iettyで家探しをした

これまで日本国内での住居は実家を除いて全てミニミニなどの仲介手数料が半額になるような不動産屋で探していた。しかし仕事がすこし忙しくなったので店舗に行くのも面倒だと思い、最近流行っているiettyやYeah!(以下イエー)といったネット不動産店を使って部屋探しをしてみた。

私が求めるお部屋の条件はぶっちゃけゆるゆるで、窓からの景色がいいことと、その窓から朝方に太陽の光が入ってくること。あとは最寄駅の希望がいくつかあるくらいだ。駅徒歩10分くらいでも文句はないし、コンビニが近くになくても別に良い。この条件ならすぐ家は見つかるだろうと思っていた。しかしそういう訳でもない。

イエー

最初に使ったのは仲介手数料が最も安い不動産屋を探してくれるイエーだ。仲介手数料が無料、さらにキャッシュバック3万円みたいな物件もかなり多く、ここを使っておけば大抵は一番やすく部屋を借りられる。しかしここはチャットの対応というか発言が妙に雑なのが難点で、たぶん若いアルバイトスタッフが応対しているのだろう。少人数ではあろうが複数のスタッフがいるだろうしそこにはムラがあるのかもしれない。正直LINEというもともと1ミリも使いやすくないチャットサービスで彼らと長いやりとりをするのはとても疲れてしまう。提案された物件もチャットログとともにどんどん流れていってしまうので、使い方としては事前にSuumoやHomesで決めた物件を事務的に、そして簡潔に問い合わせるのがベストだろう。

ietty

こちらは物件探しがメインのサービスで、プロダクトとしてもよくできている。最初に担当していただいたチャットオペレータの方も大変丁寧で気持ちよく相談できた。イエーのように不便なLINEを使わなくてもよく、不動産探しのためのサービスとして専用に設計されたチャットウィンドウはとにかく使いやすい。仲介手数料は家賃の半額分が固定で掛かるしキャッシュバックもないので、場合によってはイエーで探すよりも10万円以上高い初期費用になる。が、そもそも部屋が見つかってない状態ならばiettyのほうが便利だ。suumoやhomesで設定できない項目を元に部屋探しをしたいとき、たとえば7階以上の物件がいい、とか東向きがいい、とかはインターネットで探すのは難しいのだ。イエーも物件探しをやってくれることはやってくれるが、LINEをその用途に使うには明らかに不便だ。iettyのチャットツールはスタッフが探してくれた物件の一覧もできるし圧倒的に使いやすいし、公式キャラクターのiettyくんはとてもかわいい。iettyや街の不動産屋で物件を探し、それをイエーに持って行ったら安くなるのだろうが、それは完全に飛ばし行為なのでやめよう。

内見

イエーもiettyも両方内見をしてみたが、これはなかなか便利なもので、予約した日時に内見希望の家の前で待ち合わせて部屋に入る。最初から直接物件に行けるので、例えば最寄り駅からの徒歩経路だったり近所の様子だったりが良く理解できる。不動産屋の営業車で物件を回ると、そこがよく見知った土地でないと物件と施設と交通機関の距離感がつかめず苦労する。京都に引っ越して最初の部屋探しではここが苦労した点だった。タリンでの部屋探しも直接物件の前で大家さんと不動産屋と待ち合わせて内見した。やはり内見はこうあるべきだ。

イエーでみた物件もiettyでみた物件も、どちらも希望していた部屋からはかなりかけ離れたものであると内見して気づく。部屋の窓が大通りに面していて夜でも騒音があるとか、日の光が入ってくる部屋がよかったけど近所に高い建物があって遮られてしまうなどだ。結局iettyの担当者のかたとは3回に渡って内見につきあっていただき、合計5つの物件を見させてもらった。そのなかでも最後に見た部屋が気に入り、そのまま契約することになった。

iettyの微妙な点

そんなiettyは無敵の神サービスなのかというとそんなことはない。これまでの物件探しよりもはるかに便利だが、使ってて「うーん…」となる点もまだある。いくつかあげると以下のようになる。

  • チャットオペレーターがこっそり交代する

    そりゃまぁ24時間同じ人が担当することはないことくらいわかっている。しかしチャットの途中でオペレータはユーザーに知らされることなく切り替わるのでいきなり文体やテンションがガラリと変化する。最初にオペレータさんが名前を名乗って担当していただいていたにもかかわらず、アイコンも名前も同じまま別のオペレータに知らぬ間に変わってしまうのは信頼感が醸成できないよなぁと思った。「担当○○に変わってXXが対応します」みたいなのがあったほうがいいと思うのだけど。それでは手間がかかるというのであれば、最初から名乗らず複数名のiettyチームが応対しますという状態の方が自然ではないだろうか。チャットでの会話中に明らかに接客態度が変化したことを不審に思って尋ねたら、担当者が入れ替わったことを教えてくれた。しかしこれでは名前を名乗る意味ってあるのだろうかと思ってしまう。こちらはずっと最初に名乗ってくれたオペレータさんの名前で呼びかけつづけるのだ。山田さん(仮名)と私の会話が、途中から佐々木さん(仮名)に引き継がれても私は相手を山田さんだと思い続けたまま、別のスタッフに山田さんと呼びかけつづける。

  • サイトへの意見箱が匿名じゃない

    iettyのチャットウィンドウでごく些細な不具合(物件名がリンクになっているのにカーソルがpointerにならなかった)があったので、画面上部からアクセスできる問い合わせ窓口から要望を書いてみた。するとオペレーターから「お問い合わせ窓口からのご要望ありがとうございます」といった内容の返信がチャット上でくる。正直これはたとえ内部的につながっていて投稿された意見が共有されているのだとしても、別の窓口なんだから担当者は別であるという建前にしておいたほうがいいと思う。そもそもチャットウィンドウで言っていいような内容であれば直接チャットウィンドウに書くし、あえてご意見箱へ意見を書いているのは対話してくれているスタッフに直接的には言いづらいなと思うような内容もあるからだ。意見を書いてくれたお礼をする必要があるのであれば、それは別の担当者名義、あるいはiettyくんからというかたちでメールでもすればいいんじゃないだろうか。と思ったが、今確認してみたところ「チャットで詳しくお話を聞くかもしれません」といった意味合いのメッセージがお問い合わせ欄に追加されていた。前からあったのだろうか。気がつかないだけということはないような気もするが、もはやこれまでどうだったのかはわからない。前からあったのならごめんなさい。

  • 別に安くはない

    イエーと比較するのが正しいかどうかはわからないが、正直iettyを使ったからといって安価に物件探しができるわけではない。iettyは仲介手数料が家賃の半額なので、たとえば街中の不動産屋でいうところのエイブルやミニミニと同じ初期費用になる。したがってイエーに比べると仲介手数料無料とか3万円キャッシュバックもないので結局初期費用は間違いなくかなり高くなる。iettyは物件探しと内見の予約がオンラインでできるという利便性がすばらしいのであって、節約のために使うサービスだとは全くもって評価できない。しかもiettyで部屋を決めた時に支払う初期費用はクレジットカード決済だと手数料として決済金額の3%を上乗せされる。つまり銀行振り込みとクレジットカード払いで数千円から数万円の価格差をもうけており、それは支払うべき決済手数料を客に押しつけているわけで明らかに加盟店規約違反だと思うけど、実質的に前者で決済することを強く促している。それは正直に言ってなんとも嫌な気分だった。

  • 全部ネットで完結するわけじゃない

    契約書に署名捺印するのも、鍵を受け取るのも渋谷区恵比寿にあるiettyオフィスに直接出向かなければならない。埼玉の物件を探そうが千葉の物件を探そうが、そんなのは関係ない。私の予想でしかないけど、たぶん宅地建物取引士から重要事項説明を対面で受けなきゃいけないだとかの法律でもあるのだろう。そして契約書への捺印と鍵の受取りは別の日に設定される。同時に済ませることができない仕組みになっているらしく、恵比寿に二回行くのは面倒なので一日で済ませたいと言ってもそれは叶わないのだ。理由はよくわからないが、iettyにとっても当日接客するスタッフを用意しなければいけないのだから損する仕組みな訳で、これは物件の管理会社の設けた迷惑なルールがあるんだろうと思う。これはiettyが悪い訳ではないとはいえ、一利用者からすれば早く改善してほしい点だ。恵比寿はターミナル駅というわけでもないし、たかだか鍵を受け取る数分のためだけに往復するのは面倒だった。

結局のところ

iettyで住む家を探したのは初めてのことだけど、サービス自体はとても使いやすかった。自分の希望要件を箇条書きにし、あとはオペレーターさんが調べてくれた物件リストを評価して良かった物件だけ内見するという部屋探しは、一度体験するとやめられない。私はもうiettyの対応地域であれば街の不動産屋にいく必要は全くなくなってしまったなと感じた。もちろん直接店員さんと話ながら物件を探したいという人もいるだろうが、あまりゆっくりできない対面式カウンターよりも落ち着いて使えるiettyは自分にぴったりだった。Googleストリートビューやsuumoの物件アーカイブを参照しながら対話的に物件を探せると、不動産屋で感じる私とスタッフの間にある情報量の非対称性が薄れるし、それゆえ変な物件をつかまされたなと感じることもない。気になることをチャットでいつでも(深夜だろうが早朝だろうが)質問し、スタッフの対応時間に解答をいただくのは気楽なものだった。

しかし今回の家探しに限っては、ietty担当者と物件管理者の間で情報の伝達に齟齬があり、私が希望していた物件の条件を満たしていない部屋を紹介された。しかもそれが明らかになったのは契約書に捺印をした後のことで、もうキャンセルすると数十万円の違約金が発生するという状況になってからだった。いくらなんでもそれはないだろうと思う。iettyスタッフとの対面時に受けた説明でも明らかな嘘をつかれていたことが後になって判明したこともあり、これまでのすてきなユーザー体験は随分と損なわれてしまった。 契約後にこれまで使っていたチャット上で謝罪されたが、現実的にそれではもう遅い。多くの人にとっては人生のうちで数えるくらいしか経験しない、またかなり高額な金銭のやりとりになる物件探しというものに対して、少し不誠実だなと感じた。iettyにとってはたくさん来る顧客の一人でしかないけれど、客にとっては人生の小さくない期間に生活する拠点を探す数少ない大切なイベントなのだ。

次の部屋探しはどうするか

不満はあるが、契約してしまった手前すぐに解約するのもお金の無駄遣いになってしまう。私は引っ越し自体は全く嫌いではないため、しばらく住んだらまた次の部屋探しを始めようと思っている。その時はもう少し慎重になろうという気持ちになった。