住むところを探そう
留学を決めて、入学が決まって、航空券を買ってもまだ十分ではない。まだまだやらなきゃ行けないことはたくさんあります。その一つは住居の確保。
住居の確保。
切実な問題だ。始業は八月だから死にはしないかもだけど、家無しで冬を迎えたら氷漬け確実です。マッチ売りの少女みたいになってしまうわけで、そうでなくても暖かいシャワーと柔らかなベッドの上で入眠するくらいの贅沢は許してほしい。ともかくもタリン市内で住むところを探さねば。
ホテル暮らしは便利は便利だろうが、いくらなんでも貯金を切り崩していく貧乏留学でこんな選択肢は最初から無い。首都タリンのホテルは観光地価格でかなり高価なのだ。卒業前に貯金は全部吹き飛んでしまうだろう。
最も楽で安価な方法は、やっぱり学校が運営している学生寮。部屋の種類は幾つもあり、例えば家族で暮らせる大きな部屋、二つのベッドがある二人部屋、一つのベッドと机が備え付けられた一人暮らし用の部屋などだ。 外国で一人暮らしも悪くないが、どう考えても孤独だ。最初の数ヶ月くらいは誰かと一緒に暮らした方が寂しくないし、何かあった時に助けてもらえるかもしれない。 それだけじゃなく、大学が運営しているだけあって家賃が相場よりも結構安い。そのうえ基本的な家具やキッチン用品は備え付けらしいから相当お得な物件だ。
ただ問題がひとつ、常に満員でどの部屋もキャンセル待ちが続いているらしいのだ。 最も人気のある一人暮らし用の部屋は1年待ちとのこと。うーん、みんな一人暮らししたいんだな。 私の選んだ(おそらく最もスタンダードな)二人部屋も空きはなく、また空室待ちは受け付けるけど、秋セメスターの始まりに間に合わない可能性があるらしいのだ。困った話である。でも無いものは仕方がないのでとりあえず申し込みだけしておいて、もし部屋が割り当てられなければ安アパートでも借りてくらそうと考えました。
そうこうしているうちに2週間。無事部屋が空いたとメールで知らされたので即確保。 なんだ、取れるじゃないか。結構ヒヤヒヤしたけど、無事取れてしまえばとたんに杞憂だったと思えるんだから人間の考えって甘いもんだ。
メールを見るとDepositという名の敷金を払わなければならず、その締め切りは8月14日。8月22日に日本を出て25日にタリンに到着する私としては、また面倒なことになったと思ってしまう。
せっかく確保した優良物件をみすみす手放す訳にもいかない。寮の管理人にメールして渡航前に日本からDepositを振り込んで良いかどうかを確認してみた。結果はOK。これ幸いとばかりに国際送金の方法を調べてみたら思いのほか手数料が高くてまたしても戦慄するはめになる。メガバンクでは手数料が6000円とかする。さすがにこれはボッタクリだろう。メインに使っている住信SBIネット銀行は海外送金に対応していない。論外である。
他の方法を調べてみると(インターネットって本当に便利だ)、ゆうちょ銀行・郵便局が多少安く2500円。そのほかにもSBIレミットとかなんとかのマイナーな方法はあるけど総じて欠点が多い。特定口座には振り込みできないとかそんなのばっかだ。おとなしく郵便局を使おう。
地元の郵便局に「国際送金したいのですが」と伝えてみると、ここではできないという。郵政民営化以降、国際送金に対応できる郵便局は数を大幅に減らし、現在は全郵便局の3割程度しか取り扱っていないらしい。こればかりは仕方ないので自転車ですこし離れた隣町の郵便局まで行くことにした。 初めての国際送金だ。個人輸入などでネット上での金銭やりとりは何度も経験しているけど、Paypalやクレジットカードならいざ知らず、SWIFTコードやら為替レートやらを意識して行う取引は初めてだ。
さて郵便局に着いた。 「国際送金をしたいのですが」「はい、どちらの国でしょうか?」「エストニアです」「…少々お待ちください」 もうこの反応にも慣れてきた。エストニアに留学するって聞いて一撃で場所がわかった人は高校の時から通っている御徒町の歯医者の院長さんだけだったなぁ。 窓口のおばさん曰く、郵便局で受け付ける国際送金は大抵東南アジア宛てやアメリカ宛て、ドイツ、フランス、イギリスも多いらしい。エストニア宛は初めて見たとのこと。
国際送金用の用紙と書き方の案内書をもらって筆記台で欄を埋めていきます 『銀行コード?なんだそれは。SWIFTコードか?それともBICコードか?IBANコードか?』 『送金先銀行の住所? わかんねーよ…』 『ウムラウト記号はどうやって記入するんだよ…』 みたいな戸惑いはあったけど、スマホを駆使して逐一調べながら記入していきます。指定された敷金125ユーロと、郵便局に支払う手数料2500円、さらに送金先銀行が徴収する手数料5ユーロ。あわせて130ユーロ+2500円。ゆうちょ銀行の定めた今日のレートでは1ユーロ=131.27円なので、合計は19565円でした。
最後に「送金目的が北朝鮮およびイラン関連でない」ことを誓うための署名をしておしまい。
エストニアに着いたらすぐにヨーロッパ資本の銀行口座をつくらないと、毎度毎度こんな面倒でお金のかかることを強いられるみたい。気をつけよう。
追記: 送金先からメールがあり、「130ユーロ送ってもらいましたけど、12ユーロを手数料として銀行に徴収されているので7ユーロ足りません。こっちきたら払ってね」とのこと。 Damn! 5ユーロって言ったじゃねーか! 郵便局に文句言ったってしょうがないので今回はあきらめますけど、今度からはBTMUのネットバンキングを使います!