ATOK Passportの値上げで解約したあなたへ
tl;dr
「ATOK Pro 6」という買い切り版ATOK(13090円)があります。サポート終了が2033年までなので、今月から使えば約168円/月になるので値上げ前のプランよりもさらにお得。
かわせみとのお別れ
しばらく前にATOK Passportという日本語入力ソフト(IME)の月額料金が二倍に値上げされてしまったこともあり、思い切って解約して別のIMEであるかわせみ4に移行した。軽快な動作ではありそこそこ快適に感じていたものの、しかし長年ATOKにならされてしまった体は数ヶ月かわせみを使ったところでまったく馴染むことができず、毎日の日本語入力がひどく苦痛に感じるばかりだった。
軽快でシンプルなIMEは自分の好みだった
私の日本語の入力スタイルとかわせみの相性が悪すぎるのか、変換精度が許容できないレベルで悪かった。IT系のライターとして大御所であるスタパ斉藤氏をして「非常にイイ日本語IMEなので、ぜひ試してみていただきたいッ!!! 」とまで言わせているのだから、端的に私の使い方とはマッチしなかっただけなのだろう。プロダクトに文句を言いたいわけではない。
- かりたり:仮たり
- いきたいみせ:生きた意味背
- けんすうじゅん:件数盾
- いいはんだん:言い判断
- れんりあ:連理a
- おんたま:恩玉
- ちゅうとうたび:中問うたび
- こうてきれーと:請うてキレート
- じゅたくてにもつ:受託手に持つ
- しーしゃ:シー者
- くるまでいって:来るまで行って
- やさい:や再
- たりるやろ:足りるやlo
- こんとりびゅーた: コン取りビュー他
とはいえ私が入力したい日本語がなめらかに出てこないという状況は耐えがたく、たった一日で採取できた変換ミスだけでも列挙するとちょっとしたリストになる。語の切れ目すら思った通りに認識されておらず、これはさすがに厳しいものがあった。
そうはいってもATOKに戻れるかというと、うーむ、月660円である。年に7920円。いらない機能が山盛り追加されて二倍の値上げというのは半年たった今でもまったく度しがたい改悪で、これはちょっと受け入れがたい。私の言ういらない機能というのは年々増えていくクラウド系追加機能のことで、具体的には以下のものになる。
- ATOK MiRA
- 生成AIを利用した文章作成・書き換え支援機能。
- ATOK Sync One
- ユーザー辞書や設定などを複数端末間で同期する機能。
- ATOKキーワードExpress
- 新語や話題語などの辞書データを随時配信する機能。
- クラウド文章校正
- クラウド上で文章をチェックし、表現や誤りを校正する機能。
- 8カ国語クラウド翻訳変換
- 入力した文章をクラウド経由で8カ国語に翻訳する機能。
いや……、これはちょっと本当にいらなすぎる……。文書作成や校正や翻訳なんてIMEに必要だろうか。もうこれは明確にいらない。ほしいという人は実のところどれだけいるのだろう。各社のAIサービスを使うほうがよほど汎用的で便利で、IMEに精度の高い日本語変換以外の機能をもたせるのはやめてほしい。
そう思ってほかのIMEがないかなと調べてみると、ATOK Pro 6 for Macという製品が存在することを知った。買い切り型のATOKで、価格はオープン価格だが販売店のサイトをみるに13,090円(税込)。余計なクラウド機能が一切ついておらず、ATOK本体の変換・学習・補正機能だけを残した製品になっている。ATOK Passportの廉価版というより、入力内容を外部クラウドへ送る機能や、勝手に配信される新語辞書などを嫌う大企業をターゲットにした製品なのだろう。そしてそれは私にとってもぴったりのATOKだ。
邪魔だと思っていたクラウド機能をもたないATOKがすでに存在しており、現行サブスク版の2年分の費用で買えるほか、製品自体のサポート終了日は2033年の3月末となっている。今買えばサポートの終了日までは6年半あり、商品価格を割り算して月額換算すると約168円/月となる。現行のPassport 660円/月に対して1/4の価格だ。値上げ前のPassportに比べても半額である。すばらしい。これを買おう。ATOK Passportからかわせみ4へ、かわせみ4からATOK Pro 6へ、というIMEの乗り換えがこの短期間に二回もあるのは無駄が多かったし最初からこのATOK Proを見つけられていれば出費は抑えられたのになと思わなくはないが、仕方ない。
しかし、このATOK Pro 6 for Mac、個人での購入がめちゃくちゃむずかしい。まず販売店がほとんど存在しない。ATOKの開発元であるジャストシステム社のオンラインショッピングに並んでおらず、Amazonやヨドバシにもない。楽天にはかろうじてあるが、これは使えない。なぜならメディアだけが販売されていて、ライセンスが付属していないのだ。要はこの製品、メディアとライセンスが別売になっており、必要な本数のライセンスと一つのメディアの購入が求められている。
現実的な購入のルートは何らかの手段で大学生協から申し込むか、ジャストシステム社に法人/個人事業主として発注し、見積もりをとってもらって発注し、翌月に請求書払いというフローを踏む必要がある。会社がなくても個人事業主として発注できるならいいじゃん、と思うかもしれないが、インボイス登録番号を取得していることが発注の条件になっている。まったく気軽でない。思考実験として最短経路を考えるなら、個人事業主としてインボイス登録 → T番号を取得 → ATOK Proを購入 → 商品到着後に廃業となるだろうか。まぁこんなことをしてATOK一本買う異常者はいないだろう。
このように全く気軽ではないが、わたしは手続きというものが好きでこの手の作業がそれほど苦ではない。法人としてジャストシステム社にATOK Pro 6を1本とインストールメディア1枚の見積もりをとることにした。先ほど貼った大学生協での料金と同様に13090円と記された見積書が即日で送られてくる。その後実際に発注を申し込んでみると五日ほどでインストールメディアとライセンス証書が宅配便で送られてきた。
インストールメディアはCD-ROM
いまどきCDをPCで読み込むこともむずかしくなってきたが、手元の外付けドライブでメディア内のインストーラを取り出して普段使っているDropboxに置いておく。商品のサポートページには「メディアドライブ非搭載端末では、外付けメディアドライブのほか、メディアドライブ搭載端末から外付けストレージ、社内サーバー、IT資産管理ツールなどにインストーラーをコピーしてインストールできます」とあるので、これは想定された使い方らしい。なんて無駄な作業だろうか、悲しくなってくる。
ATOK自体は慣れ親しんだ快適なもので、Passportにあった余計な機能は一掃されている。インストール直後に何度も出てくるクラウド系追加機能のセットアップウィザードも出てこない。
個人用途ではできるだけPassportに誘導し、法人向けにはレガシーな商流でだけProを提供しているという分け方をしていることは明白だが、本気で使いたいのであればこのような手段も残されているようだ。見積・請求書・CD-ROM郵送という古代商流に耐えられるのであれば試してみてもいいかもしれない。わたしはずっと望んでいたシンプルなATOKとしばらく暮らし続けようとおもう。