ブラウザとビデオ

LinuxのときはVirtualBoxでWindowsを起動してIEを使いましたし、WindowsのときにはそのままIEやFirefoxやChromeを起動してデザインが崩れていないかどうかを確認していました。Macを使うようになってからはFirefoxとChromeしか使えないものですから、日本で圧倒的大多数を占めるWindows+IEという組み合わせを使うことができません。

ブラウザというものは、いくら標準化が進められてきているとはいえ、IEもChromeもFirefoxもレンダリング結果やCSS3の対応状況はかなり変化してきます。描画されるテキストはOSにインストールされているフォントに依存してしまいますし、Chromeでは標準で対応しているけど、Firefoxではベンダープリフェックスが必須の機能なんてのも山ほどあります。

一番わかりやすいのはHTML5の目玉の一つであるvideoタグで表示できる動画の種類です。動画のエンコーディングには各種あるコーデックを使用しなくてはなりませんが、コーデックの分野は特許によってがんじがらめみされている分野であり、それゆえにオープンソースで開発されているブラウザではコーデックの内包が難しくなっています。

Googleによって開発されたWebM形式の動画は、コンテナとしてMatroskaフォーマットを、内部の動画圧縮にVP8というコーデックを使用しています。Googleが特許を自由に使うライセンス契約を特許のホルダーと結んでいるため、オープンソースでもつかうことができません。ChromeやFirefoxでは外部のプラグインを使用しなくても使うことができますが、IEとSafariでは対応していません。

MP4コンテナとH.264コーデックを使った動画も広く使われています。ですがMPEGメディアはMPEG LAによって特許が取得されており、使用には彼らにお金を支払う必要があります。予算的に余裕のある企業が作っているブラウザ、すなわちIEやSafariやChromeでは再生が可能です。しかしFirefoxでは再生できません。

Ogg Theora Vorbisはどうでしょうか。わりかし長い歴史を持っている上、特許に関する問題をはらんでいません。そのためFirefoxを作っているMozilla FoundationやOpera社によって支持されています。ではこれが一番いい案なのかというとそうでもありません。フリーで開発されていることも一因かもしれませんが、このコーデックは性能が高くありません。FirefoxやOpera、Chromeではサポートされていますが、IEではサポートされていません。

まとめると以下のようになります。

  • mp4:ChromiumとFirefoxで非対応
  • WebM:SafariとIEで非対応
  • Ogg:IEで非対応
  • (Flash:インストールが必要であり、将来性が皆無)

コンピューターで扱う動画というのは、とにかく特許が根深く業界に絡みついています。結局自由に使え、なおかつどのブラウザでも対応させようと思うとアニメーションGIFしかありません。GIFフォーマットはどっかの企業が特許の侵害を主張してしまったために2004年ころに対応ソフトが激減したという経緯がありました。Photoshopみたいなのはずっと対応していましたが、フリーのソフトウェアではGIF非対応バージョンが公開されたりしたものです。いまでは時効を迎えたので関係ありませんが、コンピュータ業界と法的権利は非常に相性が悪いとも言えます。Torrentがもたらした経済的損失ってどれほどのものなのでしょうか。

完全にフリー、かつアニメーションに対応してるとしたらKayacが作ったSVGガールみたいな解決策もありますが、死ぬほどめんどくさいし重いですね。

PNGみたいな特許問題から離れた形式があらわれたらいいですね。イギリスのBBCが開発している完全フリーでオープンソースのコーデックDiracあたりはどうなのでしょうか。