イグアスの滝にいってきた

南極にいくにあたりアルゼンチンに入国しそこからヨーロッパに一度渡ったのだが、その際往復の航空券が片道の航空券と値段が変わらなかった。それなら往復分を買って片道放棄したって出費はかわらないし、もしかしたらしばらくあとには南米にまた行きたくなっているかもしれないと思って迷うことなく往復航空券を買った。実際には南米にまた訪れる必要のある用事は生まれなかったのだが、逆に無料で南米に行けるのだと思うとそれはそれで得じゃないかと考えてしまい、3ヶ月ぶりにアルゼンチンに行くことにした。こんなに何度も行った国もそんなに無い。

アルゼンチンに特段の用事はないとはいえ、まだ行ったことのない観光名所はいろいろある。中心部の首都ブエノスアイレスや南部のウシュアイアは十分見てきたので、次はアルゼンチン北部のプエルトイグアスに向かうことにした。名前からもわかるとおりそこはイグアスの滝の最寄りとなる町だ。世界遺産として登録されている滝というのはかなり心惹かれる。

ブエノスアイレスからイグアスの滝空港に向かう

国際線が多く就航しているエセイサ空港(EZE)から国内線が主体のホルヘ・ニューベリー空港(AEP)に移動する。二つの空港は高速バスで結ばれている。アルゼンチンはもうずっと異常なインフレが続いているので、3ヶ月前に来たときよりもさらにバス代は高くなっていた。高くなっていたといっても、アルゼンチンペソの価値が下がり額面が上がっただけなので自分のクレジットカードに請求される金額はかわらない。

何度も見た風景

EZEとAEPの乗り継ぎは、シャトルバスが1時間に一本しかないということもあるため、基本的に4時間とか5時間は乗り継ぎ時間を確保した方が良いと思う。確保したところで私はアメリカからの到着便が数時間遅延してしまったためAEPには定刻通り到着することができず改めて国内線航空券を当日に買いなおすことになってしまった。もったいない。

めっちゃ暑い

空港バスに乗れば1000円ほど、1時間少々でホルヘ・ニューベリー空港までやってこれる。この空港はブエノスアイレスを中心として、そこより北に向かう路線か南に向かう路線かでカウンターやセキュリティチェックがわかれている。この仕組みは羽田空港の第一ターミナルに似ている。

AEPにはPPラウンジがないので注意

EZEから直接AEPまで来ており、さらにその間のバス代はクレジットカードで支払えるためアルゼンチンペソ紙幣の持ち合わせがない。セキュリティチェックの後にはATMがあると空港の案内看板にはあったのだが、隅々まで歩き回ってもそれらしきものが見当たらない。イグアスの滝空港から街中のホテルまでを結ぶ乗り合いタクシーはクレジットカードで決済できるので急がなくても大丈夫だったのだが、時間があればEZEで確保しておくと安心できる。なお乗り合いタクシーは事前にオンラインで決済しておくこともできる。私は安心したかったのでそのようにした。

ペラペラの紙だが後ほど確認されるので捨てないように

到着したイグアスの滝空港のアライバルゲートを出れば目の前に乗り合いタクシーのカウンターがある。そこで乗車チケットを受け取ろう。オンラインで予約していなくてもその場でクレジットカードで支払える。空港からホテルまで送ってくれるが、時間が無ければさして高くなるわけではないので隣のカウンターで手配できるレミス(ハイヤー)を利用するほうがいいと思う。私は急いでないしケチなので使わなかったが…。

12人かそこらが乗れるバンに乗り込む。人数が集まれば出発するという感じなので、早めに乗車できれば最初の便で出発できるかも。空港を出発したら各ホテルを回って客を降ろしていくので、泊まるホテルによっては到着まで1時間以上かかることもあるようだ。

国立公園までのバスにのる

泊まったホテルから市街中心地のバスターミナルに向かって歩く。イグアスの滝は市街地から20kmほど離れているため、ツアーを使わない観光客はみなバスを使って公園まで向かう。

バスターミナルの一番手前にあるブース

このプエルトイグアスから観光客がバスで向かう先というのはイグアスの滝か隣国ブラジルとパラグアイの都市くらいしかなく、それらの路線はどれもこのRIO URUGUAY社のバスによって運行されている。バスは頻発しているのでそれほど待つこともなく、また観光客が朝から集まっているのでどこでチケットを買えばいいのかはわかりやすい。このブースでのチケット購入は現金のみだが、バスターミナルから2ブロックのところに銀行があるのでそこで現金を引き出すことができる。この記事を投稿している時点では往復で800ペソ、880円程度だった。片道ずつ買おうが往復で買おうが割引などはないがここでまとめて買っておくと復路で楽だと思う。やってきたバスに乗り込んで20分ほどでイグアスの滝国立公園に到着する。

入場口は混んでてゲンナリする

このイグアスの滝の入場券も事前にオンラインで購入できるものの、オンラインで購入しただけでは入場できず、チケットカウンターに他の客と同様に並び、正規のチケットを受け取らなければならない。なのでオンラインでの購入には実のところほとんど意味がない。現地でのチケット購入の時間が多少節約できるかもしれないという程度なので、イグアスの滝に行く日付を確定させなきゃいけない(予定変更に対応できない)というリスクを考えるとこれは現地か、あるいは当日ホテルで買うくらいでいいと思う。なおオンラインでも現地でも入場券の購入にはクレジットカードが使える。

翌日であれば半額で再入場できるらしい。昔は名前やパスポート番号がチケットに記載されていなかったので他人が使うこともできたようだが、いまはそうではなくなってしまった。イグアスの滝周辺の公園は広いので、体力の無い人は二日にわけて見に行くといいのかもしれない。

イグアスの滝国立公園(Iguazú National Park)

公園内は順路の途中から別れるように三つの見学コースが設定されている。せっかくなので三つとも回ることにした。

どこにこんなたくさん居たのかと思うほど観光客はいるものの、この広い園内では混雑しているという感じはない。写真スポットだとしばらく待つが、それでも数十秒とかからないはずだ。

最初に見える景色がこれで、同じくらいの大きさの滝がずらりと並んでいる。これらの滝の上を遊歩道を通って渡ることができる。

手を伸ばせば流れる水に触れそうなほど近くから滝を鑑賞できる。風向きによっては水煙が体を濡らしてくるので汚れてもいい服装でこよう。私は南極クルーズのときに買った防水のパンツを履いてきた。あの南極体験が今につながっているのだな、ナラティブだな、素晴らしい脚本じゃないかと出発前にホテルで履きながら思ったものの、実際には南極で履くような防寒性能のあるパンツなど気温30度近いいまの北アルゼンチンの気候に全く適していない。普通に短パンを履いた方がいい。暑かった。

流れ落ちる水はこの地域特有の赤土が混じり合って茶色く濁っている。この赤土が混じった水は栄養価が高く、河川流域の植生を古来から大きく育んでいるらしい。

三つの遊歩道のうち、さっき通った滝の上を通るルートの次は滝の下を通るルートを選ぶ。滝の下なので視界が白く霞み全身がくまなく濡れるほどの水しぶきが観光客を襲う。あと二ヶ月もすればアルゼンチンは冬を迎えるが、いまはまだ夏の気配が濃く残る強い日差しの中なのでとても気持ちがいい。

一人旅だとあまり写真を撮ってもらうことはないが、こういう典型的観光名所だと観光客同士で写真を撮ってとお願いされたり、撮ってあげようかとオファーされたりする。無害そうに見えるのか、たくさんお願いされたのでたくさん撮ってあげた。カメラを返すついでに私も撮ってくださいと言って撮ってもらう。なかなか良い写真だ。

悪魔の喉笛(Garganta Del Diablo)

イグアスの滝全体の中で最大の落差を持つ地点は「悪魔の喉笛」と呼ばれている。公園の端のほうに位置しており、徒歩でも行けるが小さな鉄道も用意されている。乗車券が必要だが駅のカウンターに行けば無料でもらえるため、これは是非乗っておこう。

乗車人数を管理するためにこういう仕組みになっているのだろう。しかし発行してもらったチケットは特に乗車時に確認はされなかった。往復それぞれの乗車時間はそれほど厳密に管理されているわけではなさそうだ。目安くらいの認識でいいと思う。そもそも列車は定刻通りに運行していない。

終点のガルガンタ・デル・ディアブロまでは10分余り。ゴトゴトと川沿いを列車はのんびり進んでいく。景色もよくなんとなく風流だ。線路は途中で交換設備に入り対向列車とすれ違う。私はいいヤツなので公園入り口方向に戻っていく乗客たちに笑顔で手を振っておいた。

終点からは遊歩道が延びており、川を横断するように進んでいく。歩いていると右手に壊れた遊歩道が見える。これは1992年の洪水で破壊され、ずっとそのままになっているらしい。川には亀が泳いでいた。亀は流されて滝壺に吸い込まれていったりしないのだろうか。

遠くから轟音がなりつづけているので悪魔の喉笛までどれほど近づいているのかはもはやわかっていたのだが、やはり目の前にするとすさまじい迫力だ。イグアスの滝のハイライトとなるこの場所は、その規模は段違いで他の滝と比べものにならない。ブラジル側から見る滝よりもかなり近くに寄れるため、滝の水を全身に浴びながら見物することができる。日本の滝は大半を見て回ったが、ちょっとこれはすごすぎる。ルーズベルト米大統領夫人の気持ちに私もなってしまった。

滝壺は水煙でよく見えない

絶景だった。いろんな景色を見てきたけど、これを超えるものは本当に少ないと思う。ブエノスアイレスからもサンパウロからも遠い場所だが、国内線に乗って訪れる価値がある。

謎の生き物ハナグマ

国立公園内には至る所に見たことのない生き物がいる。トゥカーノが木にとまっていたり大きなトカゲが草むらから顔をのぞかせていたりする。おおむねかわいい生き物たちだが、とくにこのハナグマはかなり凶暴な側面もあるそうで、迂闊になでたりエサをやると引っかかれて皮膚が裂け血まみれになるぞというグロテスクな写真付きの警告看板が立っている。こわい。

朝9時を過ぎたくらいに入場してたっぷり1日使って観光し、ホテルに戻る頃には夕暮れ時だった。アルゼンチン側のイグアスの滝は本当に広い公園で、歩く距離もかなりある。ハードなわけではないが体調は万全のときに出かけよう。

それにしてもアルゼンチンという国は北に南にとすばらしい観光名所があるのになんでこんなにも経済が崩壊しているのだろうね。この国にくるたびにペソの価値下落を目の当たりにしてその経済の脆弱さをひしひしと感じてしまう。