ナミビアで南アフリカランドの硬貨を使うことはできるのか

答え:できない

現在のナミビアでは「ナミビアドル」という自国通貨が使われていて、これは隣国南アフリカの通貨「ランド(ZAR)」と等価に設定されている。つまり1ナミビアドルは常に1ランドであり、両替所でも1:1で交換してもらえる。また、ナミビアではランドがそのまま流通しており、お店で買い物をしてランドで支払ってもよいし、当然ナミビアドルで支払ってもよく、20ナミビアドルの会計に10ナミビアドル紙幣と10ランド紙幣の二枚で支払ってもよい。1990年までナミビアが南アフリカの植民地だったということの名残でもある。ちなみに南アフリカでナミビアドルを使うことはできないため、ナミビアを離れる際はすべてランドに交換しておく必要がある。

ナミビアの紙幣

最近ナミビアにいったのだが、その理由の一つとして、手元に幾ばくかのランド紙幣と硬貨が残っていたので使い切ってしまいたかったというのがある。わたしは旅先で手に入れた現地通貨をすべて使い切ることに執念を燃やしていて、ユーロや米ドルはともかく、その他すべての現金を絶対に持っていたくない、必ずすべて使い切りたいという強い気持ちで日々旅をしている。使わないままの現金は完全なる負債だからだ。もちろん両替商にもっていってもいいがランドはアフリカ以外ではあまり交換レートが良くないし、今回はコインも多かったのでずっと手元に置いたままだった。

南アフリカの紙幣

手元の南アランドを使い切るためには単純に南アランドを通貨として使える国に行けばよく、そんな国として南アフリカ、レソト、エスワティニ、そしてナミビアの4カ国がある。このうちナミビアに関しては、知識として当地で南アランドを等価で使えるとは知っていたものの、それ以上の詳しい話がよくわからなかった。Wikipediaや地球の歩き方には等価で使えると書いてあっても、それがナミビア全土で通用するルールなのか、額面に関係なく使えるのか、コインも同様なのか、日本語でも英語でも全く情報がない。ネット上に南アコインがナミビアで使えるかどうかという情報は、たぶん存在しないのだろう。あるいはこのブログみたいに広大なインターネット空間の辺境の地で誰かが虚空に向けて発信しているかもしれないが、私には見つけられなかった。南アはともかく誰もナミビアにはなかなか行かないし、わざわざナミビアにランドを持ち込んで使ってみようという人はさらに少ないだろう。そもそもどちらの国ももう十分にキャッシュレス社会となってしまっており、都市部では現金をそのまま使う機会もずいぶん減ってきている。

ナミビアの首都ウィントフックにある両替所

というわけで冒頭の疑問にもどるわけだが、実際に現地の店舗やタクシードライバーに尋ねたところ、ナミビアで受け付けているのはランド紙幣のみで、コインはナミビアドルのものしか流通していないしどこであれ使うことはできないということだった。個人の好意で受け取ってくれたりナミビアドルのコインと交換してくれる場合はあるかもしれないが、しかしナミビアの貨幣制度のもとでは受け付けていない、というのが一応の回答となる。仕方ないのでランド紙幣だけをナミビアドル紙幣と混ぜて使い切った。

結局ナミビアで使うことのできなかった南アランドが90セント、およそ7円ほどの硬貨がジャラジャラと手元に残っている。南アフリカのヨハネスブルグやケープタウンは南部アフリカへ向かうときの拠点として多用される街なので、どちらにせよ今後も行く機会は少なくない。そのとき使い切れるようこのまま持っていることにした。捨てるに捨てられない海外貨幣というのは、私にとってその国へ引きよせられてしまう強力な呪いだ。その呪縛はナミビアで解かれることはなかった。たかだか7円を使い切るため、また南アフリカに行かなくてはならない。