点だがもともと無いよりマシな程度の提携だったので気にしないことにした。Booking.comを使わないですむならもうそれでいい。

手厚いサポートがあるのではと思い日本のホテル予約サイトも探してみたが、ExpediaグループやBooking.comグループのように全世界的にカバーした予約サイトは見つからなかった。たぶん無いのだろう。楽天トラベルはBooking.comと提携していて、海外ホテルについては同じ検索結果が出るのみだった。

自分で言うのもなんだがBooking.comにとってそれなりに上顧客だったのではと思う。年間を通してホテル暮らしをしている生活なのだから利用頻度で言えば私以上に多用する人もそうそういないだろうにと感じてしまうが、クレーマーになりたくはないので自分が気に入らないものからは静かに離れよう。Booking.comからは十分に時間が経ったら退会してしまおうと思う。