リュックサックを買い換えた
今使っているリュックサックは2年半前に買ったウクライナ製のもので、機内持ち込み可能なサイズを維持したまま最大43Lまでマチが広げられるというところや、スーツケースのようにリュックの全面がパカッと開く(クラムシェル型というらしい。そのままの名称だ)ところが非常に魅力的で、買ってからすべての旅行に持っていってる。構造としてもデザインとしてもわたしにぴったりで深く気に入ってるプロダクトだった。
これは1950グラム
しかしこのリュック、正直言って相当重い。1.95kgもある。わたしはリュックサックひとつで旅行するため、飛行機の機内持ち込み手荷物の重量が7kgまでというときにその重量の3割がリュックそのものであるというのはなんとも受け入れがたい。アメリカ軍が公式に使用している強靱なCORDURAファイバーなる素材で作られているからなのだろう、かなり過酷な旅でも安心できる極めて丈夫なリュックサックだ。ナイロンの7倍の耐久性があるらしい。しかし振り返ってみると私はそれほど過酷な旅はしていない。南米やアフリカなど遠くに行くことは多々あれど、あくまで単なる観光客だ。砂漠に何ヶ月も駐屯して、泥や岩に擦られ、重い装備を雑にぶち込んで使うようなリュックが必要となることはほとんどない。シャツやパンツやノートPCをいれて飛行機の棚につっこんだりいろんな町のホテルに持って行くくらいの使いかたしかしていないという本質に気づいてしまった。リュックだけでなく重さのハンデも背負うことは自ら旅の選択肢を削っているに等しい。
こちらは1770g
かっこいいリュックというのはえてして重い。とはいえここまで頑丈なリュックサックでなくてもよいので、たとえば1.95kgの重さを半分にできれば1kgぶんの衣服やおみやげを詰め込むことができるしそっちのほうがいい。そう考えてここしばらくリュックサックを探し続けていた。
ところで登山界隈ではUL(ウルトラライト)という概念が存在することを最近知った。厳密な定義があるわけではない(たぶん)が、たとえばリュックサックで言えばX-PACやDCF、タイベックなどの軽い生地を用いて作られた数百グラム程度のものが一般にULとラベルづけられるらしい。登山に使われるリュックならきっと丈夫だろうし、数百グラムのリュックサックで身軽に旅できるなら最高だ。さっそくウルトラライトというジャンルから探してみることにした。ウルトラライト製品自体も各社から多数販売されているため、さらにいくつか私にとっての必須条件を挙げてみることにする。
- 900g以下に収まり、軽い
- 30L以上の容量がある
- 飛行機の機内持ち込みサイズ以下である
- ノートPCをいれるポケットがある
- 前面部が大きく開くクラムシェル型をしている
- 治安の悪い地域にも行くのでできるだけ目立たない色をしている
……という条件を満たすリュックサックを探すことにした。しかしいくつものかばん屋さんを巡ってみたものの、1kg以下という時点で大半のリュックサックは条件から脱落するし、かといって登山用品を専門に扱うお店では当然ながら街歩きには抵抗があるような、やたら鮮やかだったりゴテゴテとした見た目のリュックばかりになる。ノートPCを入れるためのポケットがある製品だってほとんど存在しない(山でPCさわる人はあんまりいないのだろう)。たいした条件じゃないように思っていたが、これらを満たすリュックはいつまでも見つけることができないままだった。服屋にいってもアウトドアショップに行ってもリュックサック自体は本当に無数に並んでいるのに自分の好みに合う物はひとつも見つからない。ほかのお客さんがニコニコしながらこれこそ運命の品だと言って買っている商品を横目で見たって私の琴線に触れることはない。荷物を入れて運ぶだけなら全てのリュックサックがその機能をまっとうしてるんだからどれを選んでも本質的には変わらないのに。背負う人の思想、哲学、美意識がどれほど多様であるかを思い知る。
そんな折、近所に巨大なキャンプ用品店兼スポーツ用品店があることを思い出した。どんなかなと思い行ってみると、広大なアウトドア用品フロアの一部を大きく割いてたくさんのリュックサックをたわわに実らせた棚が何列も立ち並んでいた。
各商品には何リットル入るのかとか、何グラムなのかとかを記した札が付けられていて、それなりに探しやすく工夫されている。横浜駅直結でアクセスも便利。郊外の大型ショッピングセンターでもない限り、この店を超える品揃えはそうそう無いとおもう。とはいえそんな品揃えの中から選ぶのも大変なので、普通に近くにいた店員さんに先ほどの条件を全て伝えたところ、一撃で「となるとこのへんですかね」といくつか持ってきてくれたうちのひとつがこれだ。
さっきあげた条件をすべて満たすリュックサックを見つけた。フランスSalomon社のTrailblazer 30だ。580gしかないし容量は30Lある。ノートPCを入れるポケットもあるしクラムシェル型をしている。そしてめちゃくちゃ安い。ハイエンドのリュックサックは5万とか6万とか平気でするなかで、なんとこれは11550円だ。安すぎる。店員さん曰く人気商品で入荷してもすぐ売れてしまうのだという。
この白はかわいいし好きな色だけど旅行用にはちょっと目立つな、汚れそうだな、と思ったが黒やグレーもあるらしい。店頭に在庫はなかったのでヨドバシ.com上で取り寄せることにした。石井スポーツはヨドバシの子会社なので同サイトから注文できるのだ。丁寧に説明してくれた店員さんにインセンティブが入るようその場で購入したかったが、ヨドバシは歩合給じゃないらしいし店員さんからもネット注文の方が楽ですよと薦められたのでありがたくそうすることにした。
なんと580グラム
そして黒バージョンがとどく。小指で持ち上げられるほど軽い。これまでつかっていたリュックより遙かに軽い。軽すぎて不安になるほどだ。これまでのリュックに比べてポケットの数は減ったので無印のオーガナイザーやターキッシュエアラインに乗るともらえる謎ポシェット(こういうの)で中身を整理しようと思う。使ってないポケットも多かったし、認知負荷が下がるのはそんなに悪いことではない。これまで「あれどこいれたっけ…」ということも多かったのだ。
パカッとひらく
つめこんだ
軽さと容量という二律背反をかなえるプロダクトを見つけることができた。すでに気に入ってしまったしこの値段ならホワイトも自宅在庫として買っておこうかという気持ちになっている。とりあえずこの新しいリュックサックで次の旅に赴いてみよう。まだ行ったことのない国がたくさん残っている。