リトアニアの森にあるミサイル基地にいってきた
リトアニアの深い森のなか、プロクシュティネ・ミサイル基地(Plokštinė Missile Base)として1960年代に核ミサイルが配備されていたソビエト連邦の秘密基地がある。ソ連が建設したもののなかでは世界で最初のミサイル基地だ。非常にアクセスの悪い僻地で、ソ連時代は完全な軍事機密となっており地図にも載っていなかったというその場所は、今は冷戦博物館として解放されている。
公共交通ではたどり着けないため、レンタカーか、あるいは平坦なリトアニアの大地であれば近くの村から自転車で行くこともできなくはない。車の運転が得意な友人がバルト諸国を巡るというので連れてってもらうことにした。
冷戦博物館
有刺鉄線が張り巡らされている
入場料は大人ひとり10ユーロ
司令室や発電設備、燃料庫を中心としてミサイルの発射台はその周囲に4基あり、そのうちの1つが解放されている。
秘密基地らしく、全ては地下に造られている。基地への入り口上部には足を拭くようにロシア語の注意書きが残っている。もちろん現在は土足のままで入場可能だ。
シリコン製の人形が出迎える
配備されていたミサイルの解説
館内は冷戦の歴史とこのミサイル基地の解説に加え、米ソによるプロパガンダ合戦についての展示が並ぶ。
モスクワと通信していたのかな
当時使われていた防護服を着ている人形
「非常口への方向」
深さ30メートルのミサイル発射装置がこの博物館の目玉だ。上からのぞきこめるようせり出した足場もある。ストンと真下に落ちていく空間はめまいがする。落下防止のためのネットがあってよかったが、手を伸ばしてスマホを構えるのは少し怖い。
「安全規則の違反はあなたの命と仲間の命を脅かす」「不良な防護具では作業を始めるな」
当時の品やマニュアルの展示
壁に掛けられたガスマスク
発電所
将校の部屋にはレーニン像も
わたしは核兵器についてのダークツーリズムに関心があり、これまでも広島、長崎、ホワイトサンズを巡ってきた。それらに比べるとこのリトアニアのミサイル基地はかなりマイナーな存在だが、しかしそれぞれのスポットは異なるタイプの強い『核の記憶』を提供している。
この基地にはもうミサイルも兵士もいない。かつて世界を終わらせるために造られた装置の残骸は、いまもこの森の地下に眠っている。