海外転出届の提出

日本を長期にわたって出る人は必ず提出する必要がある書類が二つある。「海外転出届」と「在留届」だ。このうち在留届はインターネットでいつでも提出できるので置いておくとして、海外転出届は住んでいる地域の区役所などに行って出す必要がある。基本的には二週間くらい前から提出を受け付けるようだ。今日がちょうど二週間前だったので早速住んでいる区の役所に自転車で行ってみた。

戸籍を担当している課の前に行くと職員に用件を慇懃な態度で尋ねられた。とても感じが良い。用件を伝えると専用の用紙を渡された。 新住所の欄は国外なら国名だけでも良いという。

記入を終えて長椅子に座って10分ほど待っていると電子音声で自分の番号が呼び出された。何年か前に住民基本台帳カードを発行してもらったが、これも返納する必要があるのかと思って身分証明として同時にカウンターに置いた。

案の定住基カードは返納となるらしい。帰国後はまた葛飾区民になるつもりだったが、決まりは決まり、仕方が無い。もちろん申告せずに持ってても良いだろうが、日本国内では運転免許証と同じ効力を持つ身分証明書だ。どっかで落としてサラ金にでも持って行かれたら大変だ。おとなしく返納しておく方が安心できる。

余談だがこの住基カード、一枚の発行に1000円程度の費用が掛ってる。税金でまかなわれているので発行は無料だが、免許証がパスポートに次ぐ身分証明になっている以上、運転免許証を持っている人はあえて発行する必要もないと思う。住基カードがあれば全国のコンビニのコピー機で住民票とか印鑑証明書を窓口より安い値段で発行できるくらいがメリットであり、それ以外の利点はとくに無い。普通の日本人であれば住民票や印鑑証明が頻繁に必要になることなど希有だし、貴重な税金を無駄に使わせてしまうのは申し訳ない気分がする。次に日本に帰国し、転入届けを出したとしても住基カードの発行はやめるつもりだ。あれは免許証やパスポートを持ってない人や持てない人専用のものにしていいと思う。

無事転出手続きを終えると、次は渡された書類を持って別の窓口に行くよう指示される。国民健康保険の脱会手続きだ。私は生まれてから22年たつが、一度も大きなケガや病気をしたことがない。生来健康で、ただの風邪を引いたことすら片手で数えても指が余るレベルだ。一生つきあっていくであろう体内機能の異常がないではないが、医者にかかる必要はない程度。健康に産んでくれた両親に感謝である。だからこそ二週間前の今日でも健康保険を脱会したっていいかなと思ったのだ。保険料だって幾ばくか安くなるかもしれないしね。ところが課の職員のいうことには、渡航当日まで健康保険証は持っていていいという。健康保険への加入は日本国民の義務であるからして、国外転出の当日までは保険に入ったままでいられるようだ。良くできたシステムだ。驚くことに、保険証の返納も別に成田から郵便で送ればそれでもいいし、誰か友人にでも預けて代理で区役所に持ってきてくれてもいいらしい。あんがい柔軟な制度だった。

番号が呼ばれるまで待っていたときに思ったのだが、これだけ情報技術が進歩しているのだから雑多な手続きはどんどんコンピュータに移行していくべきだと思う。例えば葛飾区役所は7階建ての(ボロい)建物だが、このうちの一階部分をすべての受付窓口として使い、区民との応対は集約してしまったらいいと思う。一般業務はその他の階でおこなうということだ。庁舎内のスペースを有効に使えるし、セキュリティ的にも優れている。さらに区民側からすれば窓口をたらい回しにされるということもなくなると思うのだけど、どうだろうか。今回のような海外転出なら特別な審査が必要になるわけでもなさそうだし、一カ所で/一度で区からの転出と健康保険の脱会を行えたら便利そうだ。小さな待合室をいろんな場所に設けるより、庁舎の一つの階だけに集約するメリットは存分にあると思う。

介護保険課と税務課と戸籍住民課を一体にするのは乱暴な考え方かも知れないが、時間の掛る特殊な手続きを除けば区役所に区民から持ち込まれる仕事は大抵の場合ルーチンワークばかりだろうから、なんとかいけると思うんですけどね。

そんなことを考えてる間にすべての手続きは終わる。これで22年住み続けた葛飾区の区民で無くなったのはすこし寂しいが、また戻ってきたい。俺はこの区が好きだなぁ。