エストニアの銀行口座を解約した

もう10年以上前、エストニアに留学していたころに作った銀行口座がある。SEBというスウェーデンを本拠地とする銀行で、在学中に発生するすべてのお金のやりとりを担ってもらっていた。その後エストニアを離れてしまったため全く使わないまま完全に放置していたのだが、法律の都合なのか銀行の利用規約などが更新されるたびに日本の実家住所までエアメールで通知の封筒が届いていた。エストニアをいまでも愛している気持ちは変わらないものの、学生ビザはもちろん、携帯電話も健康保険も全て契約が終了しているなか、いまだに散発的に連絡をよこしてくれるSEBの存在は自分の青春の思い出のトリガーでありつづけてくれた。

当時現金で持ち込んだ3000ユーロくらいを口座開設時にまとめて入金したところまでは憶えているのだが、その後の生活費は大半を学生用ライフカード(海外利用が自動で5%キャッシュバックされるのでオトクだった)で済ませ日本の口座から出金していたこともあり、残額がいくらあるのかすらよくわかっていない状態だった。エストニアのIDカードも現地のSIMカードもとうに使えなくなっているのでネットバンキングを使うこともできない。まぁログインできたところでネットから口座解約はさすがにできなかったとは思う。

三角が特徴のSEBビル。Taivo Pungas – Üleslaadija oma töö, CC BY-SA 4.0

とはいえ、エストニアには最近も何度か訪れている。現地の友達に会ったり、二年ほど前には妹もエストニアに住んでいたので旅の途中に会いに行ったりもしていた。2025年もエストニアに行く予定ができたので、旅行のついでにSEBの店舗まで出かけて口座を解約することにした。放置したところで大して困らないと思うが、銀行口座については不正利用のリスクもある。放置している期間が長ければ長いほど解約手続きも複雑になるだろう。この手の手続きは思い立ったらすぐ取り組んだ方がいい。わたしは事務手続きが大好物なのだ。

SEB Estonia Headquarters

店舗にいき、受付で口座を解約したい旨つたえる。予約があるかどうか聞かれるので、無いと答えるとレシート上の番号札をもらえるので自分の番がくるまで待とう。平日の昼間だったからか、待機列は2組ほどだった。

手続きに必要なものはよくわからなかったので、念のため口座開設時につかった過去のパスポート、現在のパスポート、エストニアの市民カード、実家にとどいていた銀行からの封筒、それに念のためエストニア人の友達をつれていった。

とっくに期限切れの市民カード

自分の整理番号がアナウンスされ、カウンターの女性に「学生時代につくった口座を解約したい」と伝えるとすぐに手続きを始めてくれる。前述の市民カードに記載されているID番号を元に自分の口座をすぐ特定してもらえた。期限切れのときにカードを捨てなくて本当によかった。現在のパスポートの控えをとり、口座をクローズするための書類にサインをしていく(青のSARASAだった)。やりとりはすべて英語で対応してくれるので難しくない。途中で「日本のTaxコードを教えてくれ」と言われたところだけ何のことかよくわからず迷ったが、桁数を伺ってみると12桁とのことだったのでスマホに入れていた運転免許証の番号をダメ元で伝えてみたところそれで受け付けてくれた。Taxコードという名称にピンとこなかったので今回はごまかしてしまったが、マイナンバーのことを指していたのかもしれない。

残高については一応現金で受け取ることもできるが、日本と同じように有人カウンターでの出金は手数料が非常に高く、別の口座に送金するほうが安いと説明を受ける。とはいえ日本の口座への国際送金もそれはそれで手数料が高そうなので、一緒に来てくれたエストニア人の友達の口座に振り込んでもらうよう依頼する。

そうしてカウンターでの手続きを全て終えると、残高の送金が完了し次第わたしの口座は完全にクローズされると伝えられる。エストニアとのつながりが1つ減ることは少しさみしい気持ちもあるが、すっきりした。

過去一年分のトランザクションログをもらった

ちなみに口座に残っていた金額はわずか27ユーロ(約4700円)。10年以上にわたって口座維持手数料がひっそりと掛かり続けて少しずつ減っていったのだろうが、明細を見る限り減った金額はそれほど多くなかったようだ。10年間エアメールを送り続けてくれたSEBとしては私のような客の存在は完全に赤字であろう。

口座に残っていた27ユーロをパブで使ってしまおうと旧市街に向かう。またエストニアに住む機会があればそのとき改めて開設すればいいよね、と友人に話してみたところ、彼からはLHV(エルハーベー)という新興の銀行を勧められた。エストニア資本のフィンテックで、これまでSwedbankやSEBといったスウェーデン資本の銀行ばかりが使われていたエストニアにうまれた新しい銀行らしい。長い人生の途中ではまたこの地に引っ越すこともあるかもしれない。そのときはLHVをつかってみよう。