2019-12-26

メキシコのカンクンにいってきた

年末年始は毎年すこし長めの旅行に出かけている。今年はワンワールドの世界一周航空券をつかい、日本を起点に南アメリカとスペインを見て回ることにした。これまでの旅のなかで実は一度もいったことがないのが中南米だった。近年は元気な大学生がこぞってウユニ塩湖にいっていることもあり、日本人にとっても南米におけるメジャーな渡航先になったボリビアを今回は外し(もちろん行きたいのだが)、メキシコ、チリ、アルゼンチンに加え日帰りウルグアイと、スペインまでを巡る2週間ちょっとの旅路とした。

冒頭で触れたように、今回の旅は世界一周航空券というものをつかうことにした。これは定額(+諸税)で16フライトまで飛べるというシロモノで、やたらある難解なルールに則って発券するぶんにはたいへん安価に手に入れることができるチケットである。その難解なルールというのが実に難解で、具体的に言えば以下のようなものだ。

・コードシェア便をのぞきワンワールドアライアンスのフライト16回まで
・各大陸内の移動は4回まで、北米大陸のみ6回まで
・一カ所での乗り換え便の場合2回のフライトとして計算する
・アジア大陸での滞在は二回まで
・同じ大陸に二度はいけないが、北米大陸のみ南米から戻る場合は可能
・同じ大陸内での逆行は可能だが、大陸間での逆行は禁止
・etc...

こんなルールがたくさんあり、結局のところその制約のせいで回りたい大陸数と出発地を決定してしまえば大まかなルートも自然と決まる。私の場合はオーストラリアを除く5大陸(北米南米アフリカヨーロッパアジア)を通って日本に帰るというルートにした。日本で世界一周航空券を購入した人々は概ねこのルート(あるいはこの逆)を選ぶことになるのではないかと思う。JALの旅行積み立てが満期を迎えたことにより自宅に届いたJAL旅行券で購入し、さらに1万円ほど安価に世界一周航空券を入手した。いつか世界一周航空券を買おうと思っている方がいるのなら旅行積み立てを事前にやっておくことをオススメしたい。半年先まで購入を待てるなら、あるいは半年以上先の予定として世界一周を企てているのなら確定で割引になるので損はない。旅行券の購入にもクレジットカードが使える。

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年の瀬、2019年もあと数日で終わる。そんな冬の朝だ。まだ外は暗い。日本から最初の目的地カンクンへの直行便はなく、成田からシカゴを経由してカンクン国際空港へ向かう。相変わらず荷物がほとんどないので(今回も下着とタブレット端末くらい)、いつもと同じように片道1000円の空港連絡バスに乗り成田までいく。朝6時10分の東京駅バスターミナルには同じような旅行者がすでにたくさんいた。みな大きな荷物は持っていない。必ず座れるぶんアクセス特急より快適なのではと思うのだが、やはり鉄道に比べると若者向けの移動手段であることをひしひしと感じさせられる。私はまだ若者でいていいだろうか。まだ20代なのだから許してほしい。30を超えたってこのバスを使うつもりだけど。

到着した成田空港は猛烈に混雑していた。恐ろしく長い手荷物検査の行列ができている。いままでみた中では一番長い列だ。みな年末年始の休みに海外旅行へ出かけるのだろう。景気がいいことだ。長い列ではあったがおもいのほかスムーズに進む。私も大して検査官に見せる荷物はないのでとくにとがめられることもなくするっと通過した。

2019年は旅行した距離がおおく、今回のようにワンワールドアライアンスの便をつかった場合に空港のラウンジが使えるようになった。わたしは機内食が好きなので毎度おなかを空かせて飛行機に乗るが、せっかくなので朝から用意されている軽食をいただいた。とてもおいしい。国内線のサクララウンジは使ったことがあったが、国際線ははじめてだった。これはなかなか気分がいい。空港の食事は値段が高いのでいつもコンビニでおにぎりを買って済ませたり、あるいは普通に機内食を食べるまで我慢していたが、これからはそうしなくてもいいみたいだ。うーん、とてもうれしい。にこにこしているところに良いことは続く。

カレーを食べてると自分の名前がアナウンスされる。なにか落とし物でもしたかと思いパスポートや航空券を確認しながらカウンターに向かうと、スタッフから席をアップグレードしてよろしいかと聞かれた。理由はエコノミークラスでのオーバーブッキングとのことだが、そんなことがあるのだろうか。インボランタリー・アップグレード自体は知っていたが、まさか自分の身におこるとは。もちろんそこで断る理由もない。感謝の意を伝えありがたく変更を受け入れた。新たに印刷された航空券にはプレミアムエコノミーと書いてある。もともとのエコノミー座席(わたしはエコノミークラスにしか乗ったことがない)から一段上位の座席に変更してある。プレミアムエコノミーとはどんな席なのかは知らないが、なんとも幸先がいい。たぶんこれからも自腹で買うのはエコノミー席だろうが、こんなこともあるのだなとこれから始まる旅行に期待が膨らむ。

プレミアムエコノミー席ではいくつかのアメニティが追加されていた。ヘッドホンがノイズキャンセリング対応になっていたり、機内用のスリッパがついていたりする。機内食自体はエコノミーとかわらないが(おいしい!)、ドリンクのメニューが拡張されていた。シャンパンを出してくれるのがその違いだが、飲食に関してはそれくらいの違いしかない。私が感動したのは席の広さだった。私は日本人としてはやや背が高く、エコノミークラスの席は窮屈だなとずっと感じていた。それが今回の席ではまったく不便がない。乗れるものなら毎回この座席を選びたいなと思ってしまう。到着してからも疲れが違うのだ。これがJALの提供した試用版、トライアルキャンペーンなのだとしたら私はまんまとのせられてしまった。これから先長時間のフライトをエコノミークラスで満足できるのだろうか。

経由地点のシカゴへはこれまでも何度か来ている。何度かきているうちの全てが経由地としての到着と出発であり、シカゴ市内には一度も行ったことがない。シカゴという街は有名だが、とはいえシカゴの観光名所はそんなにたくさんあるとは聞かない。そう考えるとこの街は名古屋みたいなものなのかもしれない。たくさんの人が住む素晴らしい街だが観光名所として挙げられる場所が少ない。おいしい機内食も食べたしおなかは空いてないが、なんとこの空港でもアメリカン航空のラウンジが使えるという。よろこんで入室する。

並んでいたのはアメリカらしい料理だ。カリカリに焼いたベーコン、ソテーしたアスパラとマッシュルーム、スクランブルエッグとハッシュドポテト(英語ではハッシュド・ブラウンズというらしい)にパンケーキなど、とってもハイカロリーな感じだ。フルーツやサラダあるしパスタも寿司もある。たしかに軽食として提供しやすい炭水化物として寿司はなかなかポータブルで便利そうだ。野菜中心に皿によそって心ばかり健康に気をつかう。

しっかりめな朝食をすませ、シカゴでの短いトランジットを楽しんだ。搭乗時刻になりアメリカン航空の機内に乗り込む。ここまできたらもうすぐだ。メキシコ湾を飛び越える2時間半ほどのフライトを終えて最初の目的地、カンクンに到着した。初めての中米、ここがメキシコだ。

こういう国(ネガティブなイメージをこめている)ではありがちなことだが、メキシコも例に漏れず空港の出口にはタクシードライバーたちが客引きのためにあつまっている。しかめつらをして無視し、右手に50mほどいったところにある連絡バスにのる。ADO(スペイン語圏なのでアデオとよむ)社のバスで市街地までつれていってもらおう。クレジットカードも使えるので、短い滞在ならメキシコペソの現金を持たなくてもなんとかなりそうだ。念のため米ドルを持っていると安心できる。カンクンはアメリカ人の気軽なリゾートであるらしく、米ドルはそこらへんで広く使えるようになっていた。

さして渋滞もしておらず、またたいした距離もないので市街地にはすぐ到着した。終点はADO社のバスターミナルであるため、ここで短いカンクンの滞在で効率よく観光できるように同社のセノーテとマヤ文明の遺跡として知られるチチェンイッツアを巡るバスツアーに申し込んだ。はっきりいってこれは完全に観光客向けで安くはないのだが、セノーテもチチェンイッツアも場所は結構な僻地であり交通網がろくに発達していないこの街では気軽に行ける場所ではなく、また昼食や現地のガイド代も含まれているわけであまり悪いものでもないと思う。それなりに競合他社は多いので価格も安定しているだろうと踏み、翌日未明にここADOバスターミナルを出発する分を申し込んだ。

翌日、ホテルの部屋を出て早朝のまだ暗い大通りを歩く。通りに面したコンビニのようなお店が24時間営業らしいので、ここで水のボトルを買った。営業はしておりスタッフもいるが、シャッターは閉まっている。防犯のためなのだろう。シャッターの一部、目線の高さにあいた隙間からお金や商品を出し入れして買い物できるようになっている。この街自体にそれほど治安が悪い感じはしないが、これはこれで便利だ。深夜勤務する従業員にとっても気楽でいられるだろう。

バスに乗り最初につれてこられたのは謎の海辺だった。この場所で全員がおろされ、グループ別に呼び出される。どうやらホテルやバスターミナルからのピックアップ担当と、ツアーを運営している会社が異なっているようだった。効率のいいやりかただなと関心する。私のグループが呼び出され、大きなツアーバスに乗り込んだ。一人で参加している人はほとんどおらず、大抵は男女のカップルかファミリーだった。私のとなりにはめちゃくちゃ喋るタイプのアメリカ人女性が座った。彼女も小さな子供をつれて家族で参加しているらしい。彼女はこのツアーの最後までずっと仲良くしてくれた。

スペイン語混じりの英語でツアーでこれから巡る先と、マヤ文明についての簡単なレクチャーが始まる。英語ではあるはずだが私にはほとんど聞き取れなかった。隣のアメリカ人女性になんと言っているのか聞いてみたが、彼女もまた苦笑しながらなにもわからないと言う。日本人がガイドするツアーを選んだほうがいいかもしれない。しかしWikipediaである程度予習しておけば十分だろう。おもしろかったのはガイドの見せてくれた実物の出生証明書で、そこにはマヤ文字の記載があった。

駐車場にバスをとめ、長い階段をくだり地下にもぐっていく。このバスツアー最初の目的地であるセノーテだ。地中にぽっかり空いた穴に地下水がたまりできあがったらしく、私がいったときは数人が気持ちよさそうに泳いでいた。水着をもってくればよかったな、とも思ったが、一人で泳ぐのもちょっと気恥ずかしいので水際でぱしゃぱしゃと水遊びをするくらいにしておく。バスで隣に座っていたアメリカ人女性からは、後ほどなんで泳がなかったのと笑われた。

少年がセノーテの天井にあいた穴を見上げていた。素敵な風景だった。縦方向に長い写真を撮るのはなかなかむずかしい。太陽の光が泉に差し込む姿は神々しささえ感じられるが、わたしの写真ではろくに表現できない。とはいえまたみたくなったのならここへ見に来ればいい。日本から遠いとはいえ、行こうと思えば一日でこれる場所なのだ。

バスにもどって次の目的地、メキシコ観光の目玉とも言えるチチェンイッツアに向かう。チチェンイッツアはその遺跡全体が屋外博物館のような扱いになっており、受付でチケットを購入して入場する必要がある。ツアーでは団体として入場できるので行列にならぶ必要もチケットを購入する必要もない。それだけでもツアーを利用する価値はありそうだ。カンクンに初めて来た人の9割くらいはまずこの地にくるのではなかろうか、それくらいこんでいる。そういう観光客相手の土産物売りもやまほどいる。メキシコ名物のソンブレロが人気商品のようだった。たしかにつばの広い帽子がほしくなるような炎天下ではある。私は買わないが。

入場してからも道の脇には隙間なく土産物屋がならぶ。インドみたいにしつこい客引きがいるわけではないので邪魔ではない。むしろあまり重複のない品揃えが楽しい。行きの機内で見たメキシコが舞台のディズニー映画「リメンバー・ミー」でモチーフとされていたドクロのオブジェなんかもたくさん並んでいる。これだけたくさんの観光客が訪れる場所だ、商機を逃すはずもない。私は買わないが。

メキシコ観光の目玉といえるであろう「カスティーヨ」がついに目の前に現れた。このピラミッドはしばらく前までは観光客も自由に登れたそうであるが、現在は鉄柵で簡単にかこまれており一定以上近づくことはできない。この神殿の前では観光客がみな両手をパチンパチンとたたいている。手のひらをぶつけたときの音が神殿にぶつかり独特な反響音を響かせるのだ。ミョン、ミョン、というような音が広場に響く。こんな奇妙な音は聞いたことがない。

戦士の像とよばれる石像もある。どこかでみたことのある造形に感じる。どこでみたのかさっぱりわからないが、たぶんどこかの博物館だったのだろう。ホンモノがこれだったのか。

観光を終え、バスがカンクン市街に戻ってくるころには日はとっくに暮れている。それでも高級ホテルゾーンはまだまだ賑わっており、クリスマスホリデーを楽しむ大勢の観光客がうろうろしていた。ツアーの最後は自分の泊まっているホテルの近くまでバスを寄せてくれるので便利に帰れる。私のホテルは夜は人の少ないダウンタウンにあったのでとてもありがたい。朝から晩まで観光で使い切った一日だった。

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帰ってきたホテルで睡眠をとり、次の国へ向かう準備をする。といってもシャワーをあびて下着を取り替えるくらいだ。ゴミをゴミ箱に捨て、忘れ物がないかを確認して部屋を後にする。なんの特徴もないホテルだった。このカンクンの大通りに山とある安ホテルのひとつにほかならない。一度目を離せばもうどんな建物だったかを思い出せない。もう戻ることもないし、人に勧めるような場所でもない。自動的に永久の別れになるホテルだ。チェックアウトを告げて鍵を返却し、3度目のお世話になるADOバスターミナルから空港への連絡バスに乗り込んだ。 カンクンからサンティアゴへは直行便がでている。このような行きたい場所に一発でたどり着けるフライトは世界一周航空券を使う上でとても便利だ。

カンクンへの到着時と同じように、それほど長くバスに揺られることもなく空港に到着する。チェックイン用のキオスク端末がどれも故障中で5台くらいはしごしてようやく搭乗券を手に入れる。朝のカンクンの渋滞事情もわからないし、またこれから乗るのは当然に国際線なのでかなり早めに空港まできたが、それでも早すぎた。ボーディングの時刻が10:45、現在時刻は7:00。まだ4時間近くある。軽い朝ご飯を食べながらこれから向かうサンティアゴの観光名所や移動手段をタブレット端末で調べる。

搭乗時刻になり乗り込んだ飛行機は南米最大級の街サンティアゴに向けてとんでいく。中米から南米へ、ざっと7時間半のフライトだ。ながい。ネットフリックスの動画を見ながら暇をつぶしていた。

そんなわけで初めてのメキシコとして訪れた街カンクンとそこでのバスツアーはなかなか楽しかった。バックパッカーにありがちなツアーを軽視する風潮はわからなくはないが、しかしメキシコで片道2時間以上かかる遺跡までレンタカーや公共バスの乗り継ぎで到着できるとも思えないし、入場チケットの購入やらなんやらを含めてもファストパス状態で見学できるのはなかなか快適だ。積極的に使おうかというとそこまでではないが、これはこれでよいものなので選択肢としてもうすこし気軽に俎上に載せてみてもいいのではないかと考えるようになった。自分でなんでもこなしていくたくましさは素晴らしいが、しかし先人の知恵がつめこまれたツアーの良さを適当に排除するのはとてももったいない。

サンティアゴ編につづく。そんなふうにつづくといって放置している記事ばかりになってしまった。下書き状態の記事がやまほどたまっている。記事を書き終わる前に次の旅行にでかけてしまうのでどんどんたまってしまう。しかしいつかはこの記事のように思い出したように記事を書くので、やはりつづくと書いて問題ないはずだ。なのでここはそのように書く。

サンティアゴ編につづく。