タルトゥにいってきた

エストニアの祝日と学校の授業縮退日と通常の週末が連続して5連休の休みができた。日本のゴールデンウィークとかぶっている感じのこの素敵な休暇をどのように過ごそうかと考えているうちに4日目になってしまった。サーレマー島の名物の風車とか隕石墜落現場でも見に行こうかなー、と思っていても思っているだけでは楽しい時間はやって来ません。

エストニアはちょうど春の日差しに包まれて、涼しいながらも街歩きにはピッタリのシーズンです。私は卒業後は日本に帰るつもりなので、このエストニア滞在中を逃したらこのバルト三国の観光地に行く機会が減ってしまうのでは、という危機感がありました。エストニアだけでも数々の観光スポットがあり、世界遺産や美しい自然、ここにしかない景色などがたくさん詰まっています。せっかく長い冬を終えて、更に期末試験シーズン前ののんびりした時期ですから、ちょっと遠出をしてみることにしました。

行き先はこの記事のタイトルにもあるように、タルトゥというところです。私の住むタリンから南東に180kmほどでしょうか、高速バスで2時間半ほどで行けるエストニア第二の都市です。ここは日本で言う京都のようなところで、「エストニアの精神的首都」とも称される長い歴史と熱い魂を持った場所。ロシアからの独立を勝ち取ったときに結ばれた平和条約もこの地で結ばれました。

私は趣味が旅行なので結構旅慣れている方だと思います。リュックサックにガイドブックとミネラルウォーターのボトル(中身は水道水)、ノートPCと小さなデジタルカメラを持って、サクッとタリンのバスターミナルに向かいます。

バスターミナルにはバスのチケットの自販機があり、タッチパネルでピコピコと目的地や時間を指定し、銀行のデビットカードを差し込んだらすぐにてにはいります。国をまたいでても近くの国でもこれは同じ手順。簡単で迅速なのでおすすめです。

首尾よく10ユーロで10分後出発のチケットを手に入れたのでバスのりばでそのバスを探します。指定された7番プラットフォームにはすでにバスが来ていて、数名の乗客が荷物を詰め込んだり、おじさんが禁煙の車内で我慢できるように最後のたばこを吸っています。荷物はリュックサック一つなのでそのままチケットを提示してバスに乗り込みます。一応席番号は割り振られていますが、バスは基本的にガラガラなので好きな席に座っても構いません。バスターミナルの自販機でチケットを買うと、座席の指定ができないので前から詰めて指定されてしまいます。もし混んでいたらできないことですが、2時間半の長いバス移動、隣に誰も居ないほうがよっぽど快適です。

バスのクオリティはピンキリですが、値段は殆ど変わりません。なのでスケジュールが合えば有名な会社のものを選んでおくと一層快適です。前に十字架の丘へ行った時にも説明しましたが、一番のおすすめはLuxExpressです。電源もWi-fiもありますしトイレもコーヒーサーバーも付いてるデラックス仕様。これ選んでおけば間違いありません。

定刻より3分ほど遅れて発射したバスは、タリン市内を抜けると広大な平野をまっすぐ進んでいきます。エンジンとタイヤが鳴らす一定の高さのノイズを聞きながら、よく晴れた青空の下をバスは走っていきます。

到着は11:40。それまでガイドブックを読みながら新しい地への期待をふくらませます。

タルトゥに到着したのは定刻通り。ちょうどお昼時なのでバスターミナルの隣にあるtasku(タスク)というショッピングモールでお昼ごはんを買います。お惣菜パンを2つ買いました。私はエストニア語が読めないので毎回中身は賭けです。最近はなんとなく「liha」は肉とかはわかるようになってきましたが、それでも大抵中身は想像と違っています。赤くて美味しそうな具材が見えていたので買ったらあんまり美味しくないすりおろしにんじんが入っててがっかりしたりとかはしょっちゅうです。

そのモールを通り抜けて反対側に出ると川に突き当たりました。私の住むタリンには川はありません。エストニアは極端に平坦な土地なうえ、タリンは港町なので人工の運河も無ければ自然の川もないのです。タルトゥにはエマユギ川という自然の川が流れており、古代から海運に活用されてきたようです。

川もいいけどタルトゥには観光名所も幾つかあるのです。地球の歩き方のタルトゥのページを開いてうろうろすると、小さな街なので次々に該当スポットにぶち当たります。

ラエコヤプラッツという、タリンにある広場と同じ名前の広場に出てきました。ここにはキスの像という像があります。噴水の水が男女の像を美しく彩っています。

少年と父親の像でしょうか。身長が同じになってるのが味わい深いですね。こういう芸術作品が公園に唐突に、自然に設置されているのってすごく素敵だと思います。芸術作品に対するリスペクトが感じられますね。

エストニアは街なかのオブジェなんかも結構凝ったデザインをしています。

次にシュトルーベの測地弧のモニュメントに行ってみます。これは10カ国にまたがるとんでもない世界遺産です。地球の大きさを測ろうとした天文学者シュトルーベが設置した三角点群のことで、タルトゥでは天文台がその点に選ばれました。その天文台の近くに記念のモニュメントが建てられています。

場所はトーメの丘の中心部。丘の上からは旧市街が一望できます。古い建物がよく保存されているエストニアという土地柄、きっとシュトルーベがここからみた景色は今とあまり変わっていなかったのではないでしょうか。

測地弧のモニュメントを見たあとは、タルトゥ大学の博物館として使われている古い聖堂を見学してみます。

そとは破壊されてしまったのか、年季の入った廃墟のようになっていますが、博物館として使われている部分はリフォームされていて快適です。建物の歴史やタルトゥ大学の銘品がたくさん展示されていますので、訪れた際はぜひ立ち寄ってみましょう。

タルトゥはタリンに比べるといくぶんのんびりとした、眠たげな表情の地方都市です。中心部から少し離れると、とたんに静かでぼんやりした雰囲気に包まれます。

タリンのようなわかりやすい観光都市とは違う、古くから受け継がれてきたであろう、大きくも小さくもない、便利でも不便でもない、なんとも言えないいい雰囲気の街です。

エストニアの頭脳が集う、国内で最も歴史と伝統をもつ名門校、タルトゥ大学も見学してみました。

小さな博物館が併設されており、そこを見学するつもりでしたが、受付をしていたタルトゥ大学の学生さんが過去に使われていた懲罰房やセレモニーで使われるホールなんかも案内してくれました。

最後にAHHAAサイエンスセンターという最先端の科学館にも行きました。

日本の科学未来館のような、子供の科学への興味をもたせるための体験型博物館です。大人がみてもここは相当楽しめます!完成して間もないこともあり、中の設備は最新式でとってもきれい。爆音で部屋がビリビリするような実験コーナー、「子供が見たら泣くだろ…」と呟きたくなるシャム双生児や頭蓋骨のない胎児のホルマリン漬け、ひよこが生まれてくる様子をライブで見られる飼育箱、空中に高く張られたロープの上を走る自転車(実際に乗れるので人気)などなど、家族で来たら一日ずっと遊べるような施設です。

ここには日本製のプラネタリウム投影機が設置されており、さらに世界的にも珍しい全球型の施設なのです。

普通のプラネタリウムは半球形で上部にだけ星が投影されますが、ここAHHAAでは足場が硬質ガラス製の床でできており、宇宙に浮いているような感覚を味わえるのだとか。私も追加料金を払って見てきましたが、解説が全部エストニア語でなんともよくわからない感じでした。確かにクオリティは高いのですが、いかんせんドームのサイズが小さいのです。もっと大きければなー、と思ってしまいました。

そんなこんなで午後7時。行きとは違ってしっかり満席になった高速バスに乗って地元タリンに帰ります。帰りのバスで写真を整理してFlickrにアップロードしながら考えたのは、やっぱり旅行って楽しいなぁということ。これからもいろいろなものを見て聞いて触れて楽しみたいです。