東ティモールにいってきた その2
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この国は1515年から2002年の独立まで500年近くにわたってどこかしらの植民地支配、ないしは統治を受けており、とくにその大半を占めるポルトガルによる暴政と搾取が苛烈だった、とされている。ポルトガルによる支配のあともインドネシアを支配していたオランダによる攻撃、わずかな期間だが日本軍による統治、その後のインドネシアによる侵攻と併合と、経済においても文化においても発展の礎が築かれる素地がなかった。結果として現在でも後発開発途上国に分類されているし、国民の大半は一日2ドル未満で生活している。そういった歴史もあって、この街は観光名所もほとんどなく、観光客を受け入れる体制もまったくと言って良いほど整っていない。メジャーな観光ガイドであるLonely planetを見ても、Tripadvisorを見ても、観光に関して掲載されている情報はとても少ないのだ。
Cristo-Rei
そんな東ティモールで最も知られているこの国一番の観光名所がクリストレイである。これはディリの中心地から東へ7kmほど行った場所にある巨大なキリスト像で、その大きさは27メートル。コルコバードの丘にたつキリスト像(30メートル)に次いで世界第2位という巨大な像だ。
市内を走っているミクロレット(ミニバス)にのり、キリスト像の建つ岬まで出かけることにする。ディリのミクロレットは時刻表があるわけではないが日中ひっきりなしに走っており、ただしいルートさえ把握していれば安全で気軽に使える便利な交通手段だ。というかこれ以外の公共交通はこの街にはない。運賃はどこまで行っても一律25センタボ(=0.25USD)と格安で、タクシーと同じように手を上げて乗り込む。運賃として支払うコインで車内の手すりをカンカン叩くと下ろしてくれという合図になる。そのとき運賃を手渡して降りよう。
市内からクリストレイの麓までいくミクロレットは12番線で、フロントガラスに「12」と書かれた板が置かれている。車内にも街にも路線図は存在しないため、事前にこの便利なサイトでルートを確認しておこう。このサイトのマップはディリに住んでいる人に教えてもらった。現地の人々も普段使わない路線を使うときに参照しているらしい。
終点までいくとミクロレットはUターンしてまた街に戻っていく。車を降りれば丘の上のキリスト像が遠くに見えた。観光名所とはいえお土産物屋や公衆トイレなどはない。像までは暑いなか15分ほど歩くので飲み物を持って行こう。
降車地からすぐのところに目立たない階段がある。案内板などは見当たらないが、この階段をのぼっていくので正解だ。
丘を登っていくとディリの街ときれいなビーチが見える。観光客の姿は見えなかったが、階段では地元の人と思われる兄ちゃんが駆け上っていった。車もないし静かでトレーニングにはちょうどいい場所なのかもしれない。
丘を頂上まで登るとキリストの像が目の前に現れる。造られてから30年ほど経っているが、その間あまりメンテナンスされていないようでよく見るとけっこう傷んでいるし、落書きもある。しかし世界で二番目に大きなキリスト像というだけあり、近くで写真を撮ろうとしても像はなかなか画角に収まらない。大迫力だ。
このキリスト像の高さは27メートルであると書いたが、それはインドネシア占領下で27番目の州ということが由来になっている。インドネシア政府による統治下、現地民の反発が大きかったこの地で住民を懐柔するために建てられた。東ティモール国民の大多数はカトリック教徒なのだ。
ひがティモごはん
おなかが空いたのでお昼ご飯を食べにいくことにした。この国にはグローバル展開しているチェーン店がほとんどない。マクドナルドもない。KFCもないし、スターバックスもない。バーガーキングだけあるが、しかしせっかくなので街を歩いていて目に付いた適当な食堂に入ってみる。
東南アジアの食堂っぽい雰囲気をこれでもかと感じる。派手な色のプラスチックで溢れる店にはドアもなく、当然外気温とまったく同じ状態で風にあたらないぶん蒸し暑い。壁にあるメニューを見つつ、かすかなインドネシア語の知識を照らしながら注文する。バクソは牛肉や魚肉のつみれ汁で、インドネシアでは広く食されている。
東ティモールの食事は陸続きの隣国インドネシアとそれほど変わらない。同じように米が主食だったり同じ食材が使われていたりするが、イスラム教がマイナーなお国柄、ふつうに豚肉が食べられているし、旧宗主国のポルトガルの影響を受けていてオリーブオイルが多用されたりはする。しかし料理の名称も多くの場合インドネシアとおなじように呼称されていて、バクソもそんな感じだった。テーブルのからそうなソースを追加して食べる。とてもからくなる。おいしい。
気に入ってしまったので翌日また来た。バクソ以外のメニューを注文しようと思い、壁に貼られた読めないメニューからランダムに選んで注文する。運ばれてきたのは魚がまるごと入ったスープとライスだった。見た目はなんとも言えないというか、まぁあまり良いとは言えないが、熱々のスープはやはり美味しかった。失礼ながら通り沿いに開け放たれた店先にならぶ大鍋に入っている料理は衛生的に見て如何なものだろうかと思ってしまう現代人なので、しっかり加熱してあるだけでなんとなく安心もできる。
つづく