証明写真機を探して

エストニアにはおそらく一般的な証明写真機が存在しません。体育の授業を履修した場合、自分の顔写真の入ったIDカードを作るのですが、街の大きなショッピングモールの受付で聞いてみてもありませんし、市役所ならパスポートの発行とかで使われるだろうと思って行ってみても見つかりません。この街出身のクラスメイトに聞いてみても「見たことないとおもう」と言われる始末。

実はこの国ではパスポートや運転免許証等の顔写真入りの証明書の類を発行する際に、写真の持参を求めていないのです。エストニアはITの分野が著しく発達しているというのは今まで何度か書いてきたことです。ですがまさかここまでとは思いませんでした。市役所には日本の駅前辺りによくある証明写真機が二台並んでいます。そこで市民番号を入力して顔写真をとるのですが、お金を入れるところも無ければ写真が出てくるところもありません。でも証明写真機としてはごく普通の形で、カーテンがあり、回転させて高さを調節する丸イスがあり、タッチパネルで気に入った写真を選ぶという日本と全く同じ使い方です。しかしこの証明写真機は写真を印刷するためのものではなく、インターネットで役所に直接撮影後の画像を送信するためのもの。したがって撮影後はそのまま役所で申請すれば数日後にパスポートが受け取れます。手数料だってクレジットカードや銀行振込でできるので、物理的な手続きは本当に簡素なのです。

それだけではありません。究極的には**スマホで自分の写真を取って、それを役所にメールで送ったってパスポートは発行してもらえます。**もちろん写真を持参してもいいですし役所で申請してもいいのですが、基本的にはインターネットですべて完結させるというこの国の情報化の度合いは、日本人の常識をはるかに超えています。

とまぁそんな国なので証明写真機がないのは納得です。ですが前述の体育の授業でも必要ですし、もうすぐ期限が切れる日本のパスポートの更新にも証明写真が必要なので、せっかくだから街のフォトスタジオで撮影してきました。日本だと大抵700円。エストニアの大きなショッピングセンターにある写真館では5ユーロでした。値段はほとんど同じですが、人に取ってもらうというのは気持ちがいいですね。なかなかかっこよく撮れたように思います。