東ティモールにいってきた その3
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Chega Exhibition
クリストレイのほかにも訪れるべきいくつかのちいさな博物館がある。そのうちのひとつがChega! Exhibitionで、ポルトガル統治時代の1963年に刑務所として造られたものがそのまま利用されている博物館だ。
「Chega」とはポルトガル語で’enough’, ’no more’, ‘stop’という意味で、この地における長い植民地支配に対して渦巻いていた苦い気持ちを表わす名前がつけられている。展示内容と刑務所という場所自体の経緯が合わさってなんとも重苦しい雰囲気の博物館だ。
入場料は掛からない。心躍る展示では全くないが、この地で人々が歩んできた歴史の道のりを細かく知ることができる。正直いって展示内容には心が痛むし、楽しい旅のテンションは下がってしまうかもしれない。ダークツーリズムそのものである。
さらにもうひとつの博物館としてレジスタンス博物館がディリの中心地にある。こちらは入場料が1ドルかかるが、建物は近代的で空調も効いているし、展示物もChega!に比べて「ついに独立を勝ち取ったぞ!」というニュアンスをそれなりに思わせるものになっている。陰鬱な気持ちには、多少はなりづらいかもしれない。Chega!とレジスタンス博物館は結局のところ同じ題材を扱っているわけだが、その立ち位置ついては相互に補完的なものとなっているなと感じた。
街歩き
観光名所と言えそうなものはこれですべてめぐってしまった。とりあえず目に付いたミクロレットに適当に乗り込み、どこかへ向かってみることにする。
10年ほど前にできたというショッピングモールについた。とてもきれいな場所で、レストランやカフェはもちろん、ほかの東南アジア諸国と全く劣ることのない素晴らしいスーパーマーケットもある。ここはMoneygramのブースもあり両替もまともなレートでできるので、米ドルの調達が必要ならここで済ませておくといいだろう。
この国は観光客こそ少ないものの、外国人は意外なほどおおい。後発開発途上国という土地柄、国連組織やNGO団体、先進諸国による駐在員事務所がたくさん設置されているためだろう。そういった人々の生活でも、これだけまともなモールがあれば普段の生活に困ることはないと思う。現地に住む日本人と話す機会もあったが、レベルの高い病院がないことを除けばそれほどの不安や不便はないとのことだった。
直射日光で照らされる暑い海沿いの道を原付がのんびり走っていく様子はナウルを思い出す。
この街では水道水を飲むことはできない。また、下水についてもあまり発達していない。なので生活排水も基本的に海へそのまま流されるか、場所によっては地面を素掘りしただけの溝に汚水を排水する区画もある。日本やオーストラリアからの支援を受けて整備された上下水道施設が一部にはあるが、メンテナンスが怠ったまま使われたり、使われないまま放置されたりしているとのことだった。そこらへんの売店やスーパーでミネラルウォーターは簡単に入手できるので、念のためちょっと多めに買っておこう。
いままで巡った国のなかでも2ドルで髪を切ってくれるというのは最安クラスだ。ウガンダの床屋よりさらに安い。
東ティモールではテトゥン語という言語が使われている。動詞が活用しないとか、時制が存在しないとか、文法としてはかなりシンプルらしい。
グッバイ、東ティモール
五日ほど滞在したディリの街を離れることにする。到着時は空港タクシーで宿まで移動したが、ミクロレットに慣れ親しんだ今、もはや交通費は25セントで十分だ。空港前のロータリーまで簡単に移動できる。
空港ラウンジはないので、あまり早くきてもすることはない。ちいさな土産物屋が隅にひとつあるくらいだし、可能ならできるだけゆっくり来た方が時間は有効に使える。とはいえ私はとんでもないトラブルに見舞われてしまった。これは別に東ティモールが悪いわけでも航空会社が悪いわけでもないが、とりあえず暇を持て余してでも空港というのは早めに到着するにこしたことはない。東ティモールを発着するフライトは限定的で、それゆえに競争もなく距離のわりにやたら高価なのだ。
いい国だった。機会があればまた来たいなと思う。つぎは周りをインドネシアに囲まれた飛び地である「オエクシ」に行ってみたい。
おしまい