カタールにいってきた

いってきたとはいってもドーハにあるハマド国際空港が実施しているトランジット客が対象のシティツアーに参加してきただけだったりする。数年前まではこのツアー自体が無料で実施されていたようだが、現在は75カタール・リヤル(2000円くらい)に設定されている。トランジットの待ち時間(と予算)に応じていくつかのプランが用意されているが、私はドーハの街をバスで回るツアーに申し込んだ。これが一番高頻度かつ安価で観光客からの人気があるようだ。

ツアーは事前にオンラインで申し込むことが可能だが、当日に受け付けカウンターでも受け付けている。私は参加したいツアーの時程が確定していたためオンライン予約を済ませておいたが、当日のツアー客の数は定員の半分程度だったので急がなくてもよさそう。ツアーは一日6回、一回あたり2時間ほどなので時間さえ許せば参加しない理由はない。カタールは豊かな先進国であるものの、観光名所がたくさんあるわけでも快適な交通機関があるわけでもないためこういった機会はとてもありがたい。朝から晩まで実施されているし、カタール航空は世界中に就航している素晴らしいエアラインなのでワンワールドユーザーなら利用機会も多いはずだ。わたしも黄色い熊のモニュメントを見ない年はハタチ以来ほとんどなかったように思う。

ひとがアラビア語を手書きする様子を初めて見た

ツアー中はもちろん空港をはなれてドーハ市内を巡るため、カタール国内への入国が必要になる。日本を含め多くの国ではビザが免除されているのでパスポートに入国スタンプをもらうだけですむが、アルコール飲料をお土産としてもっている場合は空港のカスタムオフィスに預けなくてはならない。イスラム系の国にアルコールの持ち込みは御法度だ。この手続きはややわかりにくい部分なので気をつけよう。

空港を出てバスに乗り込むと、ロゴ入りのクッキーと水のボトルがもらえる。参加者には日本人もいるが、わりあい多国籍だった。さすが世界160都市に就航しているカタール航空だなと感じさせる。アフリカやヨーロッパ各地へのフライトが豊富なため、日本からその辺に向かうとき頻繁に使うことになる。ツアーが始まりバスの通路先頭でガイド役のフィリピン人女性がこの国についての紹介をする。カタールは小さな国で、秋田県と同じ面積に30万人のカタール人と150万人の外国人労働者がいるらしい。アラビア語の能力などは求められるが、外国人労働者としてビザを取得するのはそれほどたいへんでもないようだった。

ドーハ中心地の高層ビル群が一望できる海辺からツアーはスタートする。スマホのカメラではどうにもきれいには撮れないが、中東の暑い夜、遠く煌めく摩天楼の姿はすばらしい。上海のような奇抜な建物こそないが、全体が青色発光ダイオードで覆われているみたいな高層ビルはある。海辺にたたずむねこちゃんがかわいかった。一緒のツアーに参加した観光客からも人気だったが、夜の明るさに慣れた猫にカメラのフラッシュをたかないであげてほしいなと思う。

カタラモスクという美しい礼拝堂と、その脇に立っている鳩の巣にきた。もともとは農家がフンを回収できるようこのように設計されているらしい。モスクの中にも入れるようだが、私が行ったときには礼拝をしているようだったので他の観光客にあわせて外から眺めるだけにしておいた。

高級なブランドショップとヨットハーバーが隣接した地区にやってくる。時間帯があえば買い物をする観光客もいるのかもしれないが、私は当然何も買う物がない。買い物自体は好きなので、なにか心躍る品物があれば思い出にもなるなにかを買いたいとは思うのだが…。

こんな感じでいくつかの観光名所をまわり、最後の目的地がスークワキーフという市場になる。ここは観光客向けのお土産物屋さんとローカルたちの日用品を売るマーケットにレストランや広場を混ぜたような大きな市場で、中東では暑さの和らぐ夜以降に街が活気づくと聞いたことがあるが、まさしくその地域の雰囲気を感じられるすばらしい場所だった。混雑しているし迷子になりそうな広さだが治安は良さそうだ。リッチな国なのでインドみたいな猥雑さは感じられない。

空港にもどり、入国時にあずけたお酒のボトルを回収して2時間のツアーはおしまいとなる。先進国でない場所において、観光地を上手に回るのは意外とむずかしい。観光立国であればよいが、そうでもない国だと市街地まで向かうだけでも一苦労になる。Uberが使えない国、SIMカードが手に入らない国、旅行者の体験談が非常に少ない国など、そういうところでは事前に組み立てられたツアーというのは心強い。少し前まではツアーを使うことをお金の無駄遣いに感じていたが、なんだかんだ使ってみると快適なのだ。タウシュベツ川橋梁へのツアーだってアタカマ砂漠のツアーだって参加してよかったなと思う。学生時代とその後数年間に染みついたツアーは初心者!おれは上級者だから自分でいく!みたいなムーブはそろそろおわりにしてもいいのかもしれない。いいのかもしれないが、たぶんそんな選択はとれないということくらい自分の性格を考えたらわかりきっている。