東南アジアにいってきた 5 (もういちどクアラルンプール)
すこし疲れてはいるが、なんとかクアラルンプールまで戻ってくることができた。一生こんな電車には乗らないだろう。普通にバスのほうがいい。良い経験ではあったので、とりあえずこれから一日かけてまわるクアラルンプールの観光名所に胸を躍らせる。本来旅行初日にみておくべき観光地の多くを先送りにしていたため、戻ってきたこの街の勝手は実のところよくわかっていない。金沢に住む友人を雑に誘ってみたら簡単に来てくれたので今日と明日は二人旅だ。
クアラルンプール市街地の観光名所をまわる。最初に訪れたのはバトゥ洞窟。クアラルンプールの中心地からは電車でアクセスできる。かなり気温も高いので、適宜水分補給を差し込みつつ向かってみる。
ヒンドゥー教の聖地として有名な洞窟は、この大階段を上りきった先にある。階段の途中には別の洞窟が口をひらいており、その内部を探検する英語のツアーが人気だという。結構並んでいる人がいたが、実際には20分程度で入れた。コウモリかなんかによるグアノが積層した暗闇へ、ヘルメットと細身の懐中電灯で進んでいく。道中では壮大な鍾乳洞や入場制限がかかるまえになされたであろう古い落書きなんかが見られる。ガイドのお兄さんは時折クイズを出したり、一斉にライトを消してみたり、そんなかんじのなかなか楽しいツアーだった。天候が関係するわけでもないのでいつ行っても見られるモノは変わらない。なので一度行けば十分だが、一度くらいは行ってみてもいいんじゃないかと思う。
頂上は開けた空間になっており、たくさんの観光客と、それよりは少ないであろう信者が祈りを捧げていた。ヒンドゥー教の神々がまつってある巨大な鍾乳洞は神秘的な空間だ。観光名所になるのも納得できる。
階段を下りて電車で中心部へ戻っている途中、ちょうどお昼が近づいてきたことに気づく。次の目的地であるペトロナスツインタワーへ向かう道中で昼食を取ることにした。街中で目に付いた開放的なレストランで魚料理を注文する。味はいいんだけど、信じられないほど骨がおおくてとても食べづらかった。マレーシアの人はこのまま食べているのだろうか。
レストランをでる。目的地であるペトロナスツインタワーまではスマホの地図を片手に歩いていくことにした。酷暑のなかをひたすら歩く。たいした距離ではないものの、真夏の東南アジアでは健康的とは言いがたい暑さと太陽の光で意外なほど体力を消耗する。お店を見かけるたびに水のボトルを買っているみたいだ。それでも街歩きの最中にみかける綺麗な建物は、多少なりとも我々を元気づけてくれる。海外旅行をしているのだという気分は心地良いものだ。
市庁舎かなにかだろうか、やはりイスラム教国であるためモスクの雰囲気を踏襲した建築物が街中にたくさんある。イスラムの建築は暑い街でこそ映えるのだ。
そうこうしているうちに、やっとのことで到着したペトロナスツインタワー。私は3日くらい前の夜に見たが、昼間の姿もまたかっこいい。非常に重厚な見た目をしており、周りへ与える威圧感は相当なものだ。452メートルあるらしい。陽光に輝く二つの塔は、言うまでもなく現代建築の一つの到達点だろう。私と友人がこのビルのふもとから見上げている間にも、実にたくさんの観光客たちが記念写真を撮っている。世界に二つと無い特徴的なビルだ。誰だって興奮してしまう。私たちも例外ではない。
さて、次の目的地はどうしよう。トリップアドバイザーを見てみると、市内に東南アジア最大級の仏教寺院があるという。おもしろそうだ。行ってみよう。Uberを使ってタクシーを呼び、早速向かったものの、歩いた方がよほど早いだろうというレベルの大渋滞に巻き込まれた。太い道路だが隙間無く乗用車で埋まっている。こんなときに火事や事故で救急車両に乗ることになったら最悪だろうな、とラジオの音楽番組だけが流れる車内で考えていた。
到着した天后宫は、台湾や上海で見かけたのと同じように大変豪奢な建築だった。鮮やかに彩られた建物自体が非常にカラフルで迫力がある。無数の赤提灯がぶら下がっている様子は九份のそれに近い。典型的な中華寺院だ。賑やかでとても良い。小高い丘に建っているため、クアラルンプールの町並みも一望できる。タクシーがないとここまでくるのは大変だが、それでも来る価値は大きい。
夕日で橙色に染まっている。すばらしい場所だ。マレーシアというのはかくも多民族国家であることを感じさせる。
明日はブルネイ王国へ向かう。とても小さいが裕福な国だ。マレーシアとは場所によっては陸続きであるが、クアラルンプールからは飛行機で向かうことになる。クアラルンプールとブルネイの首都バンダルスリブガワンまではエアアジアが飛んでいる。航空券は往復で7500円だった。早朝6:35発の便なので、フライトを逃さないように空港の敷地内にあるホテルに泊まることにした。この旅のなかでも最大の目的かもしれない。行ったことある人もそれほどいない東南アジアの小国に対する好奇心を胸にベッドへ沈み込む。たくさん歩いて疲れていたみたいで、あっというまに眠り込んでいた。